急性硬膜外血腫

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』より転載。
今回は急性硬膜外血腫の検査・治療・看護について解説します。

 

西山久美江
東京純心大学看護学部看護学科講師
急性・重症患者看護専門看護師

 

 

急性硬膜外血腫とは?

頭部へ限局的な衝撃が加わることで、頭蓋骨骨折あるいは硬膜損傷が生じ、骨折部、硬膜動脈、硬膜静脈洞より出血し、頭蓋骨内板と硬膜の間(硬膜外腔)に血腫を形成します(図1)。

 

図1硬膜外血腫の発症部位

図1硬膜外血腫の発症部位


多くの場合、頭蓋骨骨折を伴いますが、小児では頭蓋骨の弾性が高く、成人に比べ骨折を伴うことは少ないです。

 

一般的には脳損傷を伴わないことが多いですが、重症の頭部外傷では、脳損傷を合併するケースもあります。

 

 

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患者さんはどんな状態?

受傷直後は意識障害がなく、血腫が増大し脳を圧迫するまでは意識が清明なことが多いのが特徴です(意識清明期)。進行性に意識障害が出現したり、受傷直後に意識消失することもありますが、すぐに回復します。

 

血腫の急激な増大や急性硬膜下血腫、脳損傷など合併したケースでは、受傷直後から意識障害が継続することもあります。

 

血腫の増大とともに、頭痛、嘔吐、意識障害、瞳孔不同・散瞳、血腫と対側の片麻痺、除脳硬直や呼吸状態の異常といった頭蓋内圧亢進症状が出現します。

 

好発部位

急性硬膜外血腫の出血源で最も多いのは中硬膜動脈で、次いで板間静脈上矢状静脈洞横静脈洞です(図2)。

 

図2急性硬膜外血腫の出血源と好発部位

図2急性硬膜外血腫の出血源と好発部位

 

好発部位は、側頭部が最も多く、次いで前頭部、頭頂部であり、ほとんどが片側性です。

 

 

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どんな検査をして診断する?

頭部CTでは、頭蓋骨の内側に凸レンズ型の高吸収域が認められます(図3)。

 

図3急性硬膜外血腫の画像診断

図3急性硬膜外血腫の画像診断

 

時間の経過とともに出血が増大することがあるので、臨床症状出現時はCTで再評価することが重要となります。

 

 

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どんな治療を行う?

保存的治療

神経学的に無症状で、CT上、血腫が小さいものであれば保存的に経過観察します。

 

血腫が増大し脳幹反射が消失したり、脳損傷が重度で回復の見込みが乏しい場合にも保存的に経過観察します。

 

外科的治療

外科的治療の適応は、以下のケースです。

 

  • 意識障害の出現や進行性の悪化を認めるケース
  • 頭蓋内圧亢進症状を認めるケース
  • 血腫の厚さが2cm以上または、その量が20~30mL以上(後頭蓋窩では15~20mL以上)

 

手術は、緊急で開頭血腫除去術が施行されるのが一般的です(図4)。

 

図4開頭血腫除去術

図4開頭血腫除去術

 

頭蓋内圧が高い場合には、外減圧術が併用されることもあり、穿頭や小開頭で血腫を吸引し減圧することも有用な場合があります(図5)。

 

図5外減圧術

図5外減圧術

フキダシ:時期を逃さず血腫除去が行われれば、一般的に急性硬膜外血腫の予後は良好です。ただし、重度の意識障害や除脳硬直、呼吸障害を認めるケース、血腫の増大速度が速いケースなどは予後不良となり、死に至ることもあります

 

 

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看護師は何に注意する?

