人工呼吸中のネブライザーには、効果があるの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。
今回は「人工呼吸中のネブライザー」に関するQ&Aです。

 

露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)

 

人工呼吸中のネブライザーには、効果があるの?

 

人工気道を有する患者の場合、未挿管患者に比べてエアゾルの到達が少なくなってしまいます。
人工気道におけるさまざまな要因により、リスクに対して効果は得られにくいです。

 

〈目次〉

 

人工気道とネブライザー

人工気道の存在自体が死腔・気流・気道抵抗に影響をもたらすことから、挿管患者の気管内には、乱状気流と高い気道抵抗が生じている。

 

人工気道のほうがエアゾルが届きやすいように感じるが、実際は逆であり、肺内へは薬剤がほとんど到達せず、エアゾルは、回路やチューブ内に水滴として貯留してしまう。

 

ネブライザー効果に影響を与える因子を以下に示す。これらの影響により、肺内へのエアゾルの届きにくさは変わる。

 

  • 気道確保の方法:気管チューブか、気管切開チューブか
  • 人工気道:材質、サイズ、静電気の荷電
  • エアゾルジェネレータ(投与器具)の種類:超音波ネブライザー、ジェットネブライザー、MDI(定量噴霧式吸入)
  • 人工呼吸器のセッティング:一回換気量、呼吸回数、吸気時間
  • その他:人工呼吸器回路の加湿、温度、吸入ガス濃度など

 

人工呼吸中のネブライザーのエビデンス

1加湿目的での使用について

人工呼吸器に使用されている加温加湿器は高性能であり、加湿効率は十分であることから生理食塩液などを加湿目的に使用しても効果はない。

 

通常、吸入療法には「ゆっくり深い呼吸」などが必要であるが、人工呼吸中には難しい。

 

2MDIとの比較

Fullerらの研究では、気管の薬剤沈着はMDIが5.65±1.1%、ジェットネブライザーが1.22±0.4%であった。

 

人工呼吸器装着患者へのエアゾル投与に関しては、ネブライザーよりもシリンダー付きMDIのほうが優れている。

 

ネブライザーによる人工呼吸器への影響

1起こりうるトラブル

  • 人工鼻との併用は禁忌:人工はフィルターである。薬剤が人工鼻に付着して効果が出ないばかりでなく、フィルターの目詰まりによる換気不全を起こす。
  • 回路のリーク:ネブライザー装置を人工呼吸器に組み込むためには、人工呼吸器回路のつけ外しを行う必要がある。その際、接続時にPEEPが解除されたり、接続ミスによるリークが起こって換気量が低下したりする可能性がある。なお、MDI専用のポートが組み込まれている人工呼吸器回路もある。
  • 精度不良:薬液に金属腐食性がある場合、精度不良となる可能性がある。

 

2ネブライザー実施中の観察

換気不良などの可能性があるため、気道内圧や一回換気量のほか、SpO、ETCOなどのモニタリング、呼吸状態を観察する。

 

略語

 

  • MDI(metered-dose inhalers):定量噴霧式吸入
  • PEEP(positive end expiratory pressure ventilation):呼気終末陽圧換気
  • SpO2(saturation of percutaneous oxygen):経皮的酸素飽和度
  • ETCO2(end tidal CO2):呼気終末二酸化炭素濃度

[文献]

  • (1)Fuller HD, Dolovich MB, Chmbers C, et al. Aerosol delivery during mechanical ventilation:a predictive in vitro lungmodel. J Aerosol Med 1992;5:251-259.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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