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2015年09月20日

不整脈の読み方|不整脈の心電図(1)

心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、不整脈の読み方について解説します。

田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長

 

〈目次〉

***

前回までは、正常の心電図を学びましたね。心電図の各波や間隔の意味と正常値も理解してもらえたと思います。

ここからは、異常な心電図のうち、不整脈に的を絞って勉強します。目からウロコが落ちる話をしましょう。

不整脈は、心房の活動と心室の活動、そしてこの両者の間柄の3点がわかれば、すべて判読できます。ST部位がどうのとか、QT間隔がどうしたとか難しいことは一切言いません。心房・心室・その関係。この3点のみです。

 

不整脈の判読法

心電図の復習をしましょう。

正常では、洞結節の自発的脱分極(興奮)によって心房に電気信号が波及し心房の収縮が起こります。これは心電図上P波として現れます。心房の興奮はすべて房室結節に集まって、速度をペースダウンすることでタメをつくり、ヒス束から心室内に伝導します。この部分は伝導のみなので心電図上は電位になりません。心室が脱分極(興奮)・再分極(興奮からの回復)することで、心電図上QRS波・T波として描出されるわけです(図1)。

図1心電図波形の出現とは

心電図波形の出現とは

 

つまり、心電図には心房由来の波心室由来の波しか出現しないのです。さらに正常では上流に心房興奮があり、房室伝導を経て心室興奮がありますので、結局のところ心房興奮、両者のつながり、心室興奮、この三者を見極めれば不整脈はすべて判読できるのです。

標準12誘導心電図では心筋の状態や心臓の環境を知るために、P波の幅やST部分なども細かくチェックしましたが、不整脈はシンプルにいきましょう。

P波とQRS波だけです。T波は心室の再分極でQRS波のオマケみたいなものですから、不整脈の判定の際は完全無視です。ですから、たった1つの誘導の解読で事足ります。

P波もQRS波も右上から左下に興奮が伝導しますので、両者がはっきりする誘導はⅡ誘導です。モニター心電図を装着するとⅡ誘導が表示されるように設定されているのは、P波とQRS波がよく見えるためです。

さて、そろそろ極意を伝授しましょう。

 

全体の流れを見る

正常心電図は、“整脈”です。つまり整っている、規則正しいのが基本です。第一印象はとても大切ですよね。間隔が狂っていたり、形の違うものがあったりすれば、それだけで整脈ではないので不整脈です。

実際の心電図を見てみましょう。全体を見渡すと心電図の知識のない人が見てもリズム・形が整っているのは感覚的にわかりますね(図2)。

図2正常心電図の波形

正常心電図の波形

 

P波を探す

P波は心房の興奮ですが、小さいので無視されがちです。しかし、心臓の興奮の流れから言うと、まず心房の興奮が先行しますからここは重要です。

はっきりしない場合は、モニター心電図ならば誘導を変える、感度を上げて波形を大きくするなど工夫をしましょう。それでもみつからなければ標準12誘導心電図を記録して、各誘導を、眼を皿のようにして探してください。ここまでやってみつからなければ、P波は本当にないか、QRS波、T波のなかに隠れて見えないかどちらかです。

P波をみつけたら、初心者のうちは、○で囲む、上にチェックマークを入れる、Pと書いてしまうなど、P波の存在を確認しておきましょう(図3)。

ただし、心電図は公式書類ですから、後で消せるように鉛筆を使うか、コピーに書き込むかにしましょうね。

図3P波をチェック

P波をチェック

 

ここで、キモを教えましょう。P波を探すポイントは、
洞性のP波か。
それ以外か。
この2つにざっくり分けます。

なぜなら洞性P波が正しく、それ以外は異常だからです。洞結節は右心房の右上にありますので、洞結節からの信号は右心房の右上から始まり、左下方向に伝導していきます。

標準12誘導心電図では、Ⅰ誘導、Ⅱ誘導、aVFが陽性のP波です。また、洞結節は同じ位置から規則正しく信号を出しますから、P波は同じ形のものが規則正しく繰り返し見られ、PP間隔は一定になります。

モニター心電図は、通常Ⅱ誘導ですから、モニター上では同じ形の陽性P波が、規則正しい間隔で見られていれば洞性P波と考えてよいでしょう(図4)。

図4洞性P波の向き

洞性P波の向き

 

P波がない場合、みつからない場合はすでに異常ですが、モニター心電図のⅡ誘導の陰性P波、標準12誘導心電図でⅠ誘導、Ⅱ誘導、aVFが陽性ではないP波は、洞性P波ではないと考えましょう。

