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2019年04月17日

「AIで看護記録にかかる時間が半分以下になった」ってマジですか?

「AIで看護記録にかかる時間が半分以下になった」ってマジですか?アイキャッチ画像

 

看護師のみなさん、きょうも看護記録で大変ですか?

 

一日の仕事終わり、もうひと踏ん張りだ!とパソコンをカタカタしながら、

 

「……毎日こんなにも記録に時間を取られるのは、なぜなのか(早く帰りたい)」

 

とモヤモヤした気持ちになったりしているでしょうか。

 

多忙の一因になっている記録業務が楽になれば、看護師の働き方改革はもちろん、患者さんのケアにもっともっと時間と力を注げるはず。

 

そこで先日、「AI技術の活用で、看護記録の業務時間を58%削減できた」発表した医療法人社団KNIさん(東京都八王子市)に、「それ、すごいんですけど、本当ですか」と聞いてきました。

 

 

結論:本当だった

看護師・森口さんの写真

「本当です」。現場の目線でAIシステム開発に携わっている看護師・森口さん

 

北原国際病院や北原リハビリテーション病院などを運営するKNI。

 

医療の質の向上と効率化のため「デジタルホスピタル」の構想を掲げ、最新技術を積極的に開発・導入していることで有名です。

 

実は、以前にも取材にお邪魔して「看護×AI」のいろんな構想を教えてもらっています。そのときの記事もぜひ読んでいただきたいのですが、かいつまんで言うと、

 

耳に装着するインカム型のウェアラブル端末を通して、

 

看護記録に必要な情報を音声入力できたり、

 

看護師をアシストする情報をAIが音声で教えてくれたりする

 

という、夢だけど夢じゃないシステムをNECと共同開発中なのです。すごいなー。

 

インカム型端末を耳に装着する森口さんの写真

インカム型の端末を通してAIシステムにつながる!

 

「前回の取材から1年ちょっと経って、音声入力の機能が実際に形になってきました」


こう話してくれたのは、KNIのAIシステム開発で中心的役割を担っている看護師の森口真由美さん

 

「2018年9月から10月にかけて、実証実験として複数のスタッフに試してもらったんです。日勤と夜勤、病棟と救急外来、男性女性、経験年数の長短と条件もいろいろ変えて。

 

その結果、細かな課題はありつつも、1人あたりの記録業務の時間を半分以上減らすことができました

 

それはつまり、1日1時間かかっていたとしたら30分以下になるということですよね! やったー!

でも、いったいどういう仕組み?

 

 

音声で入れた情報は、AIが自動で整理してくれる

KNIで使用しているスマートフォンとインカム型端末の写真

シンプルなホーム画面に置かれた「音声メモアプリ」。奥がインカム型の端末

 

北原リハビリテーション病院では、既に病棟業務にスマートフォンを導入済み。看護師は、ナースコールや患者さん情報をそれぞれ手元のスマホで確認することができます。

 

「ここにアプリとして、音声入力の機能を加えたんです」(森口さん)

 

さっそくウェアラブル端末を着けて、スマホも持って、201号室の受け持ち患者さんのところに行く…という設定でやってみます。

 

病室と患者番号が書かれたデモ画面の写真

デモ画面なので「患者1」「患者2」ですが、実際の運用では患者さんの名前になるとのこと

 

「患者1」さんは今朝から発熱があり、ロキソニンが処方されています。

 

「大丈夫ですか? 熱を下げるお薬、先生が出してくれましたよ」

 

身体を起こして服用をお手伝いしたら、アプリを起動。「患者1」さんをタップして言います。

 

「ロキソニン1錠、内服」

 

音声入力した情報が文字化されたデモ画面の写真

 

はい、文字になりました!

 

でも、これくらいだったら正直、「ちょっと便利な音声入力」というだけ…という気がしますが、ここで、患者さんの詳細情報の画面を見てみます(わかりやすいようにPC側の画面でどうぞ)。

 

音声入力した情報が自動で分類・構造化されたシステムの画面

 

音声入力した情報をAIが自動で分類、構造化してくれてる~~~!

 

「ロキソニン1錠内服」は、SOAPのうちの「O=客観的情報」であり、かつ「医薬品」に関する内容である、と瞬時に整理されています。

 

さらに、情報の入力時から時間のカウントが始まって、「さっきのロキソニン服用から、どのくらい経っているか」がパッと分かるようになっているのも便利ですよねー。

 

ロキソニン内服からの時間がカウントアップされている画面の写真

 

 

 

↓音声入力した情報がどんなふうに反映されるのか、動画で見ると、こんな感じ。

 

 

「普通だったら、ポケットからメモ帳とペンを出して『○○さん 10:13 ロキソニン』って書きますよね? あるいは頭で覚えておく。それを後で時間があるときに記録にまとめ直す…という作業をすると思います。

 

これを音声で、リアルタイムに、デジタル化されたメモとして残しちゃおうということなんです」(森口さん)

 

インカム型端末を着けて患者さんをケアする森口さんの写真

音声入力なので両手がフリー。ケアしながら気づいたことを即メモできる

 

両手が塞がる体位交換や口腔ケアのときにも、

 

「○○さん、背中に痛みがあるっておっしゃってましたね」

「あー、背中が少し赤くなってますね」

「歯肉から少し出血あります、今日はちょっと痰も多いですねえ」

 

と声がけすれば、手袋を外してペンと紙を持って…という動作不要で、そのままメモになり、S=主観的情報、O=客観的情報などと分類してくれちゃいます。

 

 

メモから記録へ、あえてワンクッションを挟む理由

ベッドサイドでPCを操作する森口さんの写真

音声入力した情報はAIが整理してクラウドに保存、スマホやPCで確認できる

 

ただし、看護記録として電子カルテに入力するには、看護師がメモの情報を取捨選択してコピー&ペーストし、文章化するという作業がワンクッション入るのだそう。

 

……あれ、結局ちょっと面倒じゃないですか?

