糖質の代謝はどのように行われるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「糖質代謝」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
糖質の代謝はどのように行われるの?
グルコース(ブドウ糖)はエネルギー源として利用されるとともに、貯蔵型のグリコーゲンに形を変えて肝臓や筋肉に取り込まれます。
ストックしたエネルギーのもとを取り出すためには、①解糖系の反応、②クエン酸回路(TCA回路)、③電子伝達系という3つの段階が必要です(図1)。
図1グルコースの分解とクエン酸回路
①の解糖系ですが、これはグルコースをピルビン酸(あるいは乳酸)にまで分解する反応です。この時、2モルのATPも生成され、②のクエン酸回路における反応のエネルギー源になります。通常、グルコースからピルビン酸になるまでの反応は10段階で、乳酸までの反応は11段階です。こうした反応に係わっているのが、10種類の酵素です。
②の段階のクエン酸回路をみてみましょう。解糖系で生まれたピルビン酸は、酸素と反応してアセチルCoA(アセチル補酵素A)になり、クエン酸回路に入ります。クエン酸回路では、クエン酸、シスアコニット酸、イソクエン酸と代謝を続けながら回路を一巡し、再びクエン酸に合成されます。クエン酸回路は、理論的にはピルビン酸(グルコース)と酸素が供給される限り繰り返し反応が続き、1回転すると2モルのATPが生み出されます。
実は、クエン酸回路では別の物質も生み出されています。NADHとFADH2という補酵素です。この補酵素が細胞内のミトコンドリアの内膜に入ると、内膜で酸化される過程で生じるエネルギーにより、ADPにリン酸を1つつけてATPとする反応が行われます。これを電子伝達系(酸化的リン酸化)と呼んでいます。
①〜③の反応により、38モルという大量のATPが生成されます。
MEMOモル(mol)
ある物質のグラム当量のこと。1g当量=1mol=6.02×1023個(アボガド口数)の原子または分子。グラム当量とは原子量または分子量にグラムをつけた量です。
MEMOミトコンドリア
細胞内にあるエネルギー産生のための細胞小器官。1つの細胞内に約2000個もあり、内膜の内側のマトリックスには、クエン酸回路、脂肪酸のβ酸化、アミノ酸代謝に係わる酵素があります。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版