「面倒くさいなあ」と思っているあなた、よいことを教えましょう。

モニター心電図にかぎらず、標準12誘導心電図の各誘導でも洞性P波であれば、ほとんどの誘導でP波は上向き(陽性)です。

例外はaVR誘導だけで、電極の付け間違えか、心臓に先天性の異常がなければ、正常の場合P波は上向きと考えてください。

心電図をチェックしてみてください。規則正しい間隔で同じ形の洞性P波が見られますね。

 

PP間隔をチェックする

今度は横軸つまり時間をチェックしましょう。

洞性P波であれば、その出現間隔は一定ですね。このように一定時間に繰り返す現象を周期性があるといい、その一定の時間を周期といいます。

洞性P波から次の洞性P波までの時間は、洞結節が電気信号を発生する時間です。洞結節が規則正しく電気信号を発生する間隔を洞周期といいますので、洞性P波の出現する間隔つまりPP間隔は、洞周期と一致します。

実際にディバイダーを使ってPP間隔を計測してみましょう。

図5PP間隔

PP間隔

 

図5の心電図は、規則正しく22コマですね。1コマは0.04秒ですから、22コマでは0.04×22=0.88秒です。計算が面倒なのでおおざっぱに20コマということにしましょう。20コマなら0.04×20=0.8で計算しやすいですから。

つまり、心房は洞結節からの信号で0.8秒に1回規則正しく興奮しているということがわかります。この0.8秒は洞結節の信号発生周期すなわち洞周期になるわけです。

心拍数というと1分間あたりの心室の収縮(興奮)回数です。心房の1分間あたりの収縮(興奮)回数は、心室と区別するために心房心拍数といいます。

心房の興奮周期から、心房心拍数も計算できます。これは正常心電図でも勉強したように、1500÷PP間隔〔mm(コマ)〕、60÷PP間隔(秒)ですね。

この場合の心房心拍数は、1500÷20=75回/分あるいは、同じことですが60÷0.8=75回/分で、1分間あたり規則正しく75回心房が興奮しているというわけです。

この心房興奮は、洞結節からの周期的な信号によってもたらされているので、元をたどれば洞結節が1分間に75回の信号を周期的に発生していることになります。

ここで整理しておきましょう。

洞性のP波と判定できれば、
PP間隔=心房興奮周期=洞周期
心房心拍数:1分間の心房興奮回数=1分間の洞結節興奮発生回数
ということです。

洞性P波以外のP波は、まとめて異所性P波といいます。洞結節以外の場所から発生する信号で心房が興奮するので“異所性”といいます。異所性のP波でも規則正しく出現していれば、心房心拍数は計算できますよね(図6)。

図6洞性P波と異所性P波

洞性P波と異所性P波

 

たとえば、異所性P波のPP間隔が15コマであれば、その心房興奮周期は0.04×15=0.6秒ですし、心拍数に換算すれば、1500÷15(または60÷0.6)=100回/分で、1分間に100回心房が興奮しているのがわかります。

 

PQ間隔をチェックする

正常の心臓の興奮は、洞結節から始まり心房から房室伝導を経て心室と伝導します。川が源流から下流へ流れるのと同じです。心房を興奮させた信号は、房室接合部で潜行します。この部分は心電図ではPQ間隔に反映しています。

ここではまず、P波の後にQRS波があるかどうか確認します。「全体の流れを見る」で最初に全体のリズムを確認していれば、まず見落としはないと思いますがP波の後にQRS波がなければ、心房の興奮が心室に伝わっていないことになり、これは異常ですね。

次にPQ間隔をチェックしましょう。P波の始まりからQRS波の始まりまでの間隔で、心房興奮の開始から心室興奮の開始までの時間を意味しています。

さらに各心拍で、PQ間隔が一定かどうかを確認し、その間隔を計測しましょう。

下限は0.12秒(=3コマ)、上限は0.20秒(=5コマ)です。0.12秒未満はPQ短縮、0.21秒以上はPQ延長といいます。

PQ短縮は房室接合部の伝導速度が速すぎるか、ヒス束以外に伝導路がある場合に見られます。PQ延長は房室接合部の伝導速度が遅いために房室伝導に時間がかかっていることを示しています。PQ間隔が一定であれば、心室の興奮間隔つまりRR間隔はPP間隔と一致します。

混乱した人は、PP間隔をディバイダーで固定して、PQ間隔分だけ右に移動してみましょう。RR間隔と一致しましたね(図7)。

図7RR間隔

RR間隔

 