 

「確かに、私たちも直接記録される方法がいいと考えていたんですけど、やってみると、

 

  • 誤入力が生じた場合、修正されないまま記録されるリスクが高まる
  • 電子カルテシステムに直接つなげると、初期投資やアップデートのハードルが高くなり、診療報酬改定などの変化に対応しにくくなる

 

など、デメリットの方が大きかったんですよ」

 

あ~、なるほど。

でも、コピペして書き直す手間を残しているのに、記録業務の負担がそんなに軽くなるんでしょうか?

 

「さっきも触れましたが、看護記録はたいてい仕事が一段落したときに、思い出しながら書くものですよね。メモも単語の走り書き程度だったりして。

 

すると、本当は10個のポイントを観察していたのに、記録には5個しか書けないとか、どうしても抜け落ちや曖昧さが生じます。

 

でも、このシステムを使えば、後からうーん、えーっと、と思い出す時間が省けて、かつ正確な情報がすぐに引っ張り出せます

 

しかも、それがアナログのメモ帳じゃなく、デジタルで残っているので、いわば記録の下書きがシステム内に既にできている状態です。あとは必要なところをコピペでペタペタ。ちょっと接続詞を加えたり、間違った漢字変換を直したりするだけで済み、文章化がすごく楽になるんです」

 

看護記録を書くぞ、というときに必要な材料が、AIに整理された状態でそろっているから効率的なんですね。

 

なんだか、お料理番組の「材料はこちら」で、既に下ごしらえされた肉やら野菜やら大さじ1杯分の調味料やらが、ちゃんと用意されているイメージが近いかも。

 

 

「記録には書かないけど引き継ぎしたいこと」もここで共有

さらに「申し送り機能」も近く追加されるそう。

 

申し送り機能が追加される予定のデモ画面の写真

画面右下の「メモ3」に申し送り事項が記載されていく予定

 

『○○先生はもうすぐ手術終わるから、そしたら201号室の△△さんの点滴について確認してほしい』

 

『△△さんの歯ブラシが古くなってた。日中、ご家族がいらしたら新しいのを持ってきてくれるように伝えておいて』

 

こんな「看護記録には書けないけど、ナース間で伝えたいこと」は、申し送りメモで共有。口頭での引き継ぎを省略できるので、業務時間を短縮できるほか、連絡ミスによるインシデントの防止にもつながると見込んでいます。

 

 

不穏や誤嚥性肺炎のハイリスク患者の早期検知はまもなく運用へ

北原国際病院(東京・八王子市)の外観写真

医療法人社団KNIの本院・北原国際病院

 

森口さんが開発に携わっているAIシステムは、看護記録の効率化だけではありません。

 

特に注目なのが、

 

誤嚥性肺炎や不穏行動が起こりそうなハイリスク患者をAIが抽出する

 

という予兆検知システムです。

 

膨大なデータから解析された予兆パターンを基にハイリスク患者を抽出。重点的に予防介入することで、入院の長期化を防ぎ、対応する看護師の負担を軽減しようというものです。

 

開発が先行していた、この予兆検知システムは「2019年夏くらいには、本院で運用できる段階に持っていきたい」というところまで進んでいるそう。

 

 

人間の看護師の役割は「もっと考える看護」へ

インカム型の端末、スマホ、PCをケアに活用する看護師の写真

 

一方、看護記録の支援システムの本格運用はもう少し先の話。

 

医師の約束指示やさまざまな評価スケールをAIが音声で教えてくれるアシスト機能を搭載したり、看護必要度の評価の自動入力機能を入れたりなど、目指す完成形には、まだいくつかのステップが必要だと森口さんは言います。

 

「いずれは看護計画とも連動して、AIが『この項目の観察が足りてませんよ』と知らせてくれるような、ベッドサイドの看護師を助けるものにしたいと考えています」

 

これが実現したら、本当に便利そう!

 

と感動する一方で、そんなに何でもAIが教えてくれたら、ちゃんと考えてケアする看護師がいなくなってしまうのでは…という心配もふと頭をよぎります。

 

そんな疑問に森口さんは「むしろ人間の看護師は、もっと考えることの重要性が高まる」と答えます。

 

「AIによって記録業務や情報共有の仕組みが改善されれば、確かに、これまで看護師が考えていたことの一部はAIに任せることになるのかもしれません。

 

ですが、アセスメントし、最終的に判断するのは人間です。

 

AIに一部を任せることで生まれる余裕を使って、

『AIはこう言ったけど、本当にそれでいいか』

『こうしたらAIの予測よりも早く退院できるはず』など、患者さんのベッドサイドに足を運び、さらに高い次元で考えてケアすることに看護師の能力と時間を振り向けられるようになる。私はそう思っています」

 

日々の忙しさに追われ、思うような看護ができないという声は少なくありません。そんな看護師を支えてくれるAI導入の広がりに期待が高まります。

 

KNIの看護師・森口さんと、共同開発者のNEC・小阪さんの写真

記録業務の短縮効果を実測するため、ストップウォッチを手に一日中、看護師の後を追いかけたNECの小阪勇気さん(右)と森口さんの次の成果が早く聞きたいです

 

 

※編注:記事で紹介した内容は技術実証の紹介であり、システムの販売・授与は行われていません。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

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