先輩たちの陰口が聞こえてきて…病棟の雰囲気にウンザリ｜バク先生のナースお悩み相談室【4】

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今回のお悩み

少し前、病棟のスタッフルームの前を通りかかったら、先輩たち数人がコソコソ陰口を言っているのを聞いてしまいました。同じ病棟で働くある人について「仕事が遅い」とか「一緒のシフトに入りたくない」とか…。

 

そのときは自分のことではなかったけど、「あー、私もこんなふうに言われてるんだな」と思うと怖いし、それからはその先輩たちにどう見られているか、なんとなく気にしてしまいます。

 

そんなことでビクビクしてる自分も馬鹿らしいとはわかっているのですが…。病棟の雰囲気にウンザリです。

人が集まると陰口・悪口が発生するのには、実は理由があるんです。

その仕組みがわかれば凹んだり気に病んだりもだいぶ楽になるはず。「陰口が生まれる理由」を解き明かします！

陰口は全人類の共通の悩み!?

つらい悩みですね……。しかし、これは割とどこの職種でも聞く悩みかもしれません。そう書くと「え！？」と思われそうですが、男女問わず、このような醜い争いは何といろんな職場で繰り広げられています。

いわゆるデスクワークの会社員でも、建築関係のおじさんの間でも、そんなことを言う人はこの世にいます。

たぶん無人島にでも行かない限り、二人いれば口喧嘩をし、三人寄れば文殊の知恵ではなく文句を言え、とばかりに不在の一人の文句を二人で言い合う人がこの世には必ずいます。なのでその悩みは極論、全人類の悩みかもしれません。つらい。

仮に質問者さんが、聞こえてしまった陰口の内容と全くの真逆の存在（仕事が早くて患者さん受けが良い）だったとしましょう。先輩たちは果たして「あの子は仕事が早いよね～」「同じシフトに入りた～い！」と言うでしょうか。

言いません。

むしろ「あの子、仕事は早いけど丁寧さに欠けるよね～」「そのフォローしてるのマジだるいわ～、同じシフトに入りたくない～」と言われるでしょう。何故なのか？

それは単に文句や悪口を言いたいだけだからです。

陰口・悪口が生まれる悲しいからくり

え？それってどういうことなの？というと、

①基本複数人で一緒の場所にいると何かを話さないといけないという思い込みがあり、

②話題を提供するほどの何かしらの面白さがない人が集まると、

③悪口というノリだけで何となく共通感を感じられる（と勘違いしてしまう）話題しか出ないから

というあまりにも悲しい理由があるからです。

まず①の勘違いをしている人があまりにも多いのですが、何人かいる時に必ず話さなくてはならないという決まりは全くありません。むしろ仲がいい人同士が集まれば、皆が無言で何をしていても別に気にならないくらいです。だって仲が良いことをいちいち「私たち今会話してないけど仲良しだよね」と言わなくてもわかっているからです。

しかし、まだそこまで関係性が成熟していない集団で、「何人かいると話さないと場が持たない」と勘違いしている人が集まってしまうと話題が見つからず（親しくないので何が共通で盛り上がれる話題かわからないから）、その上で②のように引き出しもそこまで豊富でもない状態の場合（推しの話などは下手したら喧嘩になることもあります。同担拒否とか怖いです）、③のように「ここにいない、自分たちより弱い（と思っている）人の悪口」が一見盛り上がってしまうという状態を生み出します。

もしかしたら中には（え……◯◯さん、仕事は一見遅いけど丁寧だし、ミスはないしなぁ……）と思っている人がいても、そこは数の暴力に負けてしまうもの。「だよね～」と言っておいた方が正直、その場で自分が浮くことを回避できます。回避しないと自分がいないときに悪口の対象が自分になるのは、そんな集団では目に見えているからです。

ひええ怖い。

では将来そんな悪口大魔王に仲間入りしなくては生きていけないのでしょうか……？　答えはNoです。

そんな人は放置でOK

おっしゃるとおり、そのままだと病棟の雰囲気はウンザリの連続になりますし、あなたが耳にしたように他の人だって先輩たちの陰口を耳にしているでしょう。

そして、陰口を言う人に魅力を感じる人はまずいません。

むしろ本当に困っているなら直接その人に「私に教えられることはある？」と聞いてくれる先輩の方が後輩から慕われるでしょうし、その話を耳にした人は「お、さりげなく後輩に指導して、気遣いができる人だな」と思うでしょう。（人前で指導するのは正直指導される側の心を無視している行為なので、やられても真似しない方が人間としてかっこいいと自分は思います）

なので、その先輩たちは話術もなければ品性もないことをさらけ出しながら、豪快に自滅への道をたどっているので放置しましょう。そんな人に何か言われても凹む必要は本当にないと思います。

本当に素敵な人の口からは陰口ってわいてこないもんです。自分の今やるべき仕事のスキルをガッツリ黙々と磨きながら、陰口を聞いても「話題が見つからないんだなぁ」で放置するだけで、だいぶん楽になるのではないでしょうか。

基本、本当に優秀な人ほど他人の良い所を見つける能力が高い、と自分はいろんな人を見ていて思いますよ。

執筆

バク@精神科医

ADHDをはじめとした発達障害持ちの元文系。理転した後無事に医学部に合格。国家試験も何とかクリアしたものの、専攻した内科で適応障害になり休職し、精神科医として無事？復活。精神科でジェンダー外来を通じ自分の性自認が完全に無いことに気付く鈍感さ。そんなアセクシャルながらもご縁があって結婚できた、いろいろぼんやりしている精神科医。
雑誌連載や書籍を出したり、依頼があれば講演会をしたりしながら「生きてみるもんだなぁ」と日々感謝しながら今日も日本のどこかで働いている、はずです。