疣贅[いぼ]|ウイルス感染症⑤

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は疣贅[いぼ]について解説します。

 

瀧川雅浩
浜松医科大学名誉教授

 

 

Minimum Essentials

1ヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス)の感染によって生じる、皮膚および粘膜の良性腫瘍。いわゆる「いぼ」。

2尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)は表面がざらざらした灰白色の丘疹で、足底では盛り上がらず魚の目状になる。扁平疣贅は顔面、手背に多発する扁平な丘疹である。尖圭(せんけい)コンジローマは性感染症で、陰部に単~多発する白色~褐色調のカリフラワー状の丘疹。

3治療としては液体窒素圧抵(あってい)がもっともよく行われる。尖圭コンジローマではイミキモド外用も併用する。

4数回の治療で消失することが多く、予後は良い。

 

疣贅[いぼ]とは

定義・概念

ヒトパピローマウイルスの感染によって生じる、皮膚および粘膜の良性腫瘍である。接触感染でヒトからヒトへとうつる。ウイルスを構成するDNAの違いにより210種類以上の型が確認されているが、型の違いにより、尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)、扁平疣贅、尖圭コンジローマなどのさまざまな臨床型をとる。

 

原因・病態

ヒトパピローマウイルスが、外傷を受けやすい露出部、とくに手指、足底、膝、顔面の皮膚から侵入し、角化細胞中で増殖することにより生じる腫瘍である。

 

尋常性疣贅は、小学校低学年までの小児に多くみられる。足の裏の魚の目を訴えて受診する子供では、ほとんどがこのタイプのいぼである。扁平疣贅は20歳代の若い人に多くみられる。尖圭コンジローマは性感染症で、性活動の活発な青壮年に生じる。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

通常、痛くもかゆくもない。臨床症状から診断は容易である。

 

尋常性疣贅

四肢末端、頭部、顔面にしばしばみられる。手、足では半球状に隆起した灰白色の丘疹(図1)で、サイズは1cmぐらいまでである。

 

図1 尋常性疣贅

a:手のいぼ(→)。

尋常性疣贅、手のいぼ

 

b:足の裏のいぼ。

尋常性疣贅、足の裏のいぼ

 

表面はざらざらしており、小さい黒点(疣贅内の毛細血管に生じた血栓)が点々とみられる。顔面、首では先端が尖った細長い突起になることもある。足底では体重で押されるため隆起することはなく、魚の目状または多発して敷石状の角化性病変になる。うおのめとの鑑別を表1に示す。

 

表1 足底のいぼとうおのめ(鶏眼)の違い

足底のいぼとうおのめ(鶏眼)の違い

 

なお、たこは皮膚全体が厚くかたく盛り上がり、痛みはない。

 

扁平疣贅

顔面、手背に多発する径1~3mm大の円形~楕円形の扁平な丘疹である。表面は平滑で、肌色~褐色調である。いぼ全部が急にかゆく赤くなり、2~3ヵ月で消失することがある(自然消退現象)。

 

尖圭コンジローマ

青壮年の外陰、膣・子宮頸部の皮膚および粘膜や肛囲に多発する白色~褐色調の乳頭状、カリフラワー状の丘疹(図2)で、性感染症として発症する。

 

図2 尖圭コンジローマ(→)

ほかに小さな病変が多数みられる。

尖圭コンジローマ
画像を見る

 

検査

診断は容易であり、特別な検査は必要としない。確定診断が困難な場合には、組織所見や組織内のウイルス抗原あるいはウイルスDNAの存在により確認する。尖圭コンジローマが広範囲にみられる場合は梅毒またはHIV感染症を疑い、患者の同意のもとスクリーニング検査を行う。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

臨床病型、病変の部位、痛みを伴う治療に耐えられるかなどを考慮し、選択する。

 

(1)全身療法

扁平疣贅の場合、ヨクイニンが処方される。当薬が有効であるというエビデンスはないが、プラセボ効果によりウイルスに対する免疫を高め自然消退現象を引き起こすと考えられている。

 

(2)局所療法

①液体窒素療法

綿棒に液体窒素を含ませ、疣贅病巣の凍結融解を3~4回繰り返す。1~2週間に1回程度、疣贅が消失するまで行う。痛みを伴うので、小児の場合は加減しながら治療する。

 

②電気焼灼法

局所麻酔をしたうえで電気メスを用い、疣贅を焼いて削り取る。

 

③イミキモド外用

尖圭コンジローマに対してのみ行われる。週に3回(毎日ではなく、たとえば1日おき)、就寝前に患部に塗布し、翌朝洗い流す。これを原則として16週間続ける。塗布により発赤やびらん、痛みやかゆみなどの皮膚反応が起きることをあらかじめ患者に知らせておく。

 

合併症とその治療法

尖圭コンジローマは性感染症であり、広範囲にみられる場合は梅毒、HIV感染の合併を疑いスクリーニング検査を行う。

 

治療経過・期間の見通しと予後

液体窒素療法を1~2週に1回行う。多くは数回の通院で消失する。イミキモド外用だけで消失しないときは、液体窒素療法と併用する。

 

看護の役割

治療に痛みを伴うことが多い。難治性、再発性の場合は、治療の目的を明確にし、定期的に治療を続けるよう指導し励ます。

 

尋常性疣贅を自己判断で削ったり、スピール膏を貼って剝がしたりすると、大きくなることがあるので、小児例では保護者を通じてこの点を注意する。

 

幼小児の尋常性疣贅や扁平疣贅では、免疫反応による自然治癒が期待できるため、常に治癒への希望をもたせることが大切である。

 

尖圭コンジローマでは、イミキモドを塗布した状態での性行為は避ける。パートナーへの薬剤付着により、皮膚障害を生じる可能性がある。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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