在宅人工呼吸って、どんな人が対象?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。

 

今回は「在宅人工呼吸の適応基準?」に関するQ&Aです。

 

原口道子
東京都医学総合研究所難病ケア看護プロジェクト主任研究員

 

在宅人工呼吸って、どんな人が対象?

 

現在主流となっているNPPVでは呼吸器疾患が約半数、TPPVでは神経筋疾患が大多数を占めています。

 

〈目次〉

 

HMV(在宅人工呼吸療法)

HMVの適用基準について、木村は適応病態、前提条件を提唱している(表1

 

表1HMVの適応基準

 

適応病態 前提条件
  • 病状経過の安定が、入院中に試験外泊を含めて十分確認されていること
  • ベンチレーター依存があっても、FIO20.40以下で維持できる。肺胞低換気優位のⅡ型慢性呼吸不全であること
  • 何らかの気道確保が十分であること
  • バッグバルブシステムなどの用手人工呼吸でも補える状態であること
  • 感情、意思の明確な表明が可能なレベルであること
  • 患者本人と家族に、本療法の意義と方法に関する十分な理解と自発的意欲が確認できること
  • 用手人工呼吸、気道内分泌物除去などの技術を習得した複数の在宅介護者が確保されていること
  • 適切な電動式在宅用ベンチレーターが、メンテナンス体制を含めて確保されていること
  • 往診、近医との連携など通常の医療体制が維持でき、緊急時の応需体制が万全であること
  • 在宅療養者にかかわる地域の福祉資源が最大限活用されること

木村謙太郎在宅酸素療法.在宅人工呼吸療法導入背景と現状、実際.在宅呼吸療法事業ハンドブック2003,アズクルー,大阪,2002:25より引用

 

HMVの基礎疾患

在宅NPPVの基礎疾患は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)が最も多く、次いで神経筋疾患、肺結核後遺症となっている。

 

在宅TPPVの基礎疾患は、神経筋疾患が大半を占める。呼吸器疾患と異なり、神経筋疾患では球麻痺が起こることで上気道クリアランスが保てなくなるためNPPVが困難になってくる。

 

図1HMVの基礎疾患

 

HMVの対象疾患は、当初ALS(筋萎縮性側索硬化症)や筋ジストロフィーといった神経筋疾患が主体であったが、1994年の診療報酬改定により対象疾患の制限がなくなったことや、NPPVの普及によりCOPDや肺結核後遺症などの呼吸器疾患に広がっている。

 

睡眠時無呼吸症候群におけるCPAP(持続的気道陽圧)療法は、1998年に保険適用となった。

 

略語

 

  • COPD(chronic obstructive pulmonary desease):慢性閉塞性肺疾患
  • ALS(amyotrophic lateral sclerosis):筋萎縮性側索硬化症
  • CPAP(continuous positive airway pressure):持続的気道陽圧

[文献]

  • (1)石原英樹:在宅人工呼吸療法(HMV).呼吸ケア2009;7(7):97-98.
  • (2)石原英樹,坂谷光則,井上義一,他:在宅呼吸ケアの現状と課題−平成19年度全国アンケート調査結果−.労働科学研究費補助金難治性疾患克服事業呼吸不全に関する調査研究班平成19年度研究報告書2007:60-63.
  • (3)宍戸克子:在宅人工呼吸療法.呼吸ケア 2009;夏季増刊:247-256.
  • (4)木村謙太郎:在宅酸素療法.在宅人工呼吸療法導入背景と現状、実際.在宅呼吸療法事業ハンドブック2003,アズクルー,大阪,2002.
  • (5)中山優季:在宅人工呼吸ケア.道又元裕編,人工呼吸ケア「なぜ・何」大百科,照林社,東京,2005:457.
  • (6)中山優季:在宅人工呼吸療法の実際.道又元裕,小谷透,神津玲編,人工呼吸管理実践ガイド,照林社,東京,2009:292-302.
  • (7)原口道子:在宅での看護職員と介護職員等との連携のポイント.コミュニティケア2012;14(12):53-57.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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