アルコール依存症の患者さんに不穏時指示のイソゾール®を投与後、観察に戻ったとき呼吸停止していた!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、アルコール依存症の患者さんに不穏時指示のイソゾールⓇを投与後、観察に戻ったとき呼吸停止していた場合について解説します。
ヴェクソンインターナショナル株式会社 看護企画部
クリティカルケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
不穏状態を鎮静薬や麻酔薬で改善させるには、気管挿管や人工呼吸が必要になるほどの呼吸停止や呼吸抑制を覚悟しなければなりません。
呼吸停止や呼吸抑制が起こり得る薬剤であることを認識し、これらの薬剤を使用している最中は患者さんから離れないのが鉄則です。
起こった状況
症例
60歳代、男性、Aさん。
肝硬変、アルコール依存症が既往にあり、今回、上部消化管出血で入院となりました。
内視鏡を行い、消化管出血は止血され、一般病棟に入院となりました。
アルコール依存症のため入院前まで飲酒を繰り返しており、アルコール離脱せん妄が起こる可能性があり、不穏時の指示としてイソゾールⓇ注射用0.5g1バイアルを生理食塩液50mLで溶解したものを、患者さんが入眠するまで繰り返し点滴投与を行う指示が出ていました。
深夜2時を過ぎた頃からAさんは次第に落ち着きがなくなり、ベッドから離れようとするため、体幹を抑制しました。
しかしさらに落ち着きがなくなり、大声を出すなど不穏状態となったため、心電図モニタを装着した後に不穏時の指示を実施しました。
それでも入眠せず、2回目の不穏時の指示を行い、看護師は患者さんの病室を離れました。
15分後に患者さんのもとを訪れると呼吸が停止していました。
どうしてそうなった?
イソゾールⓇは超短時間作用型のバルビツール酸系薬剤で、全身麻酔やその導入に用いられます。
全身麻酔では最初に50~100mgを注入して麻酔の効果を観察しながら追加で投与を行います。
重大な副作用として、呼吸停止、呼吸抑制、舌根沈下があります。
そのため、気道の確保や酸素吸入ができる環境で、かつ十分な呼吸と循環をモニタリングできる体勢での投与が必要な薬剤です。
この症例では、心電図モニタを装着していますが、イソゾールⓇを投与している最中に患者さんから15分間離れています。
全身麻酔薬であり、重大な副作用がある薬剤を投与している最中は、気道の確保や人工呼吸器を装着しているなどの条件下でなければ原則として患者さんから離れてはいけません。
どう切り抜ける?
アルコール離脱せん妄で不穏状態にある患者さんに対して鎮静薬や全身麻酔剤で不穏状態を改善させるためには、患者さんの意識がなくなるまで鎮静しなければなりません。
今回はイソゾールⓇを使用していますが、ミダゾラムやプロポフォールを使用しても、同様に呼吸停止や呼吸抑制は起こります。
不穏状態であれば、他の患者さんに迷惑がかからないように個室への移動や、職員の安全を確保できるように一時的な身体抑制が必要になるときもあります。
一般病棟の夜勤中であり、看護師の人員配置が少ないことも考えられます。
そのため1人の患者さんを常時観察することには限界があります。
患者さんを常時観察できる環境を作れないのであれば、不穏状態を見守りながら観察することも一手段と考えます。
常時観察できるのであれば、呼吸と循環をモニタリングできる体勢で麻酔薬や鎮静薬を使用することを検討します。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



