点耳の実施方法 | 外用薬の与薬【4】

【監修】

山本君子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)

 

【執筆】

加治美幸(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 講師)

 

「点耳」とは

点耳とは、点耳薬を耳腔内に滴下もしくは噴霧、または塗布する与薬方法のこと

 

「点耳」の適応

●外耳、中耳に直接働き、局所に作用する

●感染や炎症の治療、耳垢の軟化、麻酔などの薬剤がある

 

「点耳」の禁忌

(1)安全性が確認されていない「点耳薬」の使用は禁忌である(安全性の確認された「点耳薬」のみを使用する)

(2)点眼薬や消毒薬の転用は禁忌である

 

「点耳」の必要物品

指示書 点耳薬(指示された薬剤) トレイ ディスポーザブル手袋 清潔なガーゼ(もしくはティッシュペーパー) 綿棒 廃棄物入れ(ビニール袋や膿盆)

  • 指示書
  • 点耳薬(指示された薬剤)
  • トレイ
  • ディスポーザブル手袋
  • 清潔なガーゼ(もしくはティッシュペーパー)
  • 綿棒
  • 廃棄物入れ(ビニール袋や膿盆)

 

「点耳」の準備

(1)指示書の記載内容や、医師から患者さんへの説明内容を確認する

ポイント

患者さんに点耳の説明をするため、医師の説明内容とその内容に患者さんがどんな反応を示したか、事前に知っておく

 

(2)医師による与薬指示が患者さんに適しているか、アセスメントする

■アセスメント項目

  • 患者さんの状態
  • 過去の副作用の有無
  • 薬剤の用法・容量・作用・副作用

 

(3)6Rを確認し、トレイに必要物品を準備する

 

■誤薬防止のため6R(Right)

  • 正しい患者(氏名、部屋番号など):Right Patient
  • 正しい薬剤:Right Drug
  • 正しい量:Right Dose
  • 正しい方法:Right Route
  • 正しい時間:Right Time
  • 正しい記録:Right Record

 

(4)衛生的手洗いを行う

(5)患者さんの本人確認を行い、点耳の目的と方法を説明し、同意を得る

(6)耳垢が多い場合は綿棒で除去する

根拠「耳垢を除去する理由」

耳垢があると薬剤の吸収が阻害されるため

 

(7)手のひらで薬瓶を2~3分握って、体温程度に薬液を温める

ポイント

冷たい薬液をそのまま点耳すると、めまいを起こすことがある

 

「点耳」の実施

(1)姿勢を側臥位または座位とし、薬剤を滴下する方の耳が真上を向くようにする

ポイント

耳が上向きになり、薬剤を滴下しやすくなる

 

(2)点耳をする。容器の先端が耳に触れないように薬剤を滴下する

 

(3)点耳薬が外耳道を伝わって静かに流れ込むように、指示量を滴下する

ポイント

容器の先端が耳に触れると薬剤が汚染するため、触れないように留意する

 

(4)点耳薬を浸透させる。点耳薬を浸透させるため、耳介を上後方に引きながらゆするようにする

  • 点耳の場合:2~3分程度そのままの姿勢を保つ
  • 耳浴の場合:10分程度そのままの姿勢を保つ
ポイント

外耳道がまっすぐなることで、薬剤が中耳腔まで十分に到達する

 

(5)残った薬液を拭き取る。点耳をした耳に清潔なガーゼかティシュペーパーをあて、耳を下向きにして流れ出た薬液を拭き取る

※薬剤が皮膚に付着していると、皮膚炎等の原因になることがある

 

「点耳」の実施後

(1)患者さんに終了したことを伝え、患者さんの状態や副作用の有無などを確認する

(2)体位を整え、ナースコールを手元に置いて退出する

(3)衛生的手洗いをする

(4)薬剤、量、方法、部位、時間、患者さんの状態と薬の効果・副作用などを記録し、サインする

※点耳による効果を確認し、副作用の早期発見に努める

※実施者の責任を明確にするためにサインをおこなう

【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)

【引用・参考文献】

(1)浦部晶夫 他(監修):今日の治療薬 解説と便覧 2015.南江堂,東京,2015:1030.
(2)看護学テキストNiCE 基礎看護技術(改訂第2版).南江堂,東京,2014:177.
(3)栗原博之(監修):看護技術がみえるvol.1 基礎看護技術.メディックメディア,東京,2014:242-243.

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