誰だって…|〈マンガ〉モンスター患者~みんなが困り果てた金田さんのこと~【最終回】

患者さんと関われる短い時間。その中で金田さんが教えてくれたことは…。

(▶これまでのお話

 

マンガ・モンスター患者~みんなが困り果てた金田さんのこと~

最終回 誰だって…

思いもよらないこと、それは金田さんが退してくれ所されるということでした。「リハビリのある所をすすめたら、渋々だけど納得たの。」「最後まで渋ってたよねー。ここが気に入っていたみたい。」と話をするケアマネさんと同僚の会話を聞きながら、『あまりにあっけない』と突然の出来事に驚き、私は立ち尽くしてしまいました。

 

退所になった経緯を聞きながら、「でも、次の施設でも同じトラブルを抱えそうな気がします…」と心配すると、ケアマネさんは、「初めて金田さんにお会いしたのは、別の施設だったんだけど、ぽつんとお一人でいらしたの。たった一人で、スタッフが声をかけることもなくね…。」と当時の事を説明しました。「嫌われてたんでしょうね…」とつぶやく同僚にあいづちをうちながら、「ここに来る時も、家族がなかなか本人と会わせなかったのは、会うと入所を断られると恐れてたのね…」と思い出して言いました。

 

「ここのスタッフは皆優しいから、怒鳴られても言い返さない人も多くて、誰かしら声をかけていたじゃない?」「でも次行く所はあまり評判がよくないらしいから、どうなるかしらね…。」という2人の話を聞いて、私は『金田さんは、ここにくる前の施設での対応で自尊心がズタズタになって、ああいった強硬な態度をとったのかも…』と考えながら、その場を離れて、金田さんの部屋へ向かいました。

 

久しぶりに会った金田さんに、「この頃あなた仕事に来ないのね。」と言われたので、「漫画の仕事が忙しくなってしまって、ここももう辞めるかもしれないんです。」と近況を説明しました。すると金田さんは、少し淋しそうに「…そうなの。…頑張ってね……。」と静かに言いました。その姿を見て、私は『モンスターだと思った金田さんも、家族を愛し、尊敬されれば嬉しいし、嫌われれば悲しい、放っておかれれば淋しい。そんな一人の人間であったのだ。』と思わずにいられませんでした。

 

『そのことがわかるとモンスターと私が、同じ地続きの人間なのだということがわかる…。』と感じるのでした。「色々と私も言わせてもらったけど、金田さんは人として大事にしてもらいたかっただけなんですよね。」と声をかけると、金田さんはじっと私を見て、「誰だってそうじゃない?」と言いました。

 

「誰だって人に大事にされたいわよ。そうでしょ?」と私をまっすぐ見つめて言う金田さんの言葉に深く納得するのでした。

 

私と金田さんの交流はこれでおしまいです。金田さんが退所して、その後の施設の空気は一変しました。どのスタッフも活気に満ち、皆生き生きしていると思ってしまうほど、笑顔が多く見られました。

 

スタッフがそうだと当然患者さんたちも穏やかに過ごせるようになり、施設の中は和らいだ空気に。ちょっとやそっとのワガママにも動じず対処できるスキルが身につき…幸か不幸か金田さんの教えは見事に実りあるものとなったのです。でもスタッフの中には、「今でも、金田さんに似た人を見かけると震えがくる…!!」ときっちりトラウマになってる人もいましたが…。ある日、スタッフで金田さんの思い出話になったとき、以前何もしていないのに中年男性という理由で怒鳴られたスタッフが、「でもあの人…」と話し始めました。

 

「頭はハッキリしててさ…でも手と足使えなくてさ…本当にキツかったと思うよ…相当キツいと思う。」と金田さんを気遣って言いました。すると他のスタッフも口々に「そうだね、本当だね。」と言う中、私は、『金田さんに聞かせたいわ…自分を理解してた人を拒否したりして…』と思いましたが、『違う、逆に男性の場合、弱い自分を見抜いてた人には向き合いたくなかったのかも…。』と考え直しますが、考えても分からないのでした。

 

今となっては事の真意はわからないけれど…モンスター患者については、深く考えさせられたと思いました。モンスター患者に対応するには…『まず、理解に努める。どうしてこういうことを言うのか、何を伝えたいのかを考える。それからこちら側ができることとできないことを分けてきっちり伝える。それでも解決できない場合は、上司から言ってもらい、場合によっては退所も…。そして自分が感じたことを相手に伝えることもこれからはしていこう…』と考えて、自分なりの対処法を以前相談にのっていただいた持田さんに報告しに行きました。

 

持田さんは笑顔で「なるほどねー!それで今日は何しに来たの?」と話を聞いてくれます。持田さんには、あれから何かと看護のお悩みを相談させていただき、毎回スルドイ指摘をされるので、「それは広田さんの思い込みだわ。」と打ちのめされるのですが、それはまた、いつかお話しできればいいなと思っています。(END)

(編集部注)

この物語は、事実を基にしたフィクションです。関係者に同意を得たうえで、プライバシー保護に十分配慮して創作しています。

 


【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

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