TPPはコメだけじゃない!医薬品・混合診療など医療分野への影響まとめ

2015年10月5日、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定が米国アトランタで開かれた関係閣僚会議の下、大筋合意されました。コメの輸入や自動車産業で話題となっているTPPですが、医療分野への影響は決して小さくありません。改めてTPPとは何か、医療にどう影響があるのかをまとめました。

 

【目次】

 

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)とは

TPPとは環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership)の略称です。日本やアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、チリ、マレーシア、ベトナムなど太平洋を取り囲む12か国が経済に関する自由協定を取り結ぶものです。

 

協定の対象はモノの関税だけでなく、サービスや投資、知的財産、金融サービスなど幅広い分野で自由化を進めるのが狙いです。

特にコメなどの農業分野や自動車産業で注目されるTPPですが、実は医療分野にも大きな関わりがあることはご存知でしょうか?

 

TPP議論における医療分野での関わりは、大きく

  • ●医薬品の特許保護
  • ●国民皆保険制度の崩壊
  • ●混合診療の全面解禁
  • ●株式会社の医療機関経営参入

などの観点から注目されてきました。

 

真の狙いは医療市場? TPPとアメリカの狙い

そもそもアメリカは以前から、日本に対して医療市場の開放を迫ってきました。世界トップクラスの高齢社会である日本の医療費は、年間で約37兆円(2010年度)。75歳以上の後期高齢者に限ってみても12兆円という、こちらも世界トップクラスの市場規模を誇っているからです。

 

この医療市場を国外にも開放することを狙って、アメリカは以前から株式会社による医療機関の経営や混合診療の解禁などを日本政府に求めてきました。ですがその都度、日本医師会や厚生労働省などの強い反対にあって、要求は実現しないまま現在に至ります(混合診療については「患者療養申出制度」という名称に代わり一部解禁されます)。

 

こうした背景からアメリカが中心となって議論が進むTPPの狙いは自動車や農産物などではなく、医療が真のターゲットだという見方がされてきました。

 

 

これだけ違う日本とアメリカの医療費―6人に1人が無保険

日本は皆保険制度を採用していて、健康保険証があれば全国どこでも一律の料金で医療サービスが受けられます。医療サービスの値段は公定価格で、2年に1度の中央社会保険医療協議会で議論して厚生労働省が決定します。

 

これに対してアメリカの医療は基本的に自由価格です。国が定める一律の料金というのはなく、同じ医療サービスであっても病院や保険会社などによって値段が異なります。日本のように国民すべてが加入する公的医療保険は存在せず、低所得者と高齢者の公的保険はありますが、それ以外の人は民間保険に加入するのが一般的です。ちなみに全体を包括する公的保険がないのは先進国ではアメリカのみといわれています。

 

アメリカの民間保険は非常に高額で、年間数十万円ということも珍しくありません。そのためいわゆる“無保険”の人が6人に1人あるいは7人に1人など、決して少なくありません。

 

盲腸手術で200万!! 医療費で自己破産も

アメリカの医療分野における保険会社の発言力は強く、加入する保険によって受けられる医療サービスが大きく異なります。医療の値段決定にも保険会社の影響が強く反映されています。

 

こうした医療事情の説明でよく引き合いに出されるのが盲腸の値段です。日本では健康保険で自己負担3割となり、1週間程度の入院で自己負担分は10万円程度です。これに対してアメリカでは2泊3日の盲腸手術で200万円以上かかります(AIU海外留学保険、2008年)。高額な医療費で自己破産ということが決して珍しくありません。

 

TPPで日本の医療制度は崩壊するの?

日本医師会などを中心とする混合診療反対派の反対理由は、以上のような背景をもとにしています。自由診療部分を拡大して混合診療を解禁すると、先進医療を受けられるチャンスは増えるかもしれませんが、結果として国民が負担する医療費は高額になります。

 

それに備えて多くの人が民間の医療保険に加入するとすれば、高齢化が進む日本での医療保険市場は巨額の市場になります。

アメリカは共済などの格安な医療保険を排除して日本の医療保険市場に進出し、結果として国民皆保険制度は崩壊する――というのが医療分野においてTPP反対派の主な意見です。

 

社会保障は「自由化の対象外」

それでは日本の国民皆保険制度が崩壊し、アメリカのように盲腸の手術で数百万ということが、実際に起こるのでしょうか?

 

結果的に、TPPの大筋合意では「社会事業サービス(保健、社会保障、社会保険等)については包括的な留保を行う」と明記されました。

「包括的な留保」とは、かんたんにいえば「自由化の対象外」ということです。つまり今回の合意では、ひとまずは日本の皆保険崩壊のリスクはまぬがれたというわけです。

 

医薬品特許保護はTPPに明記、そのリスクは?

反対にTPP交渉で最後まで残って、大筋合意の内容にも盛り込まれたものは医薬品の特許に絡む事項です。方向性として、新薬の特許保護を強化する条項が盛り込まれました。具体的には特許期間の延長や、後発医薬品の承認時に特許に配慮する仕組みづくりなどが検討されています。

 

巨大な製薬会社をいくつも持つアメリカは、先発医薬品の特許保護を求め、これに対してジェネリックを活用する新興国などは強く反発し、TPPの中で医薬品の交渉は最後まで難航しました。

 

国境なき医師団が「懸念」 新興国にワクチンが届かなくなる

結果的にアメリカと諸外国の折衷案という形で落ち着きましたが、国境なき医師団はTPPの条項に対して「強い懸念」と声明を発表しました。

 

国境なき医師団の示す懸念とは、TPPによって製薬会社が保護され医薬品の市場独占が進み、安価なジェネリック薬の普及が制限されることです。薬代があまりに高額になれば医師団のような人道団体も、また新興国の多くの人が薬を手にすることができなくなるからです。

 

医療分野に関係するTPPの話題を追ってきましたが、TPPの議論はまだ大筋合意が得られた段階で、正式なスタート時期も未定です。今後の動向が注目されます。

 

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