2018/05/02 のクイズ

以下の小児患者をトリアージした際に、優先順位が最も高いと思われる患児はどれでしょうか?
  1. 1. 3歳男児、発熱を主訴に来院。体温38.2度、呼吸数45回、呼吸音正常、脈拍数90回、脈拍微弱、CRT遅延、血圧70/40、意識レベルGCS3-5-6、下痢あり、四肢やや冷たい。
  2. 2. 13歳女児、嘔吐を主訴に来院。体温38.5度、呼吸数36回、呼吸音正常、脈拍数60回、脈拍微弱、CRT遅延、血圧50/32、意識レベルGCS3-5-6、嘔吐あり、四肢やや青白く冷たい
  3. 3. 4歳女児、鼻出血、鼻汁を主訴に来院。体温36.7度、呼吸数24回、呼吸音正常、脈拍数82回、CRT1秒、血圧100/75、意識レベル清明、一週間前に発熱、鼻汁が多くあったが症状は次第に軽減。本日早朝より鼻出血が2~3回あったため、来院した。鼻出血はすぐに止血し、現在止まっている。
  4. 4. 2カ月男児。発熱を主訴に来院。体温38.5度、呼吸数40回、呼吸音正常、脈拍数150回、CRT1秒、玩具を見せると笑う。ミルクは飲んでいる。

挑戦者4037人 正解率85%

1. 3歳男児、発熱を主訴に来院。体温38.2度、呼吸数45回、呼吸音正常、脈拍数90回、脈拍微弱、CRT遅延、血圧70/40、意識レベルGCS3-5-6、下痢あり、四肢やや冷たい。
不正解

この症例の場合、現段階において代償性ショックの段階と考えます。呼吸数、体温は逸脱状況があると考えられますが、血圧は維持されています。収縮期血圧が正常範囲内にあるものの、組織灌流が不十分な場合は代償性ショックの状態であると考えます。この段階での代償性ショックの場合、重要臓器への酸素・栄養供給が損なわれていても血圧の維持は可能であると言われています。しかし、小児の場合、代償される期間が短く、状態の悪化は急激であり、代償性ショックから低血圧性ショックに悪化する恐れがあり、治療介入が必要です。末梢循環状態、意識レベルの変化、バイタルサインなど注意観察が必要です。

2. 13歳女児、嘔吐を主訴に来院。体温38.5度、呼吸数36回、呼吸音正常、脈拍数60回、脈拍微弱、CRT遅延、血圧50/32、意識レベルGCS3-5-6、嘔吐あり、四肢やや青白く冷たい
正解

13歳という年齢を考えるとこの血圧値は、低血圧の状況であり、呼吸数36回、脈拍数60回、脈拍微弱、CRT遅延においても逸脱の状況であり、低血圧性ショックの段階であるという判断が必要です。収縮期圧と組織灌流を維持しようとする生理学的な機構が効果的に機能しなくなり、低血圧となると言われています。低血圧はショック期の晩期に認める所見であるとも言われ、ショックの進行の予測は難しく、低血圧性ショックから心機能不全、さらに心停止へ進行し、その過程は数分と言われています。ショックを早期に認識し、迅速な治療介入を行うことが不可欠です。

3. 4歳女児、鼻出血、鼻汁を主訴に来院。体温36.7度、呼吸数24回、呼吸音正常、脈拍数82回、CRT1秒、血圧100/75、意識レベル清明、一週間前に発熱、鼻汁が多くあったが症状は次第に軽減。本日早朝より鼻出血が2~3回あったため、来院した。鼻出血はすぐに止血し、現在止まっている。
不正解

バイタルサインなど特に逸脱のない状況、鼻出血は止血できており、緊急を要する状況ではありません。鼻出血の状況を確認しながら、バイタルサインの再評価行いましょう。もし鼻出血が止血できていない場合は、保護者、もしくは付添者に圧迫止血の方法を指導し、実施してもらいます。止血が容易でない場合や鼻出血を繰り返す場合などは内科的疾患の判断が必要とまります。内科的疾患の判断のため、鼻出血以外に内出血斑などがないかの確認も必要となります。この症例の場合、止血も容易であるということ、鼻汁が多くあったことなどを関連させ、手などで鼻などを触ることにより、粘膜が傷ついている可能性もあり、緊急性は高くないと判断できます。

4. 2カ月男児。発熱を主訴に来院。体温38.5度、呼吸数40回、呼吸音正常、脈拍数150回、CRT1秒、玩具を見せると笑う。ミルクは飲んでいる。
不正解

3カ月までの乳児は母親の免疫が残っているので発熱することがほとんどありません。この患児の場合も、3カ月の乳児ということもあり、トリアージレベルは上がるものの、玩具を見せると笑う(周囲に対して何らかの反応を見せる)ということもあり、意識レベルに問題ないと評価できます。また、体温は38.5度とやや高めであるものの、体温以外のバイタルサインには異常がないため、衣服の調節や環境面などに注目しましょう。衣服調整してもすぐに解熱はしませんが、変化があれば看護師に伝えるよう保護者に説明しましょう。なお、水分摂取状況や(摂取量や飲み具合)、尿量(オムツの交換回数や量)について確認をしておく必要があります。先に説明した通り、3カ月までの乳児の発熱は殆どありませんが、3カ月未満の乳児の発熱の場合は、重症細菌感染症の疑いがあるため、別室で待機してもらいます。状態悪化の可能性を否定できないため、再評価を繰り返す必要があります。飲んでもすぐ吐く、尿量が少ないなどの場合、更なる疾患の検索が必要となるため自宅での様子を確認することも大切です。

引用参考文献など

1) 池上敬一ほか編著.日本医療教授システム学会監.患者急変対応コースfor Nursesガイドブック,中山書店,2008,48p.
2)西田志穗.小児アセスメントトライアングル.小児救急領域のトリアージに用いる看護技術.ナーシング・トゥディ.23(14).2008,6.
3)American Heart Association.ショックの認識.PALSプロバイダーマニュアル AHAガイドライン2010準拠.2013,シナジー,69-83.

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