3.2秒に1人が認知症になる時代、日本は“脱病院”を実現できるか?

9月21日はアルツハイマーデーです。

 

国際アルツハイマー病協会は、世界の認知症患者が2050年には1億3200万人に達する可能性があるとの報告書を発表しました。

これは現在の患者数(4680万人)の3倍の人数にのぼります。認知症の新規患者数は毎年約990万人、3.2秒に1人患者が増えている計算です。

 

 

認知症患者数の増加は、日本を含めたアジア地域が最も顕著です。年間約1000万人に上る新たな患者数の内訳は、アジア地域が490万人(49%)と半数を占めています。次いで、欧州250万人(25%)、北米170万人(17%)アフリカ地域80万人(8%)と続きます。

 

患者数が増えるに伴って、それにかかる医療費も膨大です。全世界で認知症治療にかかるコストは約98兆円(2015年)です。これが15年後には、約240兆円とおよそ2.4倍に膨れ上がるとの試算も出ています。

 

イギリス・フランス等では認知症の入院患者は1%以下

ちなみに日本では、認知症患者数は約462万人(2012年)で、高齢者の7人に1人が認知症です。しかし2025年には約700万人になるという試算が出されていて、高齢者の実に5人に1人が認知症ということになります。

 

海外では、早くから認知症高齢者の“脱病院”への取り組みが進んできました。「認知症国家戦略に関する国際政策シンポジウム」参加国であるイギリス、フランス、ドイツ、デンマーク、オーストラリアなどでは入院している認知症高齢者はほとんどおらず、いても1%以下ということです。

 

日本では認知症患者の15%、7万5000人が入院

一方で日本では、精神科に入院する認知症患者数は減るどころかむしろ増えています。認知症を主傷病名とする入院患者は、およそ7万5000人(2008年調査)。1999年には5万4000人だったものが大幅に増加しているのがわかります。

 

認知症高齢者が暮らす場所は、日本では自宅が50%と最も多いものの、老人福祉施設が35%、病院が約15%と、諸外国と比較して病院の割合が突出して多くなっています。

 

極端に長い在院日数、認知病棟では2年超!

また在院日数が極端に長いという問題もあります。

海外では症状が悪化した際に、緊急避難的に入院することはあっても、短期間で退院するのが一般的です。

これに対して日本では、一般病床も精神病床も含め、認知症患者の平均入院日数はおよそ1年前後。精神病床の認知症専門病棟に限ってみると、なんと倍の2年にもおよぶ在院日数になっています。

 

自宅訪問で自立を支援する取り組み「初期集中支援チーム」

こうした状況に対して、政府は「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」などを講じて対策しています。新オレンジプランは、厚生労働省だけでなく12省庁が共同でまとめたもので、国が一丸となって認知症に対応していく姿勢が反映されています。

 

新オレンジプランには、初期の認知症に焦点を当てた「初期集中支援チーム」の設置などが盛り込まれています。このチームは自治体と医療機関が連携し、看護師や保健師、リハビリ職が患者宅を訪問し、自立を支援するものです。

 

看護師らが初期の認知症患者を訪問支援

「初期集中支援チーム」は、認知症患者の進行予防にとても大きな期待が寄せられています。これまで専門職の介入が少なかった、初期の認知症患者への積極的な取り組みに当たるからです。

 

すでにモデル事業が行われ、全国で40程度の市町村でチームが動いています。これを新オレンジプランでは大幅に拡充し、18年までに全国の1741すべての市町村に導入する計画を立てています。

 

日本の高齢化率は25%を超え、世界の高齢化ランキング1位です。増え続ける認知症患者をいかに支えるか、認知症患者の人権にも配慮した、正しい施策とケアが求められているのではないでしょうか。

 

(参考)厚生労働省 精神病床における認知症入院患者の状況について

SNSシェア

コメント

0/100

掲示板でいま話題

他の話題を見る

アンケート受付中

他の本音アンケートを見る

今日の看護クイズ

本日の問題

◆周術期看護の問題◆「手術部位感染」の略語はどれでしょうか?

  1. ICT
  2. CDC
  3. DOT
  4. SSI

8220人が挑戦!

解答してポイントをGET

ナースの給料明細

8898人の年収・手当公開中!

給料明細を検索