脳の神経細胞は減っても大丈夫?

『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「脳の神経細胞」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

脳の神経細胞は減っても大丈夫?

ヒトの脳には大脳に数百億個、小脳で千億個、脳全体では千数百億個の神経細胞があり、ヒトの成熟後には1日に10万から20万個の神経細胞が死滅しています。

 

神経細胞はほかの組織の細胞と違い、分裂して増えることはありません。しかしこれでは、いずれ神経細胞の大半が脱落消失するのでは? と心配になりますね。 

 

結論からいうと、その程度の減り方であれば問題はありません。

 

今、もし1日20万個の神経細胞が死滅していくとすると、90歳までに死滅する神経細胞の数は、次のような計算が成り立ちます。

 

200,000×365×90=6.57×109 

 

一方、内の神経細胞を千億個とすると、その数は次のように表せます。

 

100,000,000,000=1011 

 

従って、90歳までに死滅する神経細胞は、全体の6%余りとなります。

 

脳にある千億個の神経細胞のうち、実際に使っているのは数パーセントに過ぎないといわれています。

 

脳の神経細胞は多少減少しても生命活動に影響が出ることはありませんし、むしろ、無駄なエネルギーを使わないようにするために、不必要な神経細胞が消失していくといわれます。 

 

しかし、このような自然な減り方ではなく病的な減り方をすると、生命活動に大きな影響が出てきます。

 

アルツハイマー病型認知症は神経細胞が次々に脱落していく病気ですし、脳血管障害による認知症は出血や梗塞によって神経細胞が部分的に死滅することで生じます。死滅した神経細胞が多ければ多いほど、あるいは重要な部位の神経細胞が死滅すればするほど、多くの障害が現れてきます。

 

MEMOアルツハイマー型認知症

脳表面に現れる老人斑、神経原線維変化、神経細胞の脱落を特徴とする疾患。海馬が障害され記憶障害、認知障害などが出現し、さらに多彩な周辺症状(幻覚、妄想、徘徊、抑うつ、異食、暴力行為など)も現れます。

 

MEMO認知症

アルツハイマー型認知症や脳血管障害により、認知機能が障害された状態を認知症といいます。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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