認知症に有効な非薬物療法は?看護師のコミュニケーションスキルが鍵

認知症の治療には薬物療法と非薬物療法があります。認知症の中症状である記憶障害や見当識障害にはドネぺジルなどが投与されていますが、行動・心理症状に対しては、厚生労働省のガイドラインでは、非薬物的介入が原則となっています。

しかし、認知症にはどんな非薬物的介入が有効なのか、まだ明確なエビデンスは得られていないのが現状です。

 

 

焦燥性興奮に的を絞り調査

そんな中、英国ロンドン大学のジル・リビングストン教授らが、認知症の行動症状である焦燥性興奮を抑えるのに有効な非薬物療法について報告しました。

 

焦燥性興奮は、大声で叫ぶ、暴言を吐く、暴力をふるう、徘徊するなど、認知症の患者さんによく見られる厄介な症状です。患者さんの家族もどうしていいのか分からず、患者さんに怒ったり、無力感を感じたりします。

 

リビングストン教授らは、認知症の非薬物療法に関するランダム化比較試験(RCT)のシステマチックレビューを実施、33件のRCTを選び解析を行いました。どのRCTも参加者の数は45人以上でした。また、どのRCTも介護施設で実施されていました。

 

解析の結果、

焦燥性興奮に有効性を示したのは:

・介護者に対するパーソン・センタード・ケアとコミュニケーションスキルの訓練、認知症ケアマッピングの採用

即効性を示しただけでなく、3カ月から6カ月の長期効果も示しました。

 

・訓練されたセラピストによる音楽療法

よく知っている歌を聴くことからはじめて、次第に一緒に歌ってもらいました。即効性はありますが、長期効果のエビデンスはほとんどなく、重度の焦燥性興奮には有効性を示していません。

 

・セラピューティックタッチ

有意な有効性を示しましたが、普通のマッサージや薬物療法と比べると有意ではありませんでした。

 

 

焦燥性興奮に有効性を示さなかったのは:

・高照度光療法

焦燥性興奮の有意な改善を示さなかったばかりか、悪化すら認められました。リビングストン教授は「患者さんの中には明るい照明を不快に感じる人もいるのではないか」と述べています。

 

・アロマセラピー

非盲検RCTでは有意な改善を示しましたが、大規模盲検RCTでは有効性は示されていません。リビングストン教授は「アルツハイマー病の患者は臭覚が低下しているため」と説明しています。

 

・運動療法

有効性を示す十分なエビデンスはありませんでした。

 

パーソン・センタード・ケアと良好なコミュニケーションが鍵

・患者さんとうまくコミュニケーションをとり、患者さんが何を望んでいるのかを把握し、患者さんを一人の人間として扱うこと。

・上記ができるよう、介護者・看護者を訓練すること。

・そして認知症ケアマッピングという認知症患者の観察・記録を実施すること。

 

リビングストン教授らの研究では、この3点セットが焦燥性興奮に対するもっとも有効な非薬物療法でした。

この結果について、リビングストン教授は「介護スタッフや看護師と認知症の患者さんが互いに理解し合うなら、患者さんはたいてい気分がよく、寂しさを感じにくく、腹立たしいことも少ないだろう」と述べています。

 

 

【Sourses】

Non-pharmacological interventions for agitation in dementia: systematic review of randomised controlled trials(BJPsych)

 


【筆者】中岡ひさ子

看護師。徳島大学卒業後、13年間看護師として勤務。その後海外論文の翻訳に携わり、医学・看護論文の翻訳者、ライターとして活動中。

 

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