1. 看護roo!>
  2. ステキナース研究所>
  3. ホスピスで働く音楽療法士・佐藤由美子>
  4. 知らず知らず看護師に積み重なる悲しみ…「プロフェッショナル・グリーフ」を知っていますか?

2017年12月29日

知らず知らず看護師に積み重なる悲しみ…「プロフェッショナル・グリーフ」を知っていますか?

音楽のあるホスピスから

Vol.9 喪失を繰り返す職場であることに自覚を

 

プロフェッショナル・グリーフとは

病院、高齢者施設、在宅ケアなどの現場で働いていると、喪失を頻繁に経験します。

 

患者さんや利用者さんが亡くなったとき、私たち医療従事者も悲しみを経験しますが、それを表出する機会は少ないのではないでしょうか。

 

大切な人を失ったときに起こる深い悲しみをグリーフと言いますが、職業柄起こるグリーフは「プロフェッショナル・グリーフ」と呼ばれます。

 

日本では耳慣れないかもしれませんが、アメリカの医療者の間では、よく聞かれる言葉です。

 

このようなグリーフが長年積み重なると、さまざまな症状が現れます。仕事が思うようにできなくなったり、バーンアウト(※)したりするのです。

※燃え尽き症候群のこと

 

私も長年ホスピスケアに携わる中で、プロフェッショナル・グリーフを経験しました。

 

しかし、医療従事者は患者さんの死を個人的なものと捉えないようにトレーニングされていますので、このようなグリーフは自分でも気づかないことが多いです。

 

あなたの職場では、悲しみを表現できるような雰囲気はありますか?

 

私が、家族やペットとの死別というパーソナル・グリーフ(個人のグリーフ)を経験したときには、プロフェッショナル・グリーフが重なり、仕事が続けられないと思った時期もありました。

 

そんなとき役に立ったのは、グリーフについての知識とそれに向き合うための具体的な方法でした。

 

今回は、医療従事者が経験するプロフェッショナル・グリーフとそれを乗り越えていくためのヒントをご紹介します。

 

プロフェッショナル・グリーフ」と「パーソナル・グリーフ」の違いは?

「プロフェッショナル・グリーフ」であっても「パーソナル・グリーフ」であっても、グリーフは、身体的、精神的、社会的、スピリチュアル的な面で私たちに影響を与えます。

 

例として、下記のような症状が挙げられます。

 

・体がだるく、疲れやすい

・食欲がない

・夜眠れない

・溢れ出すような気持ちに圧倒される

・何も感じない(無感覚・無感情)

・突然イライラしてしまう

・周囲の人が自分の心の苦しみに気づかない、ということに驚いてしまう

・大切な人の死を防げなかった自分に罪悪感を覚える

・自分自身や周りに怒りがある

・物忘れがはげしくなる(例:頻繁に鍵をなくす)

・何か言いかけて、忘れてしまう

・物事に集中できない

・人生が虚しく感じ、意味がないものに思える

・忙しく予定を立てて、悲しみをまぎらわせようとする

 

このリストからもわかるように、グリーフの症状は幅広く、人によって異なります。

 

■プロフェッショナル・グリーフの特徴

プロフェッショナル・グリーフはパーソナル・グリーフと違い、大抵の場合オープンにされることはなく、個人の心の中にしまったままになっています。

 

医療従事者はプロとして、患者さんの死を個人的なものと捉えないようにしていますし、日々の忙しい仕事に追われ、一人ひとりの死に向き合う暇もない、という現状があるからです。それでもグリーフは、知らず知らずに積み重なっていきます。

 

プロフェッショナル・グリーフの特徴をいくつか挙げてみましょう。

 

・グリーフが隠れていて、わかりにくい

・喪失が積み重なっていき、グリーフが慢性化する

・グリーフが怒り、不安、罪悪感、無力感、非難などの感情として現れる

・喪失が起こってからグリーフを経験するまでに、時間がかかる場合がある

・グリーフが燃え尽き症候群につながる

 

私たちにできることとは?

