精神科看護師がスキルアップするには?認定看護師など6つの資格を解説

メインビジュアル。看護師が取りたい資格図鑑。精神科看護師のスキルアップ資格6選。

精神科で働く看護師として、「もっと専門性を深めたい」「患者さんのためにスキルアップしたい」「キャリアアップして給料を上げたい」と考えている方も多いでしょう。

 

そんな看護師さんにおすすめなのが資格の取得です。

 

この記事では、精神科看護師としてのスキルアップにつながる6つの資格を紹介します。

 

 

精神科でスキルアップにつながる資格は?

精神科看護師のスキルアップにつながるおすすめの資格は、

 

  1. 精神科認定看護師
  2. 精神看護専門看護師
  3. 臨床心理士
  4. 公認心理師
  5. 精神保健福祉士
  6. ケアマネジャー

 

-の6つです(資格の一覧表はこちら)。

 

資格を取るには、実務経験や大学院の修了などのハードルもありますが、精神科看護の専門性を高められると同時にキャリア、給与のアップが狙えます。

 

1.精神科認定看護師

精神科認定看護師
認定主体 日本精神科看護協会
主な役割 ・質の高い精神科看護を実践する
・スタッフからの相談対応や指導を行う
・研修会の企画など知識発展に貢献する
受験資格 5年以上の実務経験(うち3年以上は精神科看護の実務経験)、教育課程(原則1年以内)の受講
教育課程 総時間770時間(共通科目:335時間、認定科目:225時間、演習・実習:210時間)
認定試験 面接
資格取得ま 1年程度(必要実務経験年数除く)
費用 計約90万円
更新 5年ごと
資格取得者 931人(2025年5月時点)


精神科認定看護師は、日本精神科看護協会が認定する資格です。

 

日本看護協会の認定看護師ではありませんが、同じように、高度な技術と知識を持った看護師として高い評価を得ることができます。

 

求められる役割としては、「質の高い精神科看護の実践」「他のスタッフの相談に応じ、指導を行う」「研修会の企画などを通じた知識の発展への貢献」などが挙げられています。

 

資格を取得するには、看護師として5年以上の実務経験(うち3年以上は精神科看護の実務経験)を積んだ上で、オンライン講義と集合研修を受講して試験に合格する必要があります。

 

資格取得を通じて、患者さんと関係性を築く技術、リエゾン(橋渡し・連携)精神看護の基本、コンサルテーション論まで、精神科看護における「実践のプロフェッショナル」としての高度な知識と技術が身につきます。2025年4月からは特定行為研修制度の共通科目もカリキュラムに加わりました。

 

また、資格手当の対象になったり、スキルアップで昇格・昇進も狙えたりなど給与アップも期待できます。

 

こんな人におすすめ
  • 精神科領域の患者さんに、より質の高いケアを提供したい
  • 管理の仕事よりも「現場での実践」にこだわりたい
  • 大学院に通わずに精神看護の知識・スキルを究めたい

 

日本精神科看護協会「精神科認定看護師制度」

 

2.精神看護専門看護師

精神看護専門看護師
認定主体 日本看護協会
主な役割 ・精神疾患患者に対して水準の高い看護を実践する
・「リエゾン精神看護」の役割を提供する
・専門知識発展に向けた研究活動や教育的役割を果たす
受験資格 5年以上の実務経験(うち3年以上は精神科看護の実務経験)、大学院修了
教育課程 看護系大学院修士課程で指定の単位(総計38単位)を取得
認定試験 書類審査、筆記
資格取得まで 最短2年(必要実務経験年数除く)
費用 計150~200万円程度
更新 5年ごと
資格取得者 454人(2024年12月時点)


精神看護専門看護師は、日本看護協会が認定する資格です。

 

現場での実践力が重視される認定看護師に対して専門看護師は、より幅広い業務での活躍が期待されていると言えます。

 

具体的には、必要なケアが円滑に行われるよう院内の連携強化を図ったり、患者さんや家族の不安や意向を汲み取って患者さんたちが安心してケアを受けられるよう医療チームをまとめたりと、全体の「調整役」としての役割です。患者さん・ご家族、院内、地域をつなぎながら、適切なサポートを提供します。


この調整・橋渡しをするリエゾン精神看護の役割が大きく、「リエゾンナース」は特に精神看護専門看護師を指します。

 

