「専門職大学」って知ってる? 看護系では4校が申請中

最新情報▶2019年度、看護系「専門職大学」は誕生せず|4校すべてが申請取り下げ

 

学校教育法の一部改正により、「専門職大学」という新しい教育機関ができるのを知っていますか?

 

2017年末、2019年度の開学を目指し、13校の専門職大学が認可申請を行っており、そのうち4校が看護系の学部を設置する予定です(2018年7月時点で、看護系の学部を設置予定の3校は2020年度の開学に計画を変更しています)。

 

そこで、「専門職大学」がどのようなものなのか、今知っておくべきポイントを解説します。

 

 

2019年度開設予定で認可申請中の専門職大学、国際工科専門職大学工科学部(東京、愛知、大阪)、国際ファッション専門職大学国際ファッション学部(東京、愛知、大阪)、専門職大学東都学院大学保健医療学部理学療法学科(東京、神奈川)、東京医療福祉専門職大学※医療福祉学部・看護保健学部(東京)、東京専門職大学医療福祉学部リハビリテーション学科等(東京)、金沢専門職大学職業経営学部(石川)、名古屋医療福祉専門職大学※医療福祉学部・看護保健学部(愛知)、京都専門職大学実践栄養調理学部(京都)、大阪医療福祉専門職大学※医療福祉学部・看護保健学部(大阪)、島根保健専門職大学保健科学部理学療法学科・作業療法学科(島根)、岡山医療専門職大学健康科学部理学療法学科・作業療法学科(岡山)、高知リハビリテーション専門職大学リハビリテーション学部(高知)、福岡専門職大学保健医療学部看護学科(福岡)出典:文部科学省の資料を基に作成、※設置者の学校法人日本教育財団は、2020年度の開学に計画を変更

 

 

「大学」や「専門学校」とは何が違うの?

専門職大学は、専門職業人を育成するための高等教育機関と位置づけられています。

 

その名前から、「大学なの?」「専門学校なの?」と思われがちですが、いずれとも違いがあります。

 

専門職大学と大学や専門学校との違い、(修行年)専門職大学4年、大学4年、専門学校3年、(卒業単位)専門職大学124単位以上、大学124単位以上、専門学校97単位以上、(授業科目の構成)専門職大学・基礎科目20単位以上・職業専門科目60単位以上・展開科目20単位以上・総合科目4単位以上、大学・各授業科目の単位数は大学が定める・幅広く深い教養や総合的な判断力を培う内容、専門学校・各授業科目の単位数は専門学校が定める・実務教育に重きが置かれる、(教育内容)「看護師学校養成所の指定規則」に準じる・基礎分野13単位・専門基礎分野21単位・専門分野Ⅰ16単位・専門分野Ⅱ54単位・統合分野16単位・臨地実習23単位含む、(学位)専門職大学・学士(専門職)、大学・学士、専門学校・なし

 

まず、大学との違いから見ていきます。

 

専門職大学は大学制度の中に位置づけられ、卒業に必要な単位も大学と同じ124単位です。細かな点では異なりますが、設置基準は大学とさほど大きな違いはありません

 

ただし、教育の目的は違います

 

これまでの大学が学問的な色彩が強い教育が行われてきたのに対し、専門職大学は実践的な職業教育に重点を置くとされています。

 

そのため、下記の要件が義務付けられます。

1)卒業単位の3~4割程度以上を実習等の科目とする

2)適切な指導体制が確保された企業内実習等を4年間で20単位以上履修する

3)専門分野におけるおおむね5年以上の実務経験がある「実務家教員」を必要専任教員数の4割以上配置(※実務家教員の半数は研究能力も併せ持つ必要あり)

 

その背景には、「即戦力になる人材がほしい」という産業界からの要望があります。

 

しかし、看護学部の場合は、既存の大学でも看護師学校養成所の指定規則で定められた臨地実習が23単位ありますし、実務家教員の割合が多い大学もあります。そのため、実習等の単位や実務家教員の配置が義務化されるだけで、既存の大学と専門職大学とでは看護学部に限っては教育の中身にさほど変わりはないのではないかと見られています。

 

一方、専門学校とは制度がそもそも違います。

 

専門学校は、自由度の高い専修学校の制度に位置づけられ、教育課程や教育組織などの体制面が違ってきます。また、必要な卒業単位が異なり、専門学校は学位が取得できないのに対し、専門職大学では学位「学士(専門職)」が授与されます。

 

教育内容については、実践的な教育を重視する点は専門学校と専門職大学とでは通じる部分があり、どちらの教育機関も大学同様、看護師学校養成所の指定規則に準じる必要がある点は共通しています。

 

 

専門職大学は社会人にやさしい?

