慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』より転載。
今回は慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)の検査・治療・看護について解説します。

 

石田敦子
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任

 

 

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)とは?

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP;chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy)とは、原因不明の後天性脱髄性末梢神経疾患です(図1)。

 

図1慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーの病態

図1慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーの病態

 

2か月以上かけて緩徐に進行する四肢の運動障害(脱力・筋力低下)と感覚障害が主徴です。

 

初回発症時にはギラン・バレー症候群との鑑別が困難です。

 

 

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患者さんはどんな状態?

左右対称性に腕が上がらなくなり、握力が低下して物をうまくつかめない、箸が思うように使えない、階段がうまく登れない、転びやすいなどの症状が現れます。

 

四肢の脱力がみられ、初期にはしびれ感などの異常感覚をしばしば伴います。

 

表在感覚の低下は軽度であることが多いです。また、初期には四肢の症状が非対称性にみられることもあります。

 

四肢の腱反射は低下、消失します。

 

脳神経も障害されることがあり、舌・咽頭筋麻痺、顔面神経麻痺が起こります。呼吸筋麻痺はまれです。

 

フキダシ:ギラン・バレー症候群とは異なり、先行感染はありません

 

 

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どんな検査をして診断する?

脳脊髄液検査:半数以上でタンパクの上昇がみられます。

 

血液検査:血清Mタンパクがみられることがあります。

 

神経伝導検査:脱髄の確認を行います。末梢神経伝導検査では、運動神経の伝導速度の遅延を認めます。

 

筋電図検査:複合筋活動電位(CMAP;compound muscle action potential)の持続時間の延長を認めます。

 

神経生検:脱髄障害か軸索障害かの鑑別のために行います。菲薄髄鞘有髄線維(ひはくずいしょうゆうずいせんい)や、ときほぐし法による脱髄の所見を認めます。

 

memo:神経生検

主に腓腹神経で行われ、局所麻酔をして切開が必要となる。検査後は疼痛や創部の観察を行う。

 

MRI検査:馬尾、神経根、神経叢の肥厚や造影増強効果を認めます。

 

 

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どんな治療を行う?

免疫グロブリン(IVIg)療法:血液製剤を5日間連続して静脈注射により投与します。

 

血液浄化療法:血漿交換を行います。

 

ステロイド治療:IVIgと血漿交換に反応がみられた後に行われます。

 

 

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看護師は何に注意する?

経過の長い疾患であるため、身体的ならびに精神的に大きな負担がかかります。再発と寛解を繰り返す人や、長期間をかけて徐々に症状が進行する人もいるため、継続的な通院や治療についてサポートが必要となります。

 

症状が進行すると、四肢の筋力低下により移動に杖や車椅子が必要となる場合があります。リハビリテーションや歩行のための装具を作製するなど、整形外科的な管理も必要となります。

 

転倒予防について、注意喚起を行います。

 

精神的負担への支援や、就学・就労に関するサポートが必要な場合、臨床心理士やMSWと連携します。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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