最終更新日 2018/05/08

移行上皮

移行上皮とは・・・

移行上皮(いこうじょうひ/transitional epithelium)は、最近では尿路上皮(urothelium)とも呼ばれることが多いが、腎盂、尿管、膀胱、尿道の一部の表面を覆う上皮である。臓器の拡張および収縮機能に応じて形態が変化する特徴を有している。上皮は表在層、中間層、基底層の3層によって構成され、一見重層扁平上皮に類似しているようにも見える。重層扁平上皮との違いとしては、全ての細胞が細胞突起を出して、基底膜に突起が接していることであり、ずれが起こりやすくなっている。膀胱などの臓器に貯留尿量が増加した際には、上皮を構成している個々の細胞は扁平になり、横にずれて細胞層は2~3層に薄くなる。一方、内腔が空になって収縮した際には上皮層は厚く約6層になり、重層円柱状になる。最表層の細胞は特に大型で幅が広く、被蓋細胞(傘細胞)と呼ばれている。

移行上皮は、はがれて尿中に現することがある。膀胱炎など尿路系の炎症の際には、炎症細胞とともに多くの細胞が尿中に出現する。移行上皮に内腔を覆われている腎盂・尿管・膀胱においては共通して正常の移行上皮に類似した腫瘍が発生する。これは移行上皮癌(尿路上皮癌)と呼ばれ、内腔に向けて乳頭状増殖をすることが多く、しばしば同時性、異時性に多発する。腺上皮、扁平上皮への分化を示すこともある。尿中にはがれた癌細胞は細胞診断に利用される。
 

執筆: 大橋健一

横浜市立大学附属病院 病理診断科・病理部教授

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