酸素吸入を行なうとき、加湿器(コルベン)に水を入れるのはなぜ?

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は酸素吸入に関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

酸素吸入を行なうとき、加湿器(コルベン)に水を入れるのはなぜ?

 

酸素に十分な湿気をもたせるためです。

 

〈目次〉

 

加湿器に水を入れるのは

通常、咽頭部を通っている間に空気は十分に加温・加湿され、気管内では37℃、100%となります。

 

しかし、酸素ボンベあるいは中央配管から供給される酸素には、まったく湿度はありません。そのために、なんらかの形で湿度を与えないと、気道粘膜が乾燥してしまいます。乾燥することで、粘膜を刺激して充血したり、繊毛運動の低下が起きたり、分泌物が粘稠性となり気道内に停滞しやすくなります。その結果として、無気肺気管支炎肺炎などを併発することになります。

 

加湿器使用上の注意点は

日常よく使われている加湿器に酸素ボンベあるいは中央配管から供給される酸素を通すと、湿度は30~50%にまで加湿するといわれています。逆に、加湿が過剰になると、肺に水が貯留し、肺水腫を起こすことがありますので、注意が必要です。

 

また、種々の加温・加湿器がありますが、最近はインスピロン酸素吸入用ヒーターネブライザーがよく用いられます。これはヒーターで水を温め、発生する水蒸気を空気または酸素に送り込み、吸入させるものです。ここで注意しなければならないことは、加温・加湿器は細菌の繁殖に適温・適湿であるため、呼吸器系感染の原因となることです。

 

したがって、消毒には十分気をつけ、水は少なくとも8時間ごとに交換し、また、チューブ内に水が貯留しやすいため、ときどきチューブをはずして水を切る必要があります。

 

ナーシングポイント

  • 酸素流量3L/分以下では、加湿は必要ないといわれています。
  • 酸素ボンベを使用する場合は、残量から使用可能時間を算出し、活動時間と照らし合わせます。
  • 加湿器(コルベン)に滅菌水を水位ラインまで入れて加湿します。感染予防の目的で閉鎖式滅菌水入りの専用ボトル(ディスポーザブル加湿器)も使用されてきています(図1)。

図1酸素流量計とその取り扱い

酸素流量計とその取り扱い

 

  • フロートの合わせ方は酸素流量計の種類によって異なります。どの種類でもフロートは目の高さに合わせて読みます。・セッティング後は、管を折り曲げて手を離したときのプシュッという音や酸素チューブの先端に手にかざして酸素の流出を確認します。
  • 酸素ボンベから酸素を供給する際は、残量から使用可能時間を把握しておきましょう(表1)。

表1酸素ボンベの酸素残量早見表 内容積3.4L(ガス容量500L)の場合(分)

酸素ボンベの酸素残量早見表

 

■酸素ボンベの使用可能時間の計算方法

 

圧力表示がMPaの場合

ボンベ内容積:3.4L、圧力表示:10MPa、指示流量:3L/分の場合
使用可能量(L)=現在の圧力計の値(MPa)×10×0.8(安全係数)
使用可能量:3.4(L)×10×10×0.8(安全係数)=272(L)
使用可能時間:272÷3(L/分)≒90分

 

圧力表示がkgf/cm2の場合

ボンベ内容積:3.4L、圧力表示:100kgf/cm2、指示流量:3L/分の場合
使用可能量(L)=現在の圧力計の値(MPa)×10×0.8(安全係数)
使用可能量:3.4(L)×100×0.8(安全係数)=272(L)
使用可能時間:272÷3(L/分)≒90分

 

酸素マスク使用にともなう皮膚障害

酸素マスクや鼻カニューレでは、長期の装着により皮膚障害が起こることがあります。これを予防するために、①マスクやカニューレの位置をずらす、②ハイドロコロイドなどのドレッシング材を貼る(図2)、③ガーゼなどを挟み、皮膚との直接の接触を防ぐ、④ゴムひもを他の材質に変える、などを行い、皮膚障害を予防しましょう。また、常に皮膚の状態を観察するようにしましょう。

 

図2皮膚障害の予防例

皮膚障害の予防例

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

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