脳血管障害(脳卒中)

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』より転載。
今回は脳血管障害(脳卒中)の特徴や看護について解説します。

 

塙 隆茂
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
集中ケア認定看護師

 

 

脳血管障害(脳卒中)の全体像

脳血管障害(脳卒中)は、脳の血管が破れる「出血性(クモ膜下出血、脳出血)」と、脳の血管が詰まる「虚血性(脳梗塞)」があります(図1)。

 

図1脳血管障害の分類

図1脳血管障害の分類

 

日本人の4大死因の1つで、突然に発症し、再発を繰り返しやすい病態です。2018年には、「脳卒中・循環器病対策基本法」が制定されました。

 

 

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看護のポイント

脳血管障害は、ある日突然起こります。患者さんはもちろん、家族を含めた精神的ケアが大事です。

 

急性期・亜急性期・回復期・慢性期に適した看護を提供することも重要です。

 

 

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どんな疾患?

脳血管障害は、脳の血管障害が原因で、突然起こる疾患の総称です。

 

大きく分けると、①脳の血管が破れるか(出血性)、②脳の血管が詰まるか(虚血性)のどちらかです。

 

その他脳血管障害としては、動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながり、とぐろ状の血管の塊となっている脳動静脈奇形AVM;arteriovenous malformation;図2)や、ウィリス動脈輪が進行性に閉塞し、それを代償するために側副血行路を形成した血管が「もやもや」したように見える、もやもや病があります。

 

図2脳動静脈奇形(AVM)

図2脳動静脈奇形(AVM)

 

脳血管障害(脳卒中)の主なリスク因子は表1のとおりです。

 

表1脳血管障害(脳卒中)の主なリスク因子

表1脳血管障害(脳卒中)の主なリスク因子

 

 

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わが国における脳血管障害の状況

脳血管障害はわが国の死因の第4位ですが(図3;平成30年人口動態統計)、介護が必要となった主な原因では第2位です(平成28年国民生活基礎調査)。死亡数は減少していますが、患者数は逆に増加しています。

 

図3主な死因別にみた死亡率の年次推移(人口10万対)

図3主な死因別にみた死亡率の年次推移(人口10万対)

 

脳出血は、昭和35年(1960年)以降50年の間に、食生活の変化、降圧薬による高血圧症患者の減少に伴い、減少しました(図4)。

 

図4脳卒中死亡の内訳の変化

図 4脳卒中死亡の内訳の変化

 

脳梗塞では、高血圧症によるものは減少し、メタボリック症候群の蔓延に伴ってアテローム血栓性脳梗塞が、高齢化による心房細動の増加に伴って心原性脳塞栓症が増加しました。

 

フキダシ:昭和35年(1960年)からの内訳の変化をみると、脳出血が減少し、脳梗塞が増加しています

 

 

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脳血管障害はなぜ起こる?

脳血管障害は、高血圧、脂質異常症(動脈硬化)、糖尿病、喫煙など、いわゆる生活習慣病が大きく関係しています(表2)。

 

表2脳血管障害の病態・原因と好発年齢

表2脳血管障害の病態・原因と好発年齢

 

 

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患者さんはどんな状態?

脳血管障害には出血性虚血性があり、原疾患やその程度により、大きく状態が変わります。

 

症状は主に意識障害、片麻痺、構音障害失語、頭痛、嘔気・嘔吐があり、それらに合併する肺炎や消化管出血も見られます。

 

軽症であればリハビリテーションを通して日常生活へ復帰し、発症前とほぼ変わらない生活を送ることができます。

 

身体的障害が軽症でも、認知機能障害が残存するなど、入院前と比較して認知症の進行や、精神症状が発症する場合もあります。

 

後遺症がある患者さんは、急性期病院から回復期・慢性期病院へ転院する場合や、自宅からリハビリテーション施設へ通院し訓練を行う場合があります。

 

 

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看護師はどう対応し、何に注意する?

発症直後の急性期または術後では、循環管理神経学的初見の変化に注意が必要になります。

 

非感染性刺激による発熱に対しては、脳代謝の亢進予防のため、薬物療法やクーリングによる解熱療法を行います。ただし、クーリングによるシバリングは酸素消費量を増大させ、代謝を亢進させることで逆効果となるため注意しましょう。

 

memo:シバリング

骨格筋を付随意に収縮させ身震いをすることで熱を産生し、体温を保とうとする反応。

 

発症時の嘔吐、意識障害、嚥下障害により、慢性期に移行しても誤嚥性肺炎の発症リスクが高いため、急性期からの気道浄化、体位管理が重要です。

 

退院後は薬物療法、機能回復訓練が主になります。出血性、虚血性ともに再発のリスクを伴うため、症状の悪化や新たな神経症状の発症に注意し、認知機能評価や患者さん・家族の精神的ケア、薬物療法を考慮する必要があります。

 

リハビリテーション

意識障害の回復への援助

意識障害が遷延していても、常に回復への意識を持ち続けなければいけません。そのために、声をかける、好きな音楽を聞かせる、家族の声や会話を聞かせるなどの聴覚刺激や、好きなテレビや動画を見せる、光刺激などの視覚刺激、口腔清拭や氷片などによる口や舌への刺激、タッチングやマッサージによる知覚刺激などによって五感を刺激し、ADLの拡大に努めます。

 

関節可動域訓練

脳血管障害により片麻痺や意識障害が生じ床上生活が長期にわたると、股関節外転位や足関節尖足位になりがちです(図5)。車椅子に乗る、立位をとる、歩行へとつなげるためには、関節可動域訓練と良肢位保持が重要です。

 

図5尖足位

図5尖足位

 

言語機能の回復への援助

優位半球障害に伴う失語、劣位半球障害に伴う失行、失認があります。言語聴覚士や作業療法士と連携をとり計画的に訓練を進めます。

 

嚥下機能の回復への援助

嚥下は食べるという人間の本質的な欲求機能です。

 

経口摂取開始にあたっては、経口摂取可能な意識状態であるか、呼吸器合併症はないかなど評価をする必要があります。

 

嚥下機能の評価方法には、反復唾液嚥下テストRSST;repetitive saliva swallowing test;表3)、改訂水飲みテストMWST;modified water swallowing test;表4)があります。

 

表3反復唾液嚥下テスト(RSST)

表3反復唾液嚥下テスト(RSST)

 

表4改訂水飲みテスト(MWST)

表4改訂水飲みテスト(MWST)

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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