専門職大学ならではの特色もあります。その一つは、社会人が学びやすい仕組みです。

 

具体的には、前期課程(2年ないし3年)と後期課程(2年ないし1年)の区分制課程が導入できることです。

 

この区分制により、4年間続けて就学が難しい場合、前期課程を修了した後に一旦就職をし、その後また後期課程へ再入学するということもできるようになります。その際、前期課程を修了した時点で、専門職大学と同時に誕生する専門職短期大学の学位「短期大学士(専門職)」が授与されます。

 

また、その分野の実務経験者が専門職大学に入学する場合には、実務経験を通じた能力の修得を勘案し、一定期間を修業年限に通算できるとしています。通算できる期間については、修業年限の2分の1を越えない範囲内で、文部科学大臣の定める範囲を超えてはならないとされています。

 

 

関連する他分野の領域も学ぶため、視野が広くなる?

また、専門職大学のもう一つの特色として、設置基準で開設すべき授業科目が定められている点もあります。

 

具体的には、下記4つの科目で構成するように規定されています。

1)基礎科目(20単位以上)

2)職業専門科目(60単位以上)

3)展開科目(20単位以上)

4)総合科目(4単位以上)

 

先日、日本看護学教育学会が主催した講演会「どうなる?専門職大学」では、昨年度まで文部科学省医学教育課で看護教育専門官を務めていた斉藤しのぶさん(千葉大学大学院看護学研究科)が、この科目構成について、展開科目の中身を何にするかがポイントになってくると指摘しました。

 

展開科目とは、専攻に関連する他分野の応用的な能力を身につけるための授業のことです。ただし、斉藤さんによると、看護系の学部では助産師や保健師は同じ分野と見なされ、この「他分野」には含まれないそうです。

 

そうなると、何が他分野になるのでしょう。斉藤さんは、この「他分野」を何に設定し、どのような授業を行うのか、各専門職大学が独自性を出せるかはそこに掛かっていると説明しました。

 

千葉大学大学院看護学研究科の斉藤しのぶさん

専門職大学の説明をする千葉大学大学院看護学研究科の斉藤しのぶさん

 

 

看護師のなり方が増え、看護教育の現場が混乱する?

これまで専門職大学の紹介をしてきましたが、看護学部に関しては既存の大学とさほど大きな違いはないと考えられます。

 

そのため、看護教育の関係者の中には、専門職大学をつくる意義を疑問視する声が聞かれます。また、養成ルートが複雑化することに対する懸念の声も上がり始めています。

 

専門職大学の新設も踏まえた、おもな看護師養成ルートを図に示しました。

 

 

 

図に示した以外にも准看護師養成所から大学や短大等に進学するケースもあるでしょうし、前述したように専門職大学の前期課程を修了後、いったん離れ、後期課程に再入学するケースもあります。また、助産師や保健師の養成ルートも加味すると、さまざまなケースが考えられます。

 

さらに、2019年度開設予定で認可申請中の専門職短期大学(3校)の中には看護系の学部はありませんでしたが、今後、登場する可能性もあり、そうなると一層ルートが増えることになります。

 

斉藤さんは、日本看護学教育学会主催の講演会で次のように話しました。

 

「この制度ができて、よくなると期待を持つのであれば、専門職大学には多様な科目ができますので、看護教育の内容の既定路線というものが良い意味で崩されることにつながり、大学も柔軟なカリキュラムをつくって独自性を高め、質の向上を図るための参考になっていくかもしれません」

 

一方で、看護教員の不足によって教育が行き届かなかったり、看護師学校養成所の指定規則どおりの科目構成で期待するほどには独自性が出なかったりする可能性を指摘し、専門学校が専門職大学になる「単なる看板の架替え」になってしまわないかが心配されるとしました。

 

 

認可されるのはいつ?

2019年度開設予定の専門職大学の認可は、2018年8月ごろになる見通しです。認可が下りれば、2023年春には「専門職大学卒の看護師」が誕生することになります。

 

専門職大学の誕生が、新たな看護教育の展開につながるのか、もしくは看護教育の現場をただ混乱させてしまうだけなのか、今後の動きを冷静に見ていく必要があります。

 

 

看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

※編集部註※

当記事は、公開した時点で、「おもな看護師養成のルート」の図に一部誤りがございました。
2018年7月23日12時55分に正しい情報に修正いたしました。訂正してお詫び申し上げます。
(誤)2年課程の通信制課程は実務経験10年以上
(正)2年課程の通信制課程は実務経験7年以上

 

 

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(参考)

専門職大学・専門職短期大学・専門職学科(文部科学省)

高等学校における看護教育(文部科学省)

保健師助産師看護師学校養成所指定規則

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