情報収集

急性硬膜外血腫の患者さんは、救急搬送されるケースが多く、血腫の大きさや厚みが軽度であれば保存的に経過観察しますが、搬送後にそのまま緊急手術となるケースもあります。救急車受け入れの際は、確実な情報を得て、すみやかに対応できるよう受け入れ準備をしっかり行いましょう。

 

受傷時の状況、身体所見や症状の変化など、細かく要点をおさえて患者さんから現病歴を聴取します。意識障害などで患者さんから直接聴取することが困難な場合は、救急隊からの情報や家族あるいは救急車に同乗してきた人から情報を聴取します。

 

既往歴は、特に高血圧や循環器、呼吸器疾患、肝臓疾患や腎臓病、糖尿病など、全身状態に影響を及ぼす基礎疾患の有無を中心にしっかり聴取します。

 

内服中の薬、アレルギーの有無も確認します。特に抗凝固薬や抗血小板薬、ビグアナイド系の糖尿病治療薬を内服している患者さんは注意が必要です。「お薬手帳」を参照するなど、しっかり確認しましょう。

 

バイタルサイン

バイタルサイン、意識レベル、瞳孔所見(瞳孔不同や散大の有無)、頭痛、嘔気、嘔吐、運動麻痺の有無など、神経学的所見を観察します。

 

出血を助長せぬよう血圧の管理は重要です。止血薬や、必要時は降圧薬を用いて血圧をコントロールします。看護ケアや処置を行う際は、血圧を確認しながら優先順位を考えましょう。

 

手術準備

上記を迅速に行いながら、タイムリーにCT画像や採血結果を確認しつつ、緊急手術が必要になる場合は、手術室への送り出しの準備を行います。

 

血腫が小さく保存的に経過観察する場合でも、その後血腫が急激に増大し、緊急手術が必要となるケースもあります。

 

バイタルサインの変動や意識障害の進行、神経学的所見の変化について、細かくていねいに継時的に観察します。変化がみられる場合は、すみやかに医師に報告し、再度CTで血腫の評価を行う必要があります。

 

安全確保

意識障害の悪化などにより、ルート類の事故・自己抜去やベッド転落・転倒など、突発的な事故が生じるリスクもあるため、常に患者さんの安全確保に努めます。

 

吐物の誤嚥や、唾液の不顕性誤嚥(サイレントアスピレーション)により、肺炎や無気肺などを発症するリスクもあります。呼吸音を聴取しながら、体位の調整や、必要時は吸引を行います。

 

memo:不顕性誤嚥(サイレントアスピレーション)

嚥下反射や咳嗽反射が低下することで、むせることなく気道内に少量ずつ誤嚥すること。

 

家族のサポート

患者さんの予期せぬ突然の受傷、生命を脅かすような危機的状況に、家族は強い不安や緊張、混乱をきたし、心理的な危機的状態に陥りやすくなります。家族に対応する際、看護師は自分の氏名と役割を名乗り、家族の心理を配慮しつつ落ち着いた態度で接することが大切です。

 

初療室では、患者さんの処置やケアが最優先され、家族の対応が後回しになってしまいがちですが、重症な患者さんの家族は、情報、保証、接近のニードが高く、情報提供が必要です。患者さんが今どのような検査や処置を行っているのか、最善を尽くしていること、あとどのくらいで面会ができるかなど伝えることで、家族のニードは満たされ、不安の軽減につながります。

 

家族の面会時は、医師からの説明が理解できたか確認するとともに、患者さんの状態についてわかりやすい言葉で説明し、家族から質問があれば答えます。この際、家族の反応や患者さんとの関係性で気がかりなことがあれば、入院先の病棟スタッフに引き継ぎます。

 

術後急性期の観察・アセスメント

術後は異常の早期発見と対応に努めます。CTで後出血脳浮腫の有無を確認しつつ、引き続きバイタルサインや意識レベル、瞳孔所見や麻痺の有無など神経学的所見に注意して、観察・アセスメントしましょう。

 

退院後の生活を見据えた支援

早期からリハビリテーションを開始します。

退院後の生活を見据え、患者さん・家族から生活背景を情報収集し、必要時はMSWの介入を依頼します。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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