医療的ケア児とは

『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。

今回は医療的ケア児について解説します。

 

 

佐々木祥子
東京都看護協会/小児看護専門看護師

 

 

医療技術の進歩に伴い、経管栄養管理、喀痰吸引、人工呼吸器による呼吸管理等の医療的ケアを必要とする子どもが増えている現状がある。

 

しかし、医療的ケア児およびその家族が安心して暮らし、育てることができる社会の仕組みが確立されていない。これらの背景から、2021年9月に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行された。

 

本項では、医療的ケア児および家族に必要な支援について紹介する。

 

 

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医療的ケア児とは

医療的ケア児とは、日常生活および社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引、その他の医療行為)を受けることが不可欠である児童(18歳以上の高校生を含む)をいう1)

 

医療的ケア児は重症心身障害児(重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複した状態にある児童)と混同しがちであるが、自分で身体を動かすことができない肢体不自由や、言葉を話せない知的障害などがない医療的ケア児も多い(表1)。

 

医療的ケア児

日常生活および社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠である児童(18 歳以上の高校生を含む)

 

重症心身障害児

重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複した状態にある児童

 

表1 分類のイメージ

分類のイメージ

厚生労働省社会・援護局 障害保健福祉部障害福祉課「令和3年度報酬改定における医療的ケア児に係る報酬(児童発達支援及び放課後等デイサービス)の取扱い等について」より一部改変

 

本項では、「医療的ケア児」と表記している箇所については、「医療的ケア児」「重心医ケア児」を含むこととする。

 

 

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医療的ケア児支援法の成立(2021年)

医療的ケア児は医療の進歩と共に年々増加し続け、全国に約2万人いると推計されている(図1)。

 

図1 在宅の医療的ケア児の推計値(0~19歳)

在宅の医療的ケア児の推計値(0~19歳)

厚生労働省社会・援護局 障害保健福祉部障害福祉課 障害児・発達障害者支援室「医療的ケア児等の支援に係る施策の動向」より

 

2021年6月に成立し、9月に施行された「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(表2)は、近年の医療的ケア児増加の背景のもと、国・地方自治体が「責務」として医療的ケア児およびその家族の支援を行い、医療的ケア児の日常生活および社会生活を社会全体で支えていくことを明文化した法律である。

 

これにより、保育所や学校等での医療的ケア児の受け入れに向けた支援が拡充され、医療的ケア児の健やかな成長が図られることが期待されている。

 

表2 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律

医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律

(2021年6月11日成立、9月18日施行)

厚生労働省「 医療的ケア児等とその家族に対する支援施策-2医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律・医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の全体像」をもとに作成

 

 

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医療的ケアの種類

医療的ケアは、表3に示す14類型の医療行為を指す。

 

表3 医療的ケア(診療の補助行為)

医療的ケア(診療の補助行為)

厚生労働省社会・援護局 障害保健福祉部障害福祉課「令和3年度報酬改定における医療的ケア児に係る報酬(児童発達支援及び放課後等デイサービス)の取り扱い等について」をもとに作成

 

2019年度の実態調査において、医療的ケア児が必要とする医療的ケアは、「経管栄養(経瘻・腸瘻)」が74.4%で最も多く、「吸引(気管内、口腔・鼻腔内)」、「気管内挿管、気管切開」、「ネブライザー」の順に続く2)

 

 

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医療的ケア児への在宅でのケアの特徴

医療的ケアが必要になった理由は、「先天性の病気」「後天性の病気」「事故」「その他(出産時のトラブル、超低出生児、原因不明など)」が挙げられる2)

 

状況により細やかな対応が必要とされるため、個別性の高いケアが求められる。在宅では主な介護者が母親であることが多いため、介護者の負担が最小限となるよう、適切な支援を組み合わせることが必要となる。

 

また、医療的ケア児とその家族には、病院入院中から、地域の医療機関、訪問看護ステーション、行政、教育機関などのさまざまな職種が関わることが多いため、プライバシーを保持したうえで情報共有を密にして、それぞれの役割を明確にし、チームで成長を支えていくことが重要である。

 

 

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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ

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