ナースのお悩み処方箋【6】先輩みたいに強くなれない・・・

「強い看護師なんかいない。
 いるのは、強くなろう・強くあろうとしている看護師だけ」

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私が新人だった頃、先輩看護師さんたちを見て、すごく不思議でした。
患者さんが亡くなったのに、誰も立ち止まったり泣いたりしないのです。
エンゼルケアの後、ご遺族の前で少しだけ泣きそうな顔をしたすぐ後、隣の病室の患者さんのケアをしているのです、それも笑顔で。

こんなこと、私には絶対にできない、と思いました。

そんな頃、ある時、目の前で予備動作も何もなしに、いきなり患者さんにゴバァッと嘔吐をされたことがありました。
白衣も吐物まみれで、スカートを伝って、足元に吐瀉物の水溜りができています。
もう頭が真っ白です。
恥を忍んで告白しますと、この直後、いわゆる『もらいゲロ』をしてしまい、患者さんの吐瀉物の上に、吐いてしまいました。
もちろん、先輩看護師に叱られたのは言うまでもありません。

吐瀉物だって立派な看護の観察材料です。
それを台無しにしてしまったのだから、叱られて当然です。

あの時も、先輩看護師は(私に対して怒りながらも)冷静に患者さんのケアをし、記録を書いていました。

私は、というと、もうへこんでへこんで、仕事にならなくて、そんな自分が情けなくて更にへこむ、という負のスパイラル真っ只中です。

そんな中、見かねた主任さんが声をかけてくれました。
「みんな同じなのよ」と。

「まだ新人のあなたには、先輩たちはとても強くて大きい存在に思えるかもしれない。
 でも、それは彼女たちが、そう見えるように頑張っているからよ。
 みんな、ちゃんとした看護師でありたいって思ってる、それだけなんだよ」

……実は恥ずかしながらも、今でももらいゲロをします。
だから、患者さんの嘔吐介助の際には、ガーグルベイスンを2つ持っていくのです。
患者さんの吐瀉物を受ける用と、私用のと。
もらいゲロしながら、患者さんの嘔吐のケアをする私を見て、後輩看護師が「すごいです、私にはそんなことできません!」と言いました。

そう、みんな同じ、なんです。
ちゃんとした看護師なら、患者さんのケアが最優先。
そのためにはどう動けばいいのかを考えて、行動しているだけなんです。
私がすごいと思った当時の先輩たちも、患者さん優先に動いてただけなんです。

そんなもんです。
まだ経験が浅い人には『すごく見えた』、それだけなんです。

大きくて強く見える先輩を見て、自分は先輩のようになんてなれない、なんて、へこむ必要はありません。
ベテランの枠に入れられている私だって、未だに嘔吐に慣れることができません。
本当は嘔吐なんかすぐに慣れなきゃいけない、でも、慣れられない、ならどうしよう、と考えた結果が、『自分用のガーグルベイスンも持っていく』なんです。
先輩諸氏には「何やってんの」と呆れられてしまうでしょうけれど。

何を優先するのかを考えれば、いいんです。
そうしていたら、いつの間にか、すごいと思っていた先輩看護師たちの仲間入りをしている自分に気付いている……

 

 


 【岡田久美】 兵庫県出身。看護書籍の編集とゲームシナリオライターを本業に、フリーの看護師として活躍中。いつでもどこでもどんなところでも勤務できるオールマイティな看護師を目指し、これまでの勤務職場は病院、クリニックなど30以上。

著書に「看護師の流した涙」(ぶんか社)がある。

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