日本人看護師が働きづらい環境で、外国人看護師を受け入れられるのか?

あなたの職場の人手は足りていますか?

看護師が感じる強いストレスの要因についての調査では、「仕事の量の問題」が46.6%と最多でした。

「看護職員の労働実態調査」(日本医療労働組合連合会)

 

電通の女性社員が自殺した事件以降、日本中で労働環境改善について話題になっています。

そんな中、「インドネシア人看護師が日本で働きたいと憧れを口にしなくなった件について」というトピックが大きな関心を集めました(togetter)。

 

 

外国人看護師から見た日本が、なぜ「憧れの対象」から「働きたくない職場」に変化してしまったのでしょうか。

 

 

日本人看護師が働きづらい環境で、外国人看護師を受け入れられるのか?

 

 

インドネシア人看護師が抱く日本のイメージの変化

11月28日付のTwitterで、「インドネシア人看護師が日本で働きたいと憧れを口にしなくなった件について」が話題になりました。

 

日本で看護師経験のある女性(インドネシア在住)が、インドネシアの看護師との会話から感じる「日本のイメージの変化」をつぶやいたのです。

その内容をまとめます。

 

(2016年)11/19から、次女が(現地インドネシアの病院へ)入院した。

私(日本で看護師経験のある女性)は、過去にもその病院にはお世話になっており、看護師たちとは親しい。

彼女たちは私が元看護師だということを知らないが、日本のことをいろいろ聞いてくる。

 

過去に入院した際には、彼らは口々に、「日本に行ってみたい」「日本で働きたい」「日本は給料が高くて羨ましい」と話した。

しかし、今回の入院では違った。

 

お決まりの「日本は美しい国だ」「桜が観たい」「ゴミがない」「日本人は躾が良い」といった話は聞いた。

しかし「働きたい」という言葉は一切聞かなかった。

これは何を意味しているのか?

togetterの内容を要約。強調・補足は編集部)

 

 

以前までは、「日本で働きたい」というインドネシア人は看護師が多かったが、その言葉が聞かれなくなったといいます。

その理由に「労働時間の問題」があるのではないか、と分析しています。

 

実際、現在2人の友人が、日本の高齢者介護施設で働いているという(インドネシア人)看護師は、

「1人は朝7時~夕方5時。もう1人は正午~夜10時まで。インドネシアでは8時間労働なのにもっと長い。休憩時間も少ないと言っている。仕事が終わっても時間丁度に帰れない。周りの人が時間通り帰らないのが嫌だそう」と話してくれた。

togetterの内容を要約。強調・補足は編集部)

 

日本の看護師の「労働時間の長さ」と「暗黙の残業の多さ」について、インドネシア人看護師が認識し、違和感を感じているという内容です。

 

 

「過労死ライン」の残業をしている看護師は4.3%

日本人看護師の残業量は実際、いかほどのものなのでしょうか。

2015年10月の調査では、8割以上が「残業がある」と回答

残業時間を尋ねたところ、交代制で働く看護師の「過労死ライン」とされる月60時間以上の残業をしていた看護師は4.3%いました。

国立大学病院で働く看護師の労働状況に関する調査結果」(弁護士ドットコム)

 

 

「情報取り」という暗黙の「前残業」

「仕事が終わっても時間丁度に帰れない。周りの人が時間通り帰らないのが嫌」とインドネシア人看護師が語るように、日本人看護師の残業は「暗黙の残業」が多いこともかねてから問題視されていました。

 

2012年の調査で、始業より早く出勤して情報を集めたり、投薬などの準備を始める「前残業」は、時間外勤務として取り扱っていない病院が半数以上ありました。

 

協会ニュース」2015年1月15日号 (日本看護協会)を基に編集部作成

 

 

同じく2012年の調査で、実際に行った時間外勤務に対して、相当の手当が支払われていないと解答した割合も約半数でした。

協会ニュース」2015年1月15日号 (日本看護協会)を基に編集部作成

 

同じ調査で、「納得していない看護師」が離職を考えている割合は58.5%にものぼります。

残業が多いこと、それも暗黙の残業が多いことが、日本人看護師が感じるの働きづらさの一因であることは明らかです。

 

 

日本人看護師が働きづらい環境で、外国人看護師が働けるのか

上記の調査結果を踏まえて、日本看護協会常任理事(当時)の松月みどり氏は、「協会ニュース」でこのように呼びかけています。

(前略)多くの看護現場で、新人職員には時間外勤務をしても勤務時間の申請を認めない不文律がある、という話を聞きます。

また、「時間外勤務が長いのは実務能力が劣るからで、そのような職員に残業代を払うのは不公平だ」という誤った認識が、時間外勤務を申請しにくい職場風土の背景にある場合もあります。

 

新人看護職の健やかな成長のためには、その労働を正当なものとして互いに認め合う組織文化が不可欠です。

命じられた業務の処理に時間がかかったための時間外勤務を認めないことは、明らかな法令違反であり、事実であれば直ちに是正してください。

(「協会ニュース」2015年1月15日号 (日本看護協会)より抜粋)

 

「時間外勤務が長いのは実務能力が劣るからで、そのような職員に残業代を払うのは不公平だ」という誤った認識は、まさに外国人看護師が感じる日本での働きづらさに直結しています。

 

外国人看護師からの取材記事(2016年10月13日付)では、このような内容が伝えられています。

 

(経済連携協定:EPAによる看護師・介護福祉士候補者は、2008年から)現在まで4千人近くが来日して600人以上が国家試験に合格している。

ところが、最近は合格者から「帰国したい」と聞くことが増えた。

実際、約3割が帰国などでEPAの仕組みを離れていた。

(中略)

これまでEPAの制度は日本語の難しさなど試験を受けるまでの大変さばかりに焦点が当たってきた。

(中略)しかし合格者たちは「合格後がさらに大変だ」と口をそろえる。

合格した途端に国の助成金がなくなり、学習支援もないまま「日本人と同等」の仕事を求められる

(中略)

仕事が忙しいのは、みな同じ――。そう強いられる社会の中で、日本人は暮らしている。でも、私たちが普通と思い込んでいる制度や働き方にこそ問題があるのではないか。

合格者たちの挫折は、そう突きつけていると感じた。

 

EPA看護師・介護福祉士 日本変えるきっかけに:朝日新聞アピタルより抜粋。補足・強調は編集部)

 

 

今後、外国人看護師は定着するのか?

2015年10月の調査では、国立大学病院で働く看護師の90%以上が、仕事内容について「とても疲れる・やや疲れる」と回答しています(身体面の疲労・精神面の疲労ともに)。

 

このような環境で、「日本人と同等」の仕事を求められる外国人看護師の疲労はいかほどのものでしょうか。

 

(「国立大学病院で働く看護師の労働状況に関する調査結果:弁護士ドットコム」より編集部作成)

 

外国人看護師が定着しない理由として、制度上のさまざまな問題が指摘されています。

しかし、制度が整ったところで「外国人看護師にとって働きやすい現場」でなければ定着は困難です。

 

そのために、日本人看護師が働きやすい環境になることが優先されるべき課題のように思えます。

【看護roo! 編集部】

 

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