グリーフの過程で最も大切なことは、自分のグリーフを認識し、何らかの形で気持ちを表現することです。

 

そのためにできる方法をいくつかご紹介します。

 

・定期的にスーパービジョン(※)を受ける

・日記をつける

・音楽やアートを通じて気持ちを表現する

・信頼できる同僚に気持ちを打ち明ける

・「自分のための時間」をつくり、好きなことをする

・健康的な食事、充分な睡眠、適度な運動を心がける

(※専門家からの支援)

 

「音楽療法士は『普通ではないこと』を日々経験し、それを知らず知らずに家に持って帰ってきてしまう。まずはそれを認識しないといけない」と学生時代、恩師によく言われました。

 

これはすべての医療従事者に言えることではないでしょうか。

 

グリーフそのものは「普通のこと」でも…

グリーフそのものは、喪失の際に経験する「普通のこと」です。

 

でも、医療や介護の現場で働き、喪失を繰り返し経験するということは、それが日常の出来事であっても、決して「普通のこと」ではありません。

 

それを自覚することが大切だと思います。

 

そうすることで初めて、セルフケア(自分を思いやること)に目を向けることができるからです。

 

(参考)

佐藤由美子 著『死に逝く人は何を想うのか-遺される家族にできること』(ポプラ社)

Understanding Professional Grief(National Association of Social Workers)

 

【佐藤由美子】

ホスピス緩和ケアを専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院音楽科を卒業後、オハイオ州シンシナティのホスピスで10年間音楽療法を実践。2013年に帰国。帰国後は青森県在住。15年からは青森慈恵会病院の緩和ケア病棟で音楽療法士として働いている。著書に『ラスト・ソング』(ポプラ社)、『死に逝く人は何を想うのか』(ポプラ社)がある。ハフィントンポスト(日本版)でBlog「佐藤由美子の音楽療法日記」を掲載中。

この連載

もっと見る

コメントを投稿する

コメント入力
(100文字以内)
ニックネーム
(12文字以内)

コメント一覧(3)

3Search for J2018年03月25日 04時49分

The Last Unicorn - Movies & TV on Google Play

2まさちゃん2018年01月11日 11時42分

この記事では、現在、青森で働いでいることになっていますが、日本にいらっしゃるのでしょうか?

1匿名2017年12月31日 20時21分

涙が止まらない、親と重なることはあります。

関連記事

いちおし記事

寄り添う看護

みなさんが思う「患者さんに寄り添う看護」はどんなもの? [ 記事を読む ]

ドレーンの種類と管理方法

ドレーン排液の異常や固定部のずれ、ゆるみの有無を観察しましょう! [ 記事を読む ]

人気トピック

もっと見る

看護師みんなのアンケート

看護や医療系の1日セミナー、いくらまでなら自腹で参加費を支払う?

投票数:
1169
実施期間:
2018年11月23日 2018年12月14日

看護師辞めようかと思うほどに怖かったインシデント、経験ある?

投票数:
1034
実施期間:
2018年11月27日 2018年12月18日

最初の患者さんのこと、覚えてる?

投票数:
1032
実施期間:
2018年11月29日 2018年12月20日

【クリスマス】サンタにお願いしたいプレゼントは?

投票数:
1084
実施期間:
2018年11月30日 2018年12月21日

人生で一番号泣した作品は?

投票数:
955
実施期間:
2018年12月04日 2018年12月25日

感情を一生出せないとしたらどれが一番つらい?

投票数:
888
実施期間:
2018年12月07日 2018年12月28日

安楽死に賛成?反対?

投票数:
578
実施期間:
2018年12月11日 2019年01月01日
もっと見る

今日の看護クイズ 挑戦者153

がん末期の79歳の女性患者さん。自分の人生は残り少ないので、どうしても家に帰りたいと希望しています。ご家族は女性患者さんの希望を受け入れてあげたいと思っていますが、自宅で介護する自信がなく、どうしたらいいのか悩んでいます。そこで、女性患者さんと家族の双方の思いを酌んだ在宅移行ができないか、退院調整のスタッフから相談を受けました。以下、退院調整スタッフへの回答として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • 1.訪問看護を利用し、ご家族は女性患者さんの思いを受け入れて、介護指導を受けながら精一杯頑張るよう説得するべきだと提案した。
  • 2.ご家族の不安が大きいので、訪問看護を利用するか、ホスピスへの移行を提案した。
  • 3.介護負担が増大しないように、訪問看護と泊まりのサービスを定期的に利用することのできる看護小規模多機能型居宅介護の利用を提案した。
  • 4.介護負担が増大しないように、訪問看護と泊まりのサービスを定期的に利用することのできる居宅療養管理指導の利用を提案した。
今日のクイズに挑戦!