てきぱきナースは選べない|マンガ・おっとりナースとてきぱきナース【5】

患者さんに母親を重ねるナースのふたり。

患者さんの病室を出たあと、あさひと塩谷さんが話しています。「なんか…山田さんってうちの母親に似てる気がします」朝日の言葉を聞いて、塩谷さんはドキッとしました。

「心配性っていうか…娘さんにあれこれ言ってるのを見てると、あー似てるなーって。うちも母親があーしろこーしろって心配して、つらかったら仕事やめてもいいのよとか、いつまでも子供扱いで…」塩谷さんはあさひと考えていることが違うとわかり、黙って聞いています。

「私小さい頃から看護師になりたくてせっかくそれがかなったのに…」自分のことを話したあさひは焦って「あっ…ていうかあれですね。私しゃべりすぎですよね…」と言いました。

「しかも患者さんのことこんな風に…」と反省するあさひに、塩谷さんは「大丈夫だよ誰にも言わないし」と笑顔で言いますが、心の中で(この子は自分が幸せだってこと知らないんだろうな)と思いました。

「そういえば、塩谷さんっていつから看護師になりたかったんですか?」突然のあさひからの質問に塩谷さんは「え」と驚き、「いや~別にいつからとか…なりたかったわけではないし…」と濁しながら答えました。

「なりたかったわけではないんですか?」あさひの問いに塩谷さんは「うーんとね」(やめて…そんな済んだ瞳で見ないで…)と焦りました。そして「選択肢がなかったの、あなたみたいには」と言ってしまいました。

言ってから、(あ…しまった…今のはイヤミっぽかった。あなたみたいにはいらなかったよね。職場で感情のやり取りをしないとか言ってたくせに何やってんだろ私)と反省しました。

あさひはきょとんとした顔で、「選択肢はなかったんですか?」と聞きました。塩谷さんは「あ~うんまぁ…。この話はまた今度にしよう」と言って仕事に戻りました。

塩谷さんは、「選択肢はなかったんですか」というあさひの問いに、少しイラっとしましたが、ぐさりともきてしまいました。

(私には本当に選択肢がなかったのかな)と仕事中も自問自答を繰り返す塩谷さん。

 

【著者プロフィール】

やまもとりえ@yamamotorie

漫画家、イラストレーター。

著書に『わたしが誰だかわかりましたか? 』、『わたしは家族がわからない』、『ねこでよければ』1~4巻、『Aさんの場合。』など。

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