感覚の種類|感覚

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、感覚の種類について解説します。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

〈目次〉

 

Summary

  • 感覚は生体の恒常性を保つために必要な機能である。
  • 感覚は、特殊感覚、体性感覚および内臓感覚に大別される。
  • 特殊感覚には視覚、聴覚、平衡覚、嗅覚および味覚があり、受容器がそれぞれの特定部位に限局している。
  • 体性感覚には皮膚感覚と筋感覚があり、受容器が体全体に分布している。
  • 内臓感覚には内臓痛覚と臓器感覚があり、受容器が内臓に分布している。
  • 受容器からまでの神経伝達の経路を感覚伝導路とよぶ。
  • 感覚伝導路には、3つの求心性ニューロンからなる、視床を経由するという共通した特徴がある。

 

感覚とは

感覚は、生体内の変化あるいは生体に対する刺激に反応して生体の恒常性を保つために必要な機能である。その変化や刺激を感知するのが感覚受容器である。

 

刺激や変化を感知するのは受容器であるが、感じるのは脳(大脳皮質)にある感覚中枢 sensory center である。感覚受容器から脳までの神経伝達の経路を感覚伝導路 sensory tract という。感覚伝導路には、感覚の種類によらず以下の共通性がある。

 

  1. 3つの求心性ニューロンから構成される。
  2. 視床を経由する。

 

恒常性

生体の血液ガス、体温、血圧、体液量、電解質濃度などが一定に保たれることを恒常性ホメオスタシス homeostasis)という。ホメオスタシスという言葉は、キャノン(Walter Bradford Cannon 、1871~1945)の著書『からだの知恵(Wisdom of the Body)』(舘 鄰、舘 澄江訳、講談社学術文庫)でよく知られている。この著書のなかでキャノンは、1923年のハーヴェイ(William Harvey、1578~1657)追悼記念講演会で聴いたスターリング(Ernest Henry Starling、1866~1927)の「からだの知恵」と題した講演に感銘し、著書の題名にしたと書いている。

 

このホメオスタシスを維持するために必要な機能が感覚である。生体内の変化あるいは生体に迫る危険を感知して、ホメオスタシスを維持するように反応しないと生命を維持できない。

 

感覚には、表1のような種類がある。

 

表1感覚の分類

感覚の分類

 

感覚神経

神経線維をガッサー Gasser の分類およびロイド Lloyd の分類で整理すると表2になる。

 

表2神経線維の分類

 

このなかで感覚受容器で感知した刺激を感覚中枢に伝えるのが感覚神経で、ロイドの分類ではローマ数字で標記される。

 

五感

視覚、聴覚、嗅覚、味覚および触覚の5つの感覚を五感 five senses という。触覚以外は特殊感覚である。特殊感覚というが、これらの感覚は最も身近な感覚であり、この特殊という言葉は、それらの感覚受容器が特殊な部位に局在しているという意味である。

 

NursingEye

視床出血高血圧で起こりやすい脳出血である。視床が感覚伝導路の中継であるため、視床出血の結果、感覚障害が起こる。感覚情報は主として反対側の大脳皮質に伝わるので、対側半身の感覚障害が起こる。

 

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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