脳血管内治療

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』より転載。
今回は脳血管内治療の流れや看護のポイントについて解説します。

 

清水貴仁
東海大学医学部付属八王子病院看護部

 

 

脳血管内治療とは?

脳血管内治療は、大腿動脈、上腕動脈、橈骨動脈など体表近くを通る血管を穿刺し、カテーテルを疾患のある部位まで挿入して行う治療です。

 

治療を行う前に、造影剤を注入して血管撮影を行い、状態を確認します。

 

治療には、薬剤(血栓を溶かすものや塞栓物質)・バルーン・ステント・コイルなどを用います。大きく分けて以下の3つの方法があります(表1)。

 

表1脳血管内治療

表1脳血管内治療

★1 PTA(percutaneous transluminal angioplasty)
★2 CAS(carotid artery stenting)
★3 TAE(transcatheter arterial embolization) 

 

memo:rt-PA(recombinant tissue-type plasminogen activator)

2005年より使用可能となった、静脈投与できる血栓溶解薬。劇的に改善することもある反面、合併症(脳出血等)を引き起こすリスクもある。治療の適応(発症4.5時間以内)であるかどうかの判断が重要となる。

 

memo:頸動脈ステント留置術

頸動脈洞反射による徐脈、低血圧に注意して観察を行う。必要に応じて、硫酸アトロピン、昇圧薬の準備を行う。

 

 

 

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看護師は何に注意する?

脳血管内治療前の看護のポイント

検査室の看護師とともに声に出して患者情報の確認を行います。

 

内服中止が必要な薬剤(糖尿病治療薬)の休薬も確認します(図1)。

 

意識レベル、バイタルサインや術後に穿刺部末梢の動脈拍動を確認するため、足背動脈を触知しておきます。

 

図1中止が必要な薬剤の例:糖尿病治療薬

図1中止が必要な薬剤の例:糖尿病治療薬

 

フキダシ:脳血管内治療は、各種デバイスの進歩や脳卒中の病態解明が進んだことにより、近年最も進歩した治療の1つです

 

脳血管内治療の流れと看護のポイントを図2に示します。

 

図2脳血管内治療の流れと看護のポイント

図2脳血管内治療の流れと看護のポイント

★1 脳室ドレナージの閉鎖・開放手順

 

memo:迷走神経反射

疼痛やストレスによって脳幹の血管中枢が刺激され、心拍数の低下、末梢血管の拡張が起こり、血圧が低下する反応。冷汗、悪心・嘔吐などの症状が生じ、失神にいたる。

 

脳血管内治療後の看護のポイント

脳血管内治療後は、合併症の徴候に注意して観察していきます(表2)。

 

表2脳血管内治療後の観察項目

表2脳血管内治療後の観察項目

 

特に、腰背部痛が持続し、低血圧頻脈を呈する場合は、後腹膜血腫を起こしている危険性があるため、すみやかに医師に報告します。

 

memo:後腹膜血腫

出血が後腹膜に貯留した状態。外観からは判断できないため、CTにより確認する。出血の持続によりショックをきたすこともあるため注意が必要。

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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