精神看護専門看護師の資格を取得するには、5年以上の実務経験(うち3年以上は精神科看護の実務経験)に加え、大学院の修士課程(2年)を修了して認定審査に合格する必要があります。

 

ハードルは高めですが、取得後は専門性とマネジメント能力を生かして全体を統括する立場として働くこともできます。たとえば、メインの病棟を軸として外来や看護管理部など複数のフィールドにまたがって活躍することができ、スキル向上やキャリアアップの機会を増やすことができるでしょう。

 

認定看護師と同じく、資格手当による給与アップも期待できます。

 

こんな人におすすめ
  • 現場の実践だけでなく、総合的なキャリアアアップを目指したい
  • 院内の調整や組織マネジメントに興味がある
  • 大学院で精神看護の知識・スキルを広く深く学びたい

 

専門看護師になったら|給料や仕事内容はどう変わる?専門看護師になるメリット

 

3.臨床心理士

臨床心理士
認定主体 日本臨床心理士資格認定協会
主な役割 ・心理テスト等を用いた心理査定を行う
・臨床心理学に基づいたカウンセリングや処置を実施する
・援助技法や査定技法に関する研究、調査を行う
受験資格 心理系大学院の修了
教育課程 日本臨床心理士資格認定協会が指定する各大学院が用意するプログラムやコース
認定試験 筆記、面接
資格取得まで 最短2年
費用 計150~200万円程度
更新 5年ごと
資格取得者 43,083人(2025年4月時点)


臨床心理士は心の問題に取り組む専門家で、日本臨床心理士資格認定協会の認定資格です。

 

資格取得者は4万人を超えており、心理系資格の中で代表的な民間資格の1つと言えます。

 

仕事内容としては、心の問題で悩む人々に対する「心理テスト等を用いた心理査定や面接査定」「臨床心理学に基づくカウンセリングを適用した的確な対応・処置」などがあります。

 

これらの専門行為を通じて、相談者の心の問題や悩みの解決、改善をサポートします。

 

協会が実施する試験に合格すれば臨床心理士になれますが、試験を受けるためには指定大学院か専門職大学院を修了(2年)する必要があります

 

※指定大学院には第1種と第2種があり、第1種を修了するルートが一般的。第2種は修了後、1年以上の実務経験が必要

 

人の心の仕組みや、精神疾患に対するデータに基づく対応方法などを専門的に学ぶため、うつ病やADHDなどの精神疾患・発達障害をはじめ、「ストレスで寝付けない」などといった人の心の悩みにも寄り添い、患者さんのメンタルヘルスの回復を支援できるようになります。

 

看護師が臨床心理士の資格も取得した場合、活躍の場はさまざま。精神科領域はもちろん、緩和ケアや小児科など、心のケアが特に必要となる領域でより質の高い支援ができるでしょう。

 

また、学校や企業で働くカウンセラーなど心理職への転身も可能です。心のケアの専門家として、キャリアの幅を広げることができます。

 

こんな人におすすめ
  • 心理系における代表的な資格を取りたい
  • 自信をもって心のケアをできるようになりたい
  • カウンセラーなどの心理職にも関心がある

 

看護師が臨床心理士になるには?年収、仕事内容、公認心理師との違いなどを解説

 

4.公認心理師

公認心理師
認定主体 国(国家資格)
主な役割 ・心理テスト等を用いた心理査定を行う
・心理学に基づくカウンセリングや助言を行う
・知識の普及を図るための教育、情報提供を行う
受験資格 心理系大学か専門学校の卒業、大学院修了か2年以上の実務経験
教育課程 大学か専門学校で所定科目を履修、大学院で所定科目を履修
国家試験 筆記
資格取得まで 最短6年
費用 計100~600万円程度
更新 なし
資格取得者 75,006人(2025年6月時点)


公認心理師は、臨床心理士と同じく心の問題に取り組む専門家です。

 

臨床心理士が民間資格であるのに対し、公認心理師は公認心理師法に基づく国家資格である点が大きな違いです。

 

2017年に創設され、心理カウンセラーを目指す方や精神看護領域でキャリアアップを目指す看護師さんに注目されています。

 

