「介護医療院」が増えない…? 介護療養病床の廃止まであと5年|看護roo!ニュース

看護師と高齢患者のイラスト

 

2018年4月に誕生した「介護医療院」

慢性期医療や看取りの機能を備えた新しい介護施設として注目されますが、その数は増えていません。

 

介護医療院に転換することが期待されている「介護療養病床」などが廃止されるまで、あと5年。リミットが迫る中、介護医療院はこれから急速に増えていくのでしょうか? 

 

 

「介護医療院」とは?

介護医療院とは、現在の療養病床が担っている

 

 ▼慢性期の医療機能

 ▼看取り・ターミナルケア機能

 

と同時に、介護老人保健施設のような

 

 ▼長期の療養生活を送る「住まいの場」としての機能

 

を持つ介護保険施設です=「介護医療院」ってなに?【ポイント解説】=。

 

介護医療院の役割を示すイメージ図

 

現在の介護療養病床(約5.5万床)は廃止されることが決まっています。2024年4月以降は存続することができません。介護療養病床を持つ医療機関は、別の機能の病床に転換するか、病床そのものを閉じるか、いずれかの選択を迫られています。

 

同じように、医療療養病床のうち、医療ニーズが低い患者が多い病床(看護配置25対1、約6.6万床)も廃止されることになっています。

 

これらの療養病床が機能を転換する場合、有力な選択肢となるのが介護医療院です。

 

 

介護医療院に転換した医療機関は、まだ1割前後

では、介護医療院は現在、全国にどのくらいできたのでしょうか?

厚生労働省は2019年2月に最新データを公表しました。

 

厚労省の集計によると2018年12月末現在、介護医療院は全国で113施設病床ベースで見ると、約7400床にとどまっています

 

介護医療院は増えた?の図。介護医療院は2018年12月末現在、113施設の7414床。介護療養病床や老人保健施設、医療療養病床からの転換が多い

出典:厚生労働省「介護医療院の開設状況について」(平成31年2月1日)

 

主な転換の対象となり得るのは、介護療養病床だけでも5.5万床、25対1医療療養病床を含めれば12万床以上。このうち、6~13%の病床しか介護医療院への転換に動いていないというのが、現状のようです。

 

 

介護医療院が増えない、そのワケは

介護療養病床などは、2024年3月末の廃止期限までのカウントダウンが始まっています。2021年3月末までに介護医療院に転換すれば取得できる加算(「移行定着支援加算」)がつくられるなど、早期転換のインセンティブも用意されている状況です。

 

それなのに、なぜ転換が進まないのでしょうか?

 

ネックの一つが、施設の改修などにかかるコスト

 

療養病床から転換した場合、「4床室、6.4㎡/人以上」という面積の基準は当面変わりません(※)が、「住まいの場」にふさわしく、入居者のプライバシーを確保することが求められます。一般的な病室のようにカーテンで仕切るだけではNG。パーテーションや家具などを置いて、個人のスペースを間仕切りする必要があります。

(※)大規模改修をする際は「8.0㎡/人以上」に広げる必要あり

 

また、医療施設では必要なかった「十分な広さのレクリエーションルーム」も整備しなくてはなりません。それはイコール、入居者にレクリエーションを提供するということ。そのための体制も整える必要が出てきます。

 

介護医療院に転換しようとしても、すぐには準備が整わない施設も多そうです。

 

介護する職員とベッドに横たわる高齢者のイメージ写真

 

さらに、25対1医療療養病床は、必ずしも介護医療院を転換先とは考えていないという事情も見えます。

 

日本慢性期医療協会の調査(2018年2月)によると、25対1医療療養病床を持つ病院の約6割(調査に回答した93病院のうち62病院)は、より医療依存度の高い「20対1医療療養病床」に移行する考えでした。

 

介護医療院への転換を予定していたのは、2割に満たない15病院にとどまっていました。

 

さらに、医療療養病床が介護医療院に転換すると、財源が医療保険から介護保険に変わります。介護保険は市町村単位での運営なので、そのインパクトは大きく、財政負担や住民の介護保険料が上がることを懸念した自治体が、介護医療院の認可に足踏みしているとの指摘も上がっています。

 

 

介護医療院への転換、2020年までに一気に動くか?

療養病床を再編しようという大きな流れの中で、介護療養病床の廃止は、実はこれまで三回も延期されてきました。今回の「2024年3月末で廃止」という区切りは、いわば"四度目の正直"。介護医療院への転換が本当に進むのかが注目されています。

 

先ほどの日慢協の調査では、「介護療養病床→介護医療院」の転換を決めている施設の多くは、2020年までに転換を終える予定だと回答しています。ひとまず様子見または準備中だった施設も、これから一気に動きを見せる可能性があります。

 

介護医療院に転換する、あるいは医療依存度の高い20対1医療療養病床などに移行する――。いずれにしても患者・利用者の病態や看護ケアの質が変わります。介護医療院をめぐる動き、看護師のみなさんも注目です。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

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(参考)

介護医療院の開設状況等(平成30年12月末)(厚生労働省)

介護療養病床・介護医療院のこれまでの経緯(厚生労働省)

介護医療院等への転換意向に関するアンケート集計結果(日本慢性期医療協会 定例記者会見2018年3月8日)

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