呼吸不全に適した栄養組成や配分は?|人工呼吸管理中の栄養管理

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「呼吸不全に適した栄養組成や配分」に関するQ&Aです。

 

清水孝宏
那覇市立病院看護部看護師長

 

呼吸不全に適した栄養組成や配分は?

 

水分量を抑えるとともに、二酸化炭素の産生を少なくするような配分や、炎症を抑制し免疫を賦活させる栄養組成が適している可能性があります。

 

〈目次〉

 

水分管理が最も重要

呼吸不全は、肺の酸素化能と二酸化炭素排出能の低下が問題となる。

 

肺胞実質と肺胞と肺胞の隙間である間質との間に水分が貯留し、肺胞の中にまで水分が浸み出す状態を「肺水腫」という。

 

肺水腫には、心不全による肺毛細血管の静水圧の上昇によるものと、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)のように炎症による血管透過性亢進によるものとがある。

 

呼吸不全はいずれによっても起こるが、共通する問題は水分の貯留である。水分の貯留をいかに回避するかが管理上きわめて重要であり、時には胸水を除去することや、利尿薬を用いる場合もある。

 

栄養補給の際は、経腸・経静脈、いずれも水分を入れることになる。呼吸不全患者には、この水分量をできるだけ少なくする栄養投与計画が重要となる。

 

経腸栄養ならば1.0kcal/mLから2.0kcal/mLの製剤がある。同じ量でも倍のエネルギー補給が可能ならば2.0kcal/mLを選択するメリットがある。

 

また、経腸栄養剤の量が多ければそれだけ腹部膨満となりうる可能性もある。腹部膨満は横隔膜を上方へ押し上げ、横隔膜の呼吸運動の障害をきたす原因となる。このような水分管理が呼吸不全の栄養管理の基本となる。

 

抗炎症効果が期待される製剤

水分管理以外の呼吸不全に対する栄養組成については、抗炎症作用の期待できるω(オメガ)3系の脂肪を用いた製剤(オキシーパTM)がある。死亡率の低下には至らないが、人工呼吸器装着期間やICU滞在日数の短縮が期待できる。

 

略語

 

  • ARDS(acute respiratory distress syndrome):急性呼吸窮迫症候群

[文献]

  • (1)飯干泰彦,岡田正:腸粘膜萎縮の病態とその対策静脈栄養時にみられる腸粘膜の形態学的変化.JJPN1995;17:459-462.
  • (2)氏家良人,海塚安郎,佐藤格夫,他:急性呼吸不全による人工呼吸患者の栄養管理ガイドライン2011年版.人工呼吸 2012;29:75-120.
  • (3)McClave SA, Martindale RG, Vanek VW, et al. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM)and AmericanSociety for Parenteral and Enteral Nutrition(ASPEN). JPEN 2009; 33: 277- 316.
  • (4)Clinical Evaluation Research Unit:Practice Guideline 2013, http://www.criticalcarenutrition.com(2014年11月18日閲覧).
  • (5)Singer P, Berger MM, van den Berghe G, et al. ESPEN Guidelines on Parenteral Nutrition: intensive care. Clin Nutr 2009:28:387-400.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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