心理学に関する専門知識や技術を生かして、精神科や心療内科などに入院・来院する患者さんの悩みや病に寄り添い、面談やカウンセリング業務、心理テストを行って自分らしい日常生活を送れるようサポートします。外来予診なども担います。

 

看護師とのダブルライセンスを生かして精神科でスキルを磨きながらキャリアアップを狙い、将来は個人でカウンセリングルームを運営するという道を目指すこともできます。

 

公認心理師の取得には、国家試験に合格する必要があります。

 

受験するには、4年制の大学か専門学校で所定科目を履修した後、大学院を修了するか指定の施設での2年以上の実務経験を積む必要があります。

 

臨床心理士よりも取得には時間がかかる一方で、国家資格という点に強みがあります。

 

公認心理師より30年ほど早く臨床心理士が創設されていますが、業務内容自体に大きな違いはありません。両方の資格を保有している人が多く、公認心理師の4割が臨床心理士の資格も取っています。

 

こんな人におすすめ
  • 心理系の国家資格を取りたい
  • 自信をもって心のケアをできるようになりたい
  • カウンセラーなどの心理職にも関心がある

 

公認心理師に看護師がなるには?受験資格や年収・メリットを解説

 

5.精神保健福祉士

精神保健福祉士
認定主体 国(国家資格)
主な役割 ・医療機関との連絡・調整を担う
・退院後の社会生活をサポートする
・福祉サービス利用についての相談対応を行う
受験資格 ・4年制大学卒:「一般養成施設」の修了
・専門学校卒:1~2年の相談援助実務経験+「一般養成施設」の修了
教育課程 実習や演習を含む精神保健福祉士養成科目(計1200時間)
国家試験 筆記
資格取得まで 最短1年
費用 計40~140万円程度
更新 なし
資格取得者 113,237人(2025年7月時点)


精神保健福祉士は心の病を抱えた患者さんの相談に乗り、日常生活を援助する専門職の国家資格です。精神保健福祉分野のソーシャルワーカーのことで、PSW(Psychiatric Social Worker)とも呼ばれます。

 

精神障害者の精神面や生活面をサポートする専門家として、医療機関や社会福祉施設だけでなく、学校や企業、行政機関などでも活躍が期待されるニーズの高い資格です。

 

患者さんが適切な医療を受けられるよう医療機関との調整を担うほか、社会生活をサポートするのが主な役割です。入退院に伴う関係機関の調整をはじめ、退院後の福祉サービス利用についての相談、就労・就学支援など、幅広い面から生活を支えます

 

精神保健福祉士の資格を取得するには、国家試験に合格しなければなりません。

 

国家試験の受験資格には「一般養成施設」と呼ばれる専門学校や大学などで必要なカリキュラムを学ぶ必要があります(1年~)。看護師の場合、専門学校・短大卒であれば「1~2年の相談援助の実務経験」がさらに必要です(4年制大学卒は不要)。

 

看護師が精神保健福祉士の資格も得ることで、精神疾患や認知症、依存症に悩む患者さんに対するケアの質が高まります。精神保健全般の知識・スキルが身につくので、医療的な視点だけでなく、退院後の生活まで見据えた看護ができるでしょう。

 

認知症や精神疾患のある高齢の入院患者さんが増えているだけでなく、精神医療は「入院から地域へ」の流れも進んでいます。退院後の生活をサポートできる看護師の需要は高まりそうです。

 

こんな人におすすめ
  • 精神保健福祉の専門知識に興味がある
  • 入院中だけでなく、地域での日常生活支援にも関心がある
  • 強みのある国家資格をプラスで取りたい

 

看護師が精神保健福祉士になるには?業務内容や資格のメリットも解説

 

6.ケアマネジャー

ケアマネジャー
認定主体 都道府県
主な役割 ・ケアプランを作成する
・要介護者へのサービス提案や生活支援を行う
・介護給付費を受け取るための給付管理を行う
受験資格 5年以上の実務経験
認定試験 筆記(合格後に実務研修)
資格取得まで 最短0年(必要実務経験年数除く)
費用 計5~7万円程度
更新 5年ごと
資格取得者 785,515人(合格者累計、2025年3月時点)

 

ケアマネジャー(介護支援専門員)は都道府県が認定する資格です。

 

退院支援や介護が必要な人へのサービスの提案、在宅での生活を継続するためのケアプラン作成などを担い、患者さんの地域生活を支えます。

 