つまり、PQ間隔が一定ならば、心房の興奮周期と心室の興奮周期は同じですから、心房心拍数が心室の心拍数、いわゆる心拍数になるわけですね。

図8の心電図でPQ間隔はどうでしょうか。計測してみましょう。

図8PQ間隔

PQ間隔

 

各心拍で一定で4コマくらいですね。秒に換算すると0.04×4=0.16秒で、正常ですね。

 

QRS波をチェックする

房室結節でゆっくり伝導した興奮はヒス束から心室に出て、脚、プルキンエ線維を高速で伝導して心室を興奮させてQRS波となります。正常であれば、各心拍で同じ順序、同じ時間で心室が興奮するので同じ形のQRS波となります。「全体の流れを見る」で違う形のQRS波があれば、すぐチェックできますね。

QRS波幅はどうでしょう。ヒス束〜脚〜プルキンエ線維を高速で伝導すれば、心室の興奮(脱分極)は短時間で終了します。心電図上で“短時間”は横軸つまり幅に現れます。心室興奮が短時間で終了すれば、QRS幅は狭くなり、逆に時間がかかればQRS幅が広くなります。

上限は0.12秒(3コマ)と覚えましょう。

3コマ以上は、なんらかの原因で心室の興奮に時間がかかっていると考えます。

図9の心電図ではどうでしょうか。

図9QRS幅

QRS幅

 

QRS波の始まりから終了ですから、2コマで、0.04×2=0.08秒で正常ですね。

 

P波、PQ間隔がはっきりしないときはRR間隔をチェックする

P波があって、PQ間隔が一定ならば、PP間隔=RR間隔ですからチェックの必要はありません。P波がない、あるいははっきりしないときはRR間隔をチェックしましょう。心拍数もわかります。またPQ間隔が不定なときも、心室の興奮リズムを見るためRR間隔を確認します。

 

まとめ

  • まず全体を見て、“乱れ”の有無をチェック
  • 次にP・PP・PQ・QRS・(RR)の順でチェック

ここは大切ですから、に出して繰り返し復唱しましょう。

はいP・PP・PQ・QRS・(RR)、ピー・ピーピー・ピーキュー・キューアールエス・カッコアールアール。

 

不整脈ではない心電図

モニター心電図や標準12誘導心電図を見たり、見せられたりすると不安になってイヤな汗をかきませんか。

その理由は、正常なのか異常なのかよくわからないからですよね。「これは不整脈ではない」と断定できればスッキリできますよね。

ここでは不整脈ではないと断言できる4つの条件を教えます。4点をチェックして、すべての項目が条件に合えば、不整脈でない心電図です。ただし、あくまでも不整脈かどうかの判定ですから、その他の心疾患は標準12誘導心電図でじっくり診断しましょう。

判定する心電図は1つの誘導だけで十分です。モニター心電図の記録用紙でもいいですし、標準12誘導心電図のなかの1つの誘導でもOKです。ただし、心房波と心室波がわかる誘導でないと判定できません。では、行ってみましょう。

まず、全体を見ます。

心臓の実際のポンプ機能は心室が担当しています。心室の1分間あたりの拍出回数を心拍数といいますね。心拍数は多すぎても少なすぎても循環がうまく行かず、ときには危機的な状態になってしまいます。

そうですね、まず心拍数をざっと見ます。極端な徐脈や頻脈はそれだけで危険なので、すぐに患者さんの様子を確認しましょう。

極端というのはどのくらいか、基礎疾患にもよりますが、40回/分未満の徐脈、200回/分以上の頻脈は、健康な人でも循環状態が悪化しますので、異常事態です。

もちろん、全身状態の悪い場合や、心機能が低下している場合は45回/分の徐脈でも、180回/分の頻脈でも、循環不全が起こる可能性はあります。

いずれにしても、心電図を見たときに極端にPP間隔が延長している場合(著しい徐脈)と、反対に極端にPP間隔が短縮している場合(著しい頻脈)は、原因がなんであれ、またQRS波の幅が広くても狭くても、循環が悪化しているので緊急と考えて対処しましょう。

たとえば、モニター心電図のアラームが鳴って、「ハッとして見たら、徐脈どころかQRS波が出ていない……大変だ」とベッドサイドにダッシュしたら、電極が外れていたなんてことはよくありますが、行ってみないとわかりません。

