HFOV(高頻度振動換気法)の特徴・適応は?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。

 

今回は「HFOV(高頻度振動換気法)の特徴・適応」に関するQ&Aです。

 

三浦規雅
東京都立小児総合医療センターPICU主任

 

HFOV(高頻度振動換気法)の特徴・適応は?

 

HFOVは、肺保護戦略に則った人工呼吸様式です。肺コンプライアンスの低下した病態に適応があります。

 

〈目次〉

 

HFOV(高頻度振動換気法)とは

HFOV(高頻度振動換気法)とは、解剖学的死腔よりも少ない一回換気量で、高頻度の振動により換気を行う人工呼吸様式である。

 

HFOVは、圧振幅が非常に小さいままに、高いMAP(平均気道内圧)を維持でき、近年提唱されている肺保護戦略におけるhigh PEEP(ハイピープ)、low tidal volume(ロ-タイダルボリューム)の概念と合致しているといえる(図1)。

 

図1HFOVの機器としくみ

 

HFOVの特徴

HFOVは、CMVと比べて、回路口元での圧振幅は大きいが、肺胞レベルでの圧振幅は非常に小さい。一方、MAPは一定に保つことができる(図2

 

図2気道各部におけるMAP

 

HFOVでは、酸素化(PaO2)と換気(PaCO2)を別々に調整できる。酸素化はFIO2とMAP、換気はstroke volume(ストロークボリューム)と振動数(Hz)により規定される。

 

HFOV導入時の初期設定を表1に示す。HFOV導入後は、随時血液ガスを測定しながら設定を調節する。

 

表1HFOV導入時の初期設定(国立成育医療研究センター)

 

FIO2 1.0
MAP CMV時のmPaw+5~7cmH2O
Stroke volume Amplitude(気道内振幅幅)70cmH2O 程度(腹壁から大腿部まで振動)になるように設定
振動数 新生児:15Hz、20kg未満:12Hz、20kg以上:10Hz
SI圧 MAP+10cmH2O

 

完全には理解されていないが、主に考えられているHFOVのガス交換の機序を図3に示す。

 

図3HFOVのガス交換の機序

 

斉藤修:HFOV.救急・集中治療 2010;22:360.より引用

 

HFOVの適応

HFOVの適応は、重症ARDS(急性呼吸窮迫症候群)が一般的だが、CMVで管理が困難な症例で広く用いられる。しかし、先天性気管狭窄などの閉塞性病変に対しては、振動が肺胞まで伝わらず、有効な換気が得られない恐れがある。

 

OIを用いたARDSに対する人工呼吸プロトコール図4に示す。

 

図4OIを用いたARDSに対する人工呼吸プロトコール(国立成育医療研究センターによる)

 

略語

 

  • HFOV(high frequency oscillatory ventilation):高頻度振動換気
  • MAP(mean airway pressure):平均気道内圧
  • CMV(conventional mechanical ventilation)
  • ARDS(acute respiratory distress syndrome):急性呼吸窮迫症候群
  • OI(oxygen index):MAP×FIO2/PaO2

[文献]

  • (1)斉藤修:HFOV.救急・集中治療 2010;22:360.
  • (2)宮坂勝之,中川聡:肺循環障害とNO.CLINICIAN 1996;456:64-70.
  • (3)中村知夫,高田正雄,宮坂勝之:一酸化窒素(NO)と小児肺高血圧症.小児科1995;36:997-1005.
  • (4)志馬信朗,橋本悟,問田千晶:小児ICUマニュアル改訂第6版,永井書店,大阪,2012:50/121-122.
  • (5)坂井裕一:小児ICUにおけるNO吸入療法.ICUとCCU1995;19:1037-1043.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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