HPVワクチン「積極的勧奨」が先送り…HPVワクチンって今どうなってるの?|看護roo!ニュース

記事タイトル画像。ワクチンと看護師のイラスト

子宮頸がんなどを予防するHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)について、国が接種を呼びかける「積極的勧奨」がストップして8年以上が過ぎました

 

この秋の勧奨再開を求めて5万人を超える署名が集まるなどの動きもあり、国の対応が注目されましたが、判断は先送りされることにー。

 

日本ではHPVワクチンを廃棄せざるを得ない事態も出ており、医療者の間では「日本でHPVワクチンを確保できなくなるのでは…」という、新たな危機感が募っています。

 

看護師として知っておきたいHPVワクチンをめぐる動きについて、ポイントをまとめます。

 

 

HPVワクチン勧奨再開へ、議論は「コロナが一段落してから」

まずは、これまでの流れをざっくり確認していきましょう。

 

HPVワクチンが定期接種に加わったのは2013年4月。しかし、接種後の体調不良が問題となり、6月には「積極的勧奨」が中止されて現在に至っています。

 

HPVワクチン「これまでの主な動き」まとめ表。HPVワクチンはヒトパピローマウイルスの感染を防ぎ、小学6年~高校1年の女子が定期接種の対象。2013年4月、定期接種に追加。同年6月、積極的勧奨が中止。2014年8月、接種後の症状を診る医療機関が選定される。2017年11月、厚労省の専門家会議が「接種後の症状とHPVワクチンの因果関係は認められない」と整理。2018年2月、国内の大規模調査「名古屋スタディ」論文が公表。2021年8月、厚労大臣が「勧奨再開に向けて議論」の方針

 

一方、HPVワクチンの効果と安全性は、この間、さまざまな研究で確認されてきました。

 

日本で副反応ではないかと心配された症状も、大規模な調査(名古屋スタディ) などでHPVワクチンとの因果関係が否定されました。こうしたエビデンスの蓄積を受けて、勧奨再開を求める声は次第に高まっています。

 

動きがあったのは今年8月。

 

みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」の医師らと自民党議員連盟が「10月までに勧奨を再開すること」を求める要望書を、5万人を超える署名とともに厚生労働省に提出。その後の会見で田村大臣は、

 

「いつまでも今のような状況でいいというわけではない」

 

と、勧奨再開に向けた議論を始める方針を発表しました。ただし、その時期については、専門家による審議会が新型コロナワクチン対応に追われているとして、

 

「10月は物理的に難しい。新型コロナの状況がある程度、一段落ついたときという話」

 

と説明しています。

 

 

日本でHPVワクチンが確保できなくなるかもしれない…?

今回出された要望書のように、勧奨再開を急ぐ声の背景には、2つの危機感があります。

 

1つは、「接種を勧める呼びかけが届かないまま、定期接種の機会を逃す」というケースが起こり続けることへの危機感です。

 

年間1万人以上が罹患し、約2900人が死亡する子宮頸がん。「HPVワクチンの接種率を高め、1人でも多くの女性に予防してほしい」とする訴えが、一日も早い勧奨再開を求める動きになっています。

 

特に、高校1年生が全3回の接種を無料で終えるには、遅くとも11月までに1回目を接種することが必要になるため、「10月の再開」が主張されていました。

 

HPVワクチン接種率の推移グラフ。生まれ年度が1994年度は接種率55.5%、95年度73.5%、96年度78.2%、97年度78.8%、98年度78.7%、99年度68.9%、2000年度14.3%など。2001年度生まれ以降は接種率がほぼゼロの状態が続く

出典:Corrected human papillomavirus vaccination rates for each birth fiscal year in Japan

 

 

もう1つは、必要なHPVワクチンが日本で確保できなくなることへの危機感です。

 

HPVワクチンは近年、世界的にニーズが高まっており、製薬会社の供給が追いつかなくなりつつあります。この中で、日本は一定のワクチン量を確保しながら、ほとんど接種されないまま廃棄するという事態になっており、

 

「日本が批判されても仕方ない」「日本へのHPVワクチン供給が止まってしまうのではないか」

 

と心配されているのです。

 

 

HPVワクチンは今も「定期接種」

勧奨再開の時期はまだ先になりましたが、HPVワクチンは現在も定期接種で、小学6年~高校1年の女子は無料で接種することができます。

 

対象者にハガキなどでお知らせする自治体も増えており、HPVワクチン接種への関心は少しずつ高まっています。

 

看護師のみなさんも、患者さんらからHPVワクチンについて質問される機会が増えてくるかもしれません。こちらの記事(イチからわかるHPVワクチン)などを参考に、基本的なポイントを押さえておきましょう。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

 

(参考)

令和3年8月31日 田村大臣会見概要(厚生労働省)

HPVワクチンに関する取り組みについて(厚生労働省)

子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために(日本産科婦人科学会)

がん種別統計情報 子宮頸部(国立がん研究センター がん情報サービス)

みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト(みんパピ!)

HPV ワクチン接種率の激減によって増加する子宮頸がん罹患・死亡者の推計人数(大阪大学)

2021年8月31日 厚生労働大臣記者会見 HPV ワクチンの積極的な接種勧奨再開に関する厚生労働大臣の発言について MSD 株式会社のステートメント(MSD)

No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study:Papillomavirus Res. 2018,5:96-103

Corrected human papillomavirus vaccination rates for each birth fiscal year in Japan:Cancer Sci.2020, 111:2156-2162

Safety of human papillomavirus vaccines(WHO)

 

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