最終更新日 2023/10/26

ピロリ菌

ピロリ菌 とは・・・

ピロリ菌(ぴろりきん、Helicobacter pylori)とは、強い酸性下のの中でも生育できるらせん状のグラム陰性菌である。正式名称はヘリコバクター・ピロリである。

 

【どのような菌か?】
ピロリ菌は胃内に感染する細菌の一種である。感染経路は未だに不明であるが、糞便や感染者からの経口感染の可能性が示唆されている。地域差・人種差があり、黒人、ヒスパニック系、アジア人に感染が多い。なお、小児期に感染することが多く、年齢とともに感染率が増加し、60歳までには50%程度の人が感染する。

 

ピロリ菌は塩基であるアンモニアを産生することで胃内の酸性環境での生存を可能としている。そのアンモニアが胃の粘膜バリアを破綻させ、さまざまな消化管疾患を引き起こすと考えられている。

 

【どのような疾患の原因になるか?】
ピロリ菌感染は、胃炎、消化性潰瘍、胃がん、低悪性度胃リンパ腫など、主に胃の疾患の原因となる。感染しても症状がないこともあるが、消化不良を引き起こす可能性もある。
胃がんについては、発症リスクを3~6倍程度高くすると言われている1)

 

【検査】
検査方法は、侵襲的検査と非侵襲的検査とに分けられる。

 

(1)侵襲的検査
内視鏡検査での迅速ウレアーゼ試験は粘膜生検検体の組織染色にて診断をする。診断のみを目的とした内視鏡検査は推奨されず基本的には非侵襲的検査が望ましい。

 

(2)非侵襲的検査
尿素呼気試験もしくは便中抗原検査がよく用いられる。
尿素呼気試験は、ピロリ菌の尿素から二酸化炭素およびアンモニアを生成する特性を利用した検査である。同位元素の13Cまたは14Cで標識された尿素を経口投与し、その20~30分後に呼気中の二酸化炭素を計測し、標識された13/14CO2の量で感染の有無を調べる。感度・特異度は共に95%以上である。
便中抗原検査は、尿素呼気試験と同様の高い感度・特異度を示している。最もコストパフォーマンスが良く、尿素呼気試験と同様に診断、治療判定に用いられる。
血清検査もあるが、偽陽性率が高く、通常、第1選択となることはない。

 

【治療法】
複数の抗菌薬 (多剤併用療法)とプロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor;PPI)が治療のゴールドスタンダードとなる。
治療対象は合併症(潰瘍、胃がんなど)を呈している患者、および無症状であっても発がん率が増加することから、感染している患者は治療を推奨されている。

 

 

【引用・参考文献】
1)Nimish Vakil.Helicobacter pylori感染症.MSD マニュアル プロフェッショナル版.(2023年5月閲覧)
2)William D Chey,et al.American College of Gastroenterology guidelines on the management of Helicobacter pylori infection.Am J Gastroenterol.2007;102(8):1808-25.(2023年5月閲覧)
 

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