認定試験は、看護師としての実務経験が通算5年以上あれば受けることができます。試験に合格した後は、実務研修の受講が必要です。

 

指定カリキュラムの受講や大学院の修了などが必要ない分、受験のハードルは他の資格よりも低いですが、ケアマネジャー試験の合格率は20%前後と低く、必ずしも「簡単に取れる資格」とは言えないかもしれません。

 

看護師がケアマネジャーの資格を目指す中で、患者さんが希望する在宅生活のためにどんなケアプランを作成すればよいか、自治体や訪問看護ステーションとどう連携すればよいかが学べ、退院支援や在宅での実践に必要な知識・スキルが身につきます

 

「入院から地域へ」が推進される近年では、看護師とケアマネジャーの資格があれば、患者さんの状態を医療的な視点から見極めながら退院、在宅生活を支えられる専門知識を持った人材として重宝されるでしょう。

 

こんな人におすすめ
  • 医療と福祉の視点で、在宅での生活を支援したい
  • 退院支援看護師や訪問看護師に関心がある
  • 大学院などへの進学が経済的・時間的に難しい

 

看護師がケアマネジャーになるには?受験資格、合格率、給料、ダブルライセンスのメリット

 

6つの資格を比較

では、ここまでに紹介した6つの資格について、特徴を一覧にして比較してみましょう。

 

  精神科認定看護師 精神看護専門看護師 臨床心理士 公認心理師 精神保健福祉士 ケアマネジャー
認定主体 日本精神科看護協会 日本看護協会 日本臨床心理士資格認定協会 国(国家資格) 国(国家資格) 都道府県
受験資格 ・実務経験
・教育課程受講
・実務経験
・看護系大学院の修了
・心理系大学院の修了 ・心理系大学か専門学校卒業
・大学院修了か実務経験
・「一般養成施設」修了(専門学校卒は実務経験も) ・実務経験
試験内容 ・面接 ・書類審査 ・筆記 ・筆記
・面接
・筆記 ・筆記(合格後に実務研修)
資格取得まで 1年程度(必要実務経験年数除く) 最短2年(必要実務経験年数除く) 最短2年 最短6年 最短1年 最短0年(必要実務経験年数除く)
資格の役割 ・実践
・相談対応
・指導
・知識発展
・実践
・調整
・教育
・研究
・心理査定
・カウンセリング
・知識発展
・心理査定
・カウンセリング
・知識発展
・連絡、調整
・生活支援
・相談対応
・ケアプラン作成
・生活支援
・給付管理
費用 計90万円程度 計150~200万円程度 計150~200万円程度 計100~600万円程度 計40~140万円程度 計5~7万円程度
更新 5年ごと 5年ごと 5年ごと なし なし 5年ごと
資格取得者 931人(2025年5月時点) 454人(2024年12月時点) 43,083人(2025年4月時点) 75,006人(2025年6月時点) 113,237人(2025年7月時点) 785,515人(合格者累計、2025年3月時点)

 

今後も需要が大きい精神科看護

精神疾患を抱える患者さんは近年、増加傾向です。

 

高齢化の加速やストレス社会など、社会環境の変化が影響したと考えられます。

 

厚労省の最新のデータによると、2023年の精神疾患の患者数は600万人を超えており、精神科看護でも専門的なケアや、保健福祉に関する知識を持つ看護師のニーズが高まっています

 

患者さんの思いや状況を丁寧に聞き取りながら必要なサポートを見極める精神看護にやりがいを感じており、「もっとスキルを磨きたい」という思いが強くなってきた方は、今回紹介した6つの資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。

 

看護roo!編集部 北井寛人

 

 

(参考)

精神科認定看護師制度ガイドブック
精神科認定看護師 全国データ
日本看護協会「専門看護師」
都道府県別専門看護師登録者数
日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士とは」
厚生労働省「公認心理師」
公認心理師の都道府県別登録者数
令和5年度公認心理師活動状況等調査報告書
厚生労働省「精神保健福祉士」
日本精神保健福祉士協会「精神保健福祉士について」
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士の都道府県別登録者数
厚生労働省「介護支援専門員(ケアマネジャー)」
厚生労働省「第27回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」
厚生労働省「精神保健医療福祉の現状等について」

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