下肢の静脈に栄養輸液を投与したら、ひどい静脈炎になってしまった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんの下肢の静脈に栄養輸液を投与したら、ひどい静脈炎になってしまった場合について解説します。

松井 貴生

社会医療法人大雄会 総合大雄会病院 看護部
集中ケア認定看護師

 

 

患者の下肢の静脈に栄養輸液を投与したら、ひどい静脈炎になってしまい、その様子に焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

きめ細やかな観察が静脈炎の予防と早期発見につながります。
静脈炎発生時は対応方法が薬剤によって異なります。
医療安全マニュアルなどに血管外漏出、静脈炎発生時の対応が記載されていますので、自施設での対応を確認しておきましょう。

 

POINT
  • 上肢の末梢静脈ルートの確保が難しい場合や計画外抜去予防のため、下肢の静脈を選択することが考慮されます。
    下肢での静脈路確保は、上肢の末梢静脈ルートの確保が難しい場合や、計画外抜去予防の際に考慮されます。
    輸液の特徴を知り、適切な血管および留置針の選択と観察が必要となります。

 

 

起こった状況

症例

80歳代、男性。大腸がんの手術歴があり、癒着性イレウスにて入院中。
安静度は病棟内歩行可能。イレウス管が留置され、絶食となっています。
イレウス管の排液も多く、経口摂取がしばらくできないため医師よりビーフリード輸液開始の指示がありました。
上肢には静脈留置針が留置できる血管がなく、下肢の静脈に20Gでルートキープを行いました。
翌日、リハビリテーションで病棟内を歩行後、患者さんから「点滴のところが痛む」と訴えがありました。
確認したところ静脈に沿って発赤を認めました。

 

 

どうしてそうなった?

ビーフリード製剤は、メイラード反応を防止するため酸性で滴定酸度が高く、また浸透圧比も血漿と比較して約3程度です。
加えて上肢と比較して血管径が細い下肢の末梢静脈に静脈路が留置されていた点やリハビリテーションでの歩行が静脈炎の原因と考えられます。

 

 

どう切り抜ける?

1 静脈炎の原因を知る

静脈炎は原因によって3つに分類されます(図1)。

 

図1静脈炎の3つの要因

静脈炎の3つの要因をあらわす図

 

今回の症例では化学的・機械的要因によって生じた可能性が高いと考えられます。

 

化学的要因の1つに「pH」があります。血液のpHはおよそ7.40を維持するよう調整されています。
血液中に強い酸性、またはアルカリ性の薬剤が投与されることで血管内膜の損傷が起きやすくなります。


次に、「浸透圧」です。
血漿の浸透圧は約280mOsm/Lであり、一般に末梢静脈から投与できる浸透圧比は3以下(900mOsm/L以下)とされています。
高い浸透圧比の薬剤を投与することで血管内膜が損傷し、静脈炎を生じます。


そして、「滴定酸度」です。
滴定酸度が高い薬剤は血液で希釈されても血液のpHに戻りにくいため、血管障害性が強いといえます。
特に末梢静脈栄養製剤はアルカリ性が強いほどメイラード反応(褐色反応:アミノ酸とブドウ糖を混合すると時間経過とともに褐色に変化する反応)が進行しやすいため、pHを低くする必要があり、滴定酸度も高くなるという特徴があります。


機械的要因については、穿刺部を動かすことで留置針が血管内膜を損傷し、静脈炎が生じます。
血管に対して留置針が大きければ、それだけ接触する機会が増えるため、なるべく太い血管に細い留置針を留置し、固定を確実に行うことでリスクを軽減できます。
一般的に穿刺を避けたほうがよい部位(表1)について理解しておきましょう。

 

表1穿刺を避けたほうがよいとされる部位

穿刺を避けたほうがよいとされる部位をあらわした表

 

2 投与中の観察

投与中はこまめな観察が必要となりますが、リスク因子を踏まえて、観察する頻度を考えます。
「十分な血管を選択できなかった」「留置部位を動かす可能性がある」「痛みを訴えることができない」などの背景がある場合は、観察の頻度を増やすなどして異常の早期発見を行います。

 

3 静脈炎発生時の対応

静脈炎と類似したものとして「血管外漏出」があり、鑑別が重要です。血管外漏出の特徴としては、症状が静脈に沿っていない、滴下速度の低下、血液逆流の消失などがあります。
血管外漏出が疑われる場合には直ちに薬剤の注入を止め、マニュアルなどに沿って適切に対応する必要があります。
血管痛は温罨法を行うことで血管が拡張し、血管内皮と薬液の接触を低減することができます。


静脈炎の場合は直ちに薬剤の注入を止め、医師に報告します。
患部の冷却をすることで症状を軽減できる可能性がありますが、薬剤によって対処方法が異なる場合があるため、確認が必要です。
また、時間経過とともに皮膚障害が生じる可能性があるため、自施設では発生時、発生後1時間、発生後2時間、各勤務帯1回に経時的に観察しています。
可能であれば写真を撮影することで客観的な評価が可能となります。
症状の悪化や改善が見られない場合は、専門科(皮膚科、形成外科など)にコンサルトが必要になります。

 

 

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引用文献 閉じる

1) 飯野京子,森文子編:安全・確実・安楽な がん化学療法ナーシングマニュアル.医学書院,東京, 2009:115-117.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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