最終更新日 2018/05/08

ウィルムス腫瘍

ウィルムス腫瘍とは・・・

ウィルムス腫瘍(うぃるむすしゅよう)は、腎臓に発生する小児悪性腫瘍の代表であり、現在では腎芽腫(nephroblastoma)と呼ばれることが多い。神経芽腫と肝芽腫と並んで、小児の三大固形悪性腫瘍のひとつであり、まれに成人にもみられる。10%以下の頻度で腎臓の両側発生がみられる。

腎臓のもとである胎児期の後腎造腎組織(metanephric blastema)から発生する。後腎造腎組織の細胞(後腎芽細胞)に類似する腫瘍細胞の増殖を認め、様々な分化成熟段階を示す上皮成分および間葉成分を伴う多彩な組織像を示す。家族性に腫瘍が発生することがあり、11番染色体短腕に存在する癌抑制遺伝子であるWT-1遺伝子の異常が原因の一つとされている。発生に明らかな男女差はみられない。

腫瘍が大きくなるまで無症状のため腹部腫瘍を触知して発見されることが多い。症状としては、消化器圧迫症状、便秘、食欲不振、嘔吐などがある。転移はリンパ節、肺、肝の頻度が高く、骨やなどは比較的稀である。外科的治療に加えて放射線療法や化学療法の併用で治療効果は高い。

病理学的には、被膜を有した境界明瞭な灰白色調腫瘤であり、囊胞を形成する場合もある。未熟で小型の紡錘形、円形、立方状の後腎芽細胞様腫瘍細胞の密な増殖を示し、尿細管様構造などの上皮成分、および横紋筋細胞などの間葉成分を様々な程度に伴う。

執筆: 大橋健一

横浜市立大学附属病院 病理診断科・病理部教授

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