また、幅の広いQRS波がたくさん出ていて、モニターには心室頻拍(VT)なんて出ていて焦っていたら、本人が歯磨きをしながら歩いていたなんてこともあります。

いずれも確認しないとわかりませんから、極端な徐脈、頻脈では理屈抜きに患者さんの状態を確認しましょう。

著しい徐脈、頻脈でなければ腰を落ち着けて解読です。

正常心電図で勉強しましたね。P波、PP間隔、PQ間隔、QRS波の順で見てみましょう。ここで、復習です。

正常の心臓では洞結節が1分間に50~100回の幅で規則正しく脱分極、再分極を繰り返すことで電気信号を発生し、心房を興奮させてP波となります。

房室接合部で興奮は潜行して基線に戻って、心室に伝導されるとヒス束〜脚〜プルキンエ線維を通って心室を興奮させてQRS波となります。

PP間隔は洞結節の信号発生周期すなわち洞周期と一致し、PQ間隔は房室伝導を反映します。また心房心拍数はPQ間隔が一定ならば心室心拍数と同じになります。

P波:モニター心電図は装着するとⅡ誘導が表示される。ですから洞性P波であれば、上向きつまり陽性P波が正常

PP間隔:洞結節からの信号で、心房が興奮していればPP間隔は規則正しく一定間隔で出現する。さらに、心房の心拍数は50回/分未満が徐脈、101回/分以上は頻脈で、50~100回/分の心拍数が正常

50回/分は、PP間隔でいうと1.2秒、コマ数なら30コマです。つまり30コマより長いPP間隔は心房の徐脈ということになります。また、100回/分はPP間隔では0.6秒であり、15コマになります。15コマよりもPP間隔が短ければ心房が頻脈ということですね。

まとめると、PP間隔は一定で、15~30コマが正常です。

ここで、1500÷コマ数で心房心拍数も計算しておきましょう。

PQ間隔:この部分は房室伝導を反映する

まず、P波の後にQRS波があるのが原則です。

P波だけがあって、QRS波がなければ、心房の興奮が心室に伝導しなかったということになります。QRS波があれば、PQ間隔を計測します。

興奮が心房を経て心室に到着するのに時間がかかればPQ間隔は延長しますし、早く到着すればPQ間隔は短縮します。この差は房室結節内での伝導時間の差です。心房の興奮は房室結節に集まってゆっくり伝導してヒス束から心室に伝わります。ヒス束内の伝導速度はあまり変化しませんが、房室結節内は自律神経や薬剤によって伝導速度や不応期が容易に変わるため、PQ間隔が変動する原因は房室結節にあります。

PQ間隔も心拍ごとに一定で変動がないのが正常です。

0.12秒~0.20秒、コマ数でいえば3~5コマです。3コマ以下はPQ短縮、5コマを超えるとPQ延長です。まとめると、PQ間隔は一定で、3~5コマが正常です。

QRS波:ヒス束~脚~プルキンエ線維を伝導して、素早く心室の興奮が完了すれば狭くてシャープなQRS波になる。しかし、なんらかの原因でヒス束~脚~プルキンエ線維という通常の伝導路を通過しないか、通過障害があれば幅が広いQRS波になる

その基準は3コマ以内(=0.12秒以内)と覚えましょう。

たとえば、後で勉強しますが脚ブロックという伝導路の障害があります。これは左脚あるいは右脚の伝導障害があり、片方の脚が通れないために、興奮の伝導に時間がかかってQRS波の幅が広くなります。

この場合、洞結節からの興奮は心房、房室接合部から、心室を興奮させますので、厳密な意味では“不整”ではありませんが、伝導が障害されているという意味では正常とは言えません。

QRS波をチェックする場合に大切なのは、まず同じ形のQRS波が、P波に引き続いて出現しているか、次にその幅はどうかという2点です。

PP間隔が規則正しく、PQ間隔が一定ならばQRS波の出現間隔は、PP間隔と一致します。当然、心房心拍数=心拍数ということも理解できると思います。QRS波は形が同じで幅は3コマ以内が正常です。

 

まとめ(図10

  • P波:上向き
  • PP間隔:一定、15~30コマ
  • PQ間隔:一定、3~5コマ
  • QRS波:3コマ以内(PQ一定ならPP=RR、心房心拍数=心拍数)

以上のすべてが満たされれば、あなたの見ている心電図は“不整脈でない”と言い切れます。

図10不整脈の判定:4つの条件

不整脈の判定:4つの条件

 

 

〈次回〉

洞性P波から読み解く不整脈|不整脈の心電図(2)

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版

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