最終更新日 2018/07/23

アナフィラキシー

アナフィラキシーとは・・・

アナフィラキシー(あなふぃらきしー、anaphylaxis)とは、アレルゲンなどの侵入により複数臓器にアレルギー症状が惹起(症状を引き起こすこと)され、生命に危機を与え得る過敏反応のことである。アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合をアナフィラキシーショックという。

【原因】
多くの場合はIgE抗体を介するⅠ型アレルギー反応だが、IgE抗体を介さない免疫学的機序や、起因物質が直接マスト細胞(肥満細胞)からの化学伝達物質を遊離させることで発症する場合もある。原因としては薬剤、食物、蜂毒、運動などさまざまである。
日本におけるアナフィラキシーショックの発生は、年間5,000~6,000人といわれており、アナフィラキシーの既往を有する児童・生徒の割合は、小学生0.6%、中学生0.4%、高校生0.3%である。毎年、アナフィラキシーによる死亡例が報告されており、アナフィラキシー発現から心停止までの時間は、薬剤では5分、蜂毒では15分、食物では30分といわれている。

【病態】
アナフィラキシーでは、複数臓器にアレルギー症状を発症し、皮膚・粘膜症状(発疹、掻痒、紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹)はアナフィラキシー患者の80~90%、呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素)は最大70%、消化器症状(腹部疝痛嘔吐)や心血管系症状(血圧低下、意識障害)は最大45%発現する。また、治療などにより初期症状が改善した後に再度アナフィラキシーの症状が出現することがあり、二相性反応(症状の再燃)と呼ばれている。

【診断】
アナフィラキシーの経過は急激であり、急性期には臨床検査を行っている余裕はない。症状からアナフィラキシーを疑うことが診断の第一歩となる。
(1)急速に発現する皮膚または粘膜症状に加えて、呼吸器症状または循環器症状の少なくとも一つを伴う場合。
(2)アレルゲンとなり得るものに曝露後、急速に発現する皮膚・粘膜症状、呼吸器症状、循環器症状、持続する消化器症状のうち、二つ以上がある場合。
(3)アレルゲンへの曝露後の急速な血圧低下。
以上(1)~(3)の3項目のうち、いずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。

【治療】
アナフィラキシーと診断したら、原則として患者を仰臥位にし、下肢を挙上させ、バイタルサインを確認する。そしてすぐに応援を要請し、迅速にアドレナリン筋肉注射(大腿中央外側に)を実施する。アナフィラキシーにおける最も有効な治療は、迅速なアドレナリンの筋肉注射である。重症例の場合、可能であれば、救急医療、救命救急医療、または麻酔・蘇生専門チームの治療に委ねる。

執筆: 佐々木 朗

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター小児救急フェロー

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