高カロリー輸液の側管より、抗生剤のゾビラックスをつなげ投与した。点滴ライン内で結晶ができてしまった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、高カロリー輸液の側管より、抗菌薬ゾビラックスをつなげ投与したら、点滴ライン内で結晶ができてしまった場合について解説します。

山口 貴子

日本医科大学武蔵小杉病院看護部
クリティカルケア認定看護師

 

 

高カロリー輸液の側管より、患者に抗菌薬ゾビラックスをつなげ投与したら、点滴ライン内で結晶ができてしまい焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

薬剤に対する知識を持って、危険に気がつく感性を磨くことが重要です。
また、薬剤に関する知識豊富な薬剤師の協力を得て、安全なシステムを作ることで、配合変化のリスクを減らすことができます。

 

POINT
  • 臨床で最も多い配合変化の原因は、pHの移動に伴う化学的な配合変化です。
    pHに依存して配合変化を生じやすい薬剤は、酸性や塩基性の強い注射剤です。
    ゾビラックスは強アルカリ性製剤で、高カロリー輸液製剤との同一ラインでの投与は避ける必要があります。

 

 

起こった状況

症例

肺がんに対して化学療法を行っている患者Aさん。
入院中に帯状疱疹を合併し抗ウイルス化学療法剤ゾビラックスの点滴静脈注射を行うことになりました。
Aさんは中心静脈カテーテルダブルルーメンよりニカルジピン塩酸塩が持続投与されていたため、高カロリー輸液(ハイカリック1号液)が投与されているもう一方の点滴ラインの側管からゾビラックスを投与しました。
開始直後、ゾビラックスを投与したライン内に白濁・結晶を認め(図1)、看護師は戸惑っています。

 

図1混濁した中心静脈カテーテル

混濁した中心静脈カテーテルを示した写真

 

 

どうしてそうなった?

これは、ハイカリック1号液とゾビラックスが同一ルートから投与されたことにより配合変化が起こった状態です。

 

配合変化の要因は大きく分けると「物理的要因」と「化学的要因」に分類されます。
物理的要因は輸液ラインなど機器への吸着であり、化学的要因は、薬剤どうしのpHの変化による配合変化や光などによる分解です。
この症例の配合変化の原因は、pHの移動に伴う化学的な配合変化であり、臨床でこれが最も多いと言われています。

 

pHに依存して配合変化を生じやすい薬剤は、酸性や塩基性の強い注射剤です。
ゾビラックスは、pH10.4の強アルカリ性製剤です。
それに対して、高カロリー輸液製剤のpHは酸性に調整されているため、同一ラインでの投与は避けなくてはなりません。

 

 

どう切り抜ける?

配合変化が生じると、力価が低下して薬剤の期待した効果が得られないだけでなく、カテーテルの閉塞や、結晶など不溶物が血管内に流入することで患者さんの健康被害につながる可能性もあります。
この症例のような白濁・結晶を認めた場合は、直ちに投与を中止し、中心静脈カテーテル内の白濁・結晶は吸引しましょう。

 

もう一方のラインから投与されていたニカルジピン塩酸塩もpH3.0~4.5と安定範囲が狭いため、配合変化を起こしやすい代表的な薬剤です。
また、薬剤がフラッシュされることで循環動態に変化を来すため、ニカルジピン塩酸塩投与ラインの側管からゾビラックスを投与することもできません。
この場合は、高カロリー輸液を一時的に止め、ゾビラックスを単独で投与する、また、前後に生食でフラッシュしライン内での薬剤の混合を防ぐなどの対応が必要です。

 

しかし、まずは配合禁忌であることに気がつかなくては対応もできません。
そのため、以下の対策が重要です。

 

1 気づく:薬剤投与前にいったん立ち止まる

薬剤を投与する前に「本当にこれで大丈夫か?」といったん立ち止まることが大切です。

 

2 知識を持つ:配合変化を起こす代表的な薬剤の組み合わせや薬剤の特徴を把握する

配合変化を起こす薬剤の組み合わせの数は膨大であり、すべて把握するのは困難です。
しかし、配合変化を起こしやすい薬剤や薬剤の特徴を知ることは予防への第一歩につながります。
そのため、配合変化を起こしやすい注射剤は知っておくとよいでしょう(表1)。

 

表1pHの変化による配合変化を起こしやすいアルカリ性注射剤と酸性注射剤(一部抜粋)

pHの変化による配合変化を起こしやすいアルカリ性注射剤と酸性注射剤(一部抜粋)を表した表

※各注射剤の添付文書より

 

3 チーム医療で安全なシステムをつくる

薬剤師との連携、チーム医療により薬物療法を行う患者さんに安全な医療を提供することができます。

 

1)システムによる情報提供や注意喚起

当院では、配合変化回避のために、配合変化の多い薬剤や溶解に注意が必要な薬剤では、「単独投与」や「前後生食フラッシュ」を行うようオーダリングシステムで自動的に印字され、情報提供されるシステムを活用しています(図2)。

 

図2オーダリングシステムによる注意喚起

オーダリングシステムによる注意喚起を示した図

配合変化の多い薬剤や溶解に注意が必要な薬剤では、注射箋と点滴ラベルに「メイン混注不可・前後フラッシュ」や「単独投与」「〇〇での溶解禁止」等、自動的に印字され情報提供される。
また、PVC製の点滴ルートで残存率の低下する薬剤では「PVCフリー」の点滴ルートを使用するよう注意喚起されている。

 

2)配合変化表の作成

集中治療室での管理など濃度の高い複数の注射剤を同時投与する場合、ルート管理はより複雑となります。
当院では薬剤部に配合変化早見表の作成を依頼し、ルート管理に活用しています。
診療科や部署によって頻用する薬剤での配合変化表をあらかじめ作成しておくと役立ちます。

 

 

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参考文献 閉じる

1) 名徳倫明:点滴ラインにおける配合変化.薬局 2019;70(9):1734-1742.

2) 石井伊都子:注射薬調剤監査マニュアル2023.エルゼビア・ジャパン,東京,2023.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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