熱傷深度(Burn Depth;BD)|知っておきたい臨床で使う指標[16]

臨床現場で使用することの多い指標は、ナースなら知っておきたい知識の一つ。毎回一つの指標を取り上げ、その指標が使われる場面や使うことで分かること、またその使い方について解説します。

 

根本 学
埼玉医科大学国際医療センター 救命救急科診療部長

 

熱傷深度(Burn Depth;BD)

 

皆さんも、花火で遊んでいた時や料理をしていた時に火傷し、皮膚が赤くなってヒリヒリしたり、水ぶくれができたりした経験があるのではないでしょうか。そういった症状が見られるのは、熱によって皮膚に障害が生じた結果です。では、皮膚がヒリヒリしたり、水ぶくれができたりするのはなぜでしょうか。それは、熱の影響が皮膚のどの部分にまで及んだかによって異なってきます。
その「熱の影響が皮膚のどの部分まで及んでいるか」は、熱傷の重症度判断や治療に必要なことです。そして、それを表すのが「熱傷深度(Burn depth)」です。

 

〈目次〉

 


 

熱傷深度

 

熱傷深度_BD_Burn Depth_Ⅰ度熱傷_Ⅱ度熱傷_Ⅲ度熱傷

 

 

 

熱傷深度を主に使う場所と使用する診療科

熱傷深度を知ることで治療法の選択や治療期間、予後などを知ることができます。救急現場では見た目で、外来や救急処置室ではピンプリックテスト(後述)などを用いて判断するので、救急隊員や一般外科医、皮膚科医、救急専門医などに広く使われています。

 

熱傷深度で何がわかる?

皮膚は表皮と真皮および皮下組織で構成されています。表皮は角質、顆粒層、有棘層および基底層によって構成されています。表皮と真皮の境界には乳頭層があり、真皮は乳頭下層と網状層によって構成されています。そして、真皮の下に皮下脂肪があり、そのさらに下に筋層があります。

 

熱の影響が表皮の角質層に止まった場合を「Ⅰ度熱傷(First Degree Burn、Superficial Burn、Epidermal Burn)」、真皮層に及んだ場合を「Ⅱ度熱傷(Second-Degree Burn、Partial thickness Burns)」、真皮全層および皮下組織にまで達した場合を「Ⅲ度熱傷(Third Degree Burn、Full thickness Burn、Deep Burn)」といいます。
さらにⅡ度熱傷は、表皮に近い部分に止まる浅達性Ⅱ度熱傷(表在性Ⅱ度熱傷:Superficial Dermal Burn;SDB)と皮下組織に近い部分にまで熱の影響が及んでいる深達性Ⅱ度熱傷(深在性Ⅱ度熱傷:Deep Dermal Burn ;DDB)に分類されます。

 

それぞれの特徴ですが、Ⅰ度熱傷では皮膚は発赤し、疼痛や熱感があります。Ⅱ度熱傷では水疱が形成され、強い疼痛や灼熱感があります。Ⅲ度熱傷では皮膚は壊死し、痛みは感じなくなります。

 

臨床的に重要なのはⅡ度熱傷とⅢ度熱傷です。Ⅲ度熱傷は自然治癒は期待できず、熱傷により壊死した部分を切除し、植皮を行う必要があるため、Ⅱ度熱傷とⅢ度熱傷をしっかり鑑別しなければなりません。この判断は、皮膚の性状や痛みの有無などを参考に行います(表1)。Ⅱ度熱傷では皮膚に紅潮や水疱、びらんが見られます。Ⅲ度熱傷では皮膚は光沢を帯び、伸展性が失われます。

 

表1熱傷深度の補助的診断法

熱傷深度_ピンプリックテスト_抜毛法

 

memo熱傷深度の補助的診断法

ピンプリックテスト(pin prick test)・針刺法

清潔な細い注射針(22G)を用いて、熱傷部位を軽く突っつきます。表在性Ⅱ度熱傷では疼痛がありますが、深在性Ⅱ度熱傷やⅢ度熱傷では神経が熱によって障害されているため、痛みがありません。

 

抜毛法

熱傷部位の体毛を引っ張ることで判断します。Ⅲ度熱傷では熱の影響が毛嚢にまで達しているため、容易に毛が抜けます。

 

熱傷深度をどう使う?

上でも述べましたが、熱傷深度は、Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分類されています。熱傷深度は臨床では、「Ⅰ度熱傷」とか、「Ⅱ度およびⅢ度熱傷」と表現されますので、それぞれどの程度まで熱の影響が及んでいるのか、特徴的な所見は何があるのか、判断はどのようにして行うのか、治療はどのようにするのかを知っておく必要があります。

 

熱傷深度の算出方法を実際に使ってみよう

症例1

 

18歳の女性。海水浴から帰ってきて体中が火照っていたようだが、しばらくして全身の痛みと悪寒を自覚したため、家族の車で時間外外来を受診した。
意識は清明。呼吸脈拍に異常はない。問診したところ、朝から友人と浜辺で日光浴をしていたという。視診では水着の跡がくっきりと残っており、皮膚は真っ赤になっているが、水疱形成は見られない。痛みは強いが、冷たい水で冷やすと和らぐ。この患者の熱傷深度は?

 

答え:Ⅰ度

皮膚が紅潮しており、痛みを伴っているが、水疱形成はない。冷却すると痛みが和らぐので、紫外線によるⅠ度熱傷と判断できる。悪寒の原因は身体の火照りと考えられる。

 

→熱傷深度を確認

 

症例2

 

54歳の男性。カップラーメンを食べるため沸騰したお湯をカップに注いでいた際に電話が鳴り、慌てて電話に出ようとしてお湯を左手にかけてしまった。
左手背は紅潮しており、強い痛みを訴えている。水疱が破れた部分には赤いびらんが見られた。ピンプリップテストでは、すべての部位で疼痛が確認できた。この患者の熱傷深度は?

 

答え:表在性Ⅱ度

皮膚の紅潮、びらんおよび水疱形成が見られ、ピンプリップテストではすべての部位で疼痛が確認できたため、表在性Ⅱ度と判断できる。

 

→熱傷深度を確認

 

症例3

 

23歳の男性。バーベキューをしていて火が服に燃え移って受傷し、救急車で搬送されてきた。
顔面および右手から前腕にかけて熱傷が見られる。顔面は全体にヒリヒリとした痛みがあり、紅潮しているが水疱形成はない。右手背部は強い痛みがあり。水疱の一部は破れている。右前腕には非常に強い痛みがあり、水疱は破れてびらんがあり、一部は白く変色している。ピンプリップテストで手背部は疼痛を自覚するが、前腕の熱傷部位は疼痛を訴えず、白く変色している部分は光沢があり硬い。この患者の顔面、手背および前腕の熱傷深度は?

 

答え:顔面:Ⅰ度、手背:表在性Ⅱ度、前腕:深在性Ⅱ度とⅢ度

顔面はヒリヒリとした痛みと皮膚の紅潮があるだけなのでⅠ度。手背部は水疱形成があり、ピンプリップテストで疼痛を自覚するため表在性Ⅱ度。前腕部はびらん形成と白色光沢があり、ピンプリップテストで痛みを訴えないため、びらん部は深在性Ⅱ度、白色光沢部位は皮膚が硬く、疼痛の訴えも無いことからⅢ度と判断できる。

 

→熱傷深度を確認

 


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