「地域包括医療病棟」ってどんな病棟?「高齢者の救急搬送」の入院先が変わる…⁉

2024年度診療報酬改定のポイントまとめ。「高齢の救急患者」の受け入れ先が変わる?ポイント1:高齢の救急患者を受け入れる「地域包括医療病棟」が新設。ポイント2:急性期病棟は「早期の転院」が強まる流れ。ポイント3:地域包括ケア病棟は「介護施設からの入院受け入れ」を強化

 

高齢化とともに増え続ける「高齢の救急患者」は、どの病棟で受け入れるべき―?

 

医療現場が抱えるこの課題に、国は、新しい病棟「地域包括医療病棟」を作ってメインの受け入れ先にする!という対応策を打ち出しました。

 

2024年度診療報酬改定で新設される「地域包括医療病棟」ってどんな病棟なの? その役割や背景、看護現場への影響についてわかりやすく解説します。

 

 

新設の「地域包括医療病棟」とは

2024年度から登場することになった地域包括医療病棟。すでにある地域包括ケア病棟とあまりにも名前が似すぎて混乱しそうですが、まったく別の、新しい病棟区分です。

 

地域包括医療病棟の役割は、軽症・中等症の多い高齢者の救急搬送・入院の受け入れ先となること。看護配置は101となります。

 

地域包括医療病棟の基準。▼看護配置10対1▼常勤の理学療法士、作業療法士または言語聴覚士が病棟に2人以上▼専任・常勤の管理栄養士が病棟に1人以上▼平均在院日数21日以内
▼退院患者のうち、自宅等に退院する患者の割合が80%以上

 

また、看護必要度の基準は次のように決められました。

 

地域包括医療病棟の看護必要度の基準。基準1)どれかに該当している患者が16%以上:▼A項目2点以上かつB項目3点以上▼A項目3点以上▼C項目1点以上。基準2)「入棟初日のB項目3点以上」の患者が50%以上。基準1)2)のいずれも満たすこと

※看護必要度は「Ⅰ」と「Ⅱ」の2種類あります。Ⅰは看護師が一部項目の評価をつける方式、ⅡはDPCデータを活用して評価する方式。

 

地域包括医療病棟は、リハビリスタッフや管理栄養士の配置も条件になっていること、7対1病棟などと比べると看護必要度の基準がやや緩めであることなどが特徴です。

地域包括医療病棟が作られたワケ

でも、重症度・緊急度がやや低めの病棟」なら、既存の101病棟(急性期一般入院料26)とほとんど同じじゃないの?という疑問もわいてきそうです。

 

なぜ、高齢の救急患者の受け入れ先として、別の10対1病棟をわざわざ作る必要があったのでしょうか?

 

その理由の一つは、急性期病棟ではリハビリやADL維持のための機能が足りないとされたこと。

 

現在、高齢の救急患者の受け入れ先となっている7対1や10対1の急性期病棟にとって、リハビリ提供などはメインで担う機能ではありません。そのため、軽症・中等症の患者も安静・臥床が多くなり、「結果として、ADL低下・要介護度の悪化につながっている」という実態がありました。

 

そこで、「急性期病棟よりもリハビリや栄養管理の体制を備え地域包括ケア病棟(13対1)よりも看護師が手厚く配置された病棟」が必要だということで、地域包括医療病棟が生まれたのです。

リハビリスタッフと歩行リハビリに取り組む高齢患者のイラスト
 

「地域包括医療病棟」に生まれ変わる病棟は…?

そしてもう一つ、こうした役割を持った病棟を新しく作ることで、急性期病棟の整理を進める狙いもあるでしょう。

 

今回、地域包括医療病棟に対する診療報酬は、比較的、高めに設定されました。

この設定からは、

 

  • 看護必要度の基準など、7対1病棟の条件をキープできない病棟
  • 急性期としての入院機能があいまいになってきた10対1病棟

 

などは地域包括医療病棟に生まれ変わってほしい!と誘導したい国の意図が読み取れます。

 

事実、101の急性期病棟は入院機能を明確にして、再編を含めて検討すること」が次の診療報酬改定の宿題だ、とハッキリ指摘されています。

 

もちろん、地域包括医療病棟に移行する病棟がどのくらい出てくるかは、まだわかりませんが、もしかすると、7対1や10対1に勤務している看護師さんにとって、地域包括医療病棟は急速に身近な存在になっていくかもしれません。
 

急性期病院では「転院搬送」が強まる?

最後に「高齢の救急患者」をめぐる動きについて、もう少し見てみましょう。

 

今回の改定では「高齢の救急患者」の受け入れ先確保へ、地域包括医療病棟を新設した以外にも対策が打たれています。

 

その一つが、3次救急病院などからの転院搬送に対する評価(救急患者連携搬送料)が新設されたことです。

 

これは、救命救急センターなどに搬送されたものの、ほかの医療機関でも対応可能な患者さんは、緊急入院から3日目までに転院搬送すると診療報酬がつくというもの。転院搬送時は看護師や医師の同乗が必要になります。

 

この「入院3日目までに」がちょっとポイント。というのも、今回の改定で、看護必要度のA項目の一つ「救急搬送後の入院」は、入院3日目以降、点数にカウントできなくなったのです。これも急性期からの早期転院を促す見直しです。

 

救命救急センターなどに軽症の患者が集まることで、本当に重症な患者を受け入れられないという問題も起きている中、「軽症・中等症の救急患者は、急性期以外の病院で対応を…!」という仕掛けがあちこちにめぐらされています。

医師や看護師が救急車に同乗した転院搬送のイラスト
 

地域包括ケア病棟は「介護施設」からの受け入れ強化

また、地域包括ケア病棟には、特に「介護施設からの入院」を引き受けてほしいと期待されています。

 

介護老人保健施設(老健)・介護医療院・特別養護老人ホームに入所する高齢者が急変した際、協力医療機関として往診などを行い、必要に応じて自院に入院させた場合に加算がつくことになりました(協力対象施設入所者入院加算)。

 

現在、急性期病院が受け入れている高齢の救急患者は、介護施設からの搬送も少なくありません。地域包括ケア病棟には、在宅との連携体制を普段から密につくり、スムーズに入院を受け入れる役割が求められています。

 

まとめ

2025年問題はもう目前。救急医療のパンクを防ぐため、高齢の救急患者の流れをなんとか交通整理しようと国も必死です。

 

しかし、本当に狙ったように進むのでしょうか。

 

看護師の皆さんにとって、勤務先の病棟が機能を変更するのかどうかも含めて、これからの動きが気になります。

 

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

(参考)
令和6年度診療報酬改定について(厚生労働省)

令和6年度診療報酬改定の概要 入院Ⅰ(地域包括医療病棟)(厚生労働省)

個別改定項目について(厚生労働省)

答申書附帯意見 令和6年度診療報酬改定について(厚生労働省)

 

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