トリアージ(START法)|知っておきたい臨床で使う指標[9]

臨床現場で使用することの多い指標は、ナースなら知っておきたい知識の一つ。毎回一つの指標を取り上げ、その指標が使われる場面や使うことで分かること、またその使い方について解説します。

 

根本 学
埼玉医科大学国際医療センター 救命救急科診療部長

 

START法

トリアージ(Simple Triage and Rapid Treatment Triage)

 

トリアージとは、「傷病者など治療を受ける必要のある人々の、診療や看護を受ける順番などを決定する診療前の1つの過程」です。
「トリアージ」と聞くと、災害や多数傷病者発生事案での使用を想像してしまいがちですが、日常の救急外来や初診受付、あるいは救急現場、電話相談などで幅広く使用されています。
今回は、「災害時」や「多数傷病者発生事案」で用いられているSTART Triage(以下、START法)について説明します。

 

〈目次〉

 


 

START Triage

 

START法、トリアージ、

 

 

START法カテゴリー

 

スタート法カテゴリー トリアージカテゴリー
 

 

 

START法を主に使う場所と使用する診療科

例えば、50人乗りの大型観光バスが山間部の道路でカーブを曲がりきれず、道路から飛び出し、2、3m下の崖に落ちたことを想像してください。

 

事故の状況を最初に知るのは警察か消防です。したがって、事故現場には警察官もしくは消防官が最初に到着します。そこで、始められるトリアージを「現場トリアージ」といいます。

 

次に、現場に応急救護者が設置され、要請を受けた医師・看護師によるトリアージが始まります。これを「救護所トリアージ」といいます。

 

その後、搬送順位を決定したり、病院に到着してから手術の順番を決定したりする必要があります。それらを行うのもトリアージです。
このように、トリアージはさまざまな場所で行われ、緊急事態に対応するすべての職種が行うことになりますが、通常は、救急救命士、看護師、医師が担当しています。

 

ちなみに、トリアージを行った場合、基本的に「トリアージタッグ」(図1)を使用し、どの区分の傷病者なのか、ひと目で分かるようにします。
このトリアージタッグは、その後、トリアージを行う度に同じタッグに情報を記入していきます。途中で傷病者の状態が悪くなった場合はその区分までもぎり部分を切り離し、状態が軽くなった場合は新しいトリアージタッグを着け、1枚めに大きく☓をつけましょう。

 

 

図1トリアージタッグ

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なお、トリアージタッグをつける部位は決まっており、原則は右手首関節部ですが、その部位が負傷している場合は、左手首関節部、右足関節部、左足関節部あるいは首、とつける部位を変えましょう。

 

memo「トリアージ」の由来

トリアージ(triage)は、フランス語の“trier”の名詞形であり、もともとは収穫されたコーヒー豆やぶどうを選別する際、また商人が羊毛を品質別に選り分けるときに使った言葉とされています。

 

 

START法で何がわかる?

「災害時」や「多数傷病者発生事案」で用いられているSTART法を使うことで、傷病者の緊急度、重症度をある程度知ることができます。

 

災害時や多数傷病者発生事案では、「最大多数の傷病者に、最良の医療を提供」しなければなりません。そのためには、「平時であっても、救命の可能性が極めて低い傷病者」と、「すぐには治療する必要がない傷病者」を識別して、これらの傷病者に対する治療を諦める、あるいは後回しにすることが大切です。そこでSTART法が一般的に用いられています。

 

 

START法をどう使う?

最初に、「自分で歩けるかどうか」を判断します。
歩ければ、「負傷があるか、具合が悪いかどうか」を確認し、なんともなければ「無傷」と判断します。

 

負傷があったり、具合が悪かったりした場合は「」と判断します。
この「」は「急いで医師による処置を受ける必要がない傷病者」を意味しています。

 

歩けない傷病者に対しては、「呼吸」を確認します。
呼吸がなければ気道確保をしましょう。それでも呼吸がなければ「」と判断します。この「」は「明らかに死亡しているもの、あるいは平時でも救命できないほどの最重症外傷」を意味しています。

 

呼吸があれば、脈拍数、意識状態の順に評価し、異常があると判断した時点で「」と評価します。
例えば、呼吸で異常があると判断したら、直ちに「」と評価して脈拍数や意識状態は確認しなくて良いということです。
この「」は「生命危機が迫っており、比較的短時間内に行える処置・手術で救命できる可能性が高い傷病者」を意味しています。

 

最後に、呼吸、循環(脈拍)は問題なく、意識状態にも異常がない、でも自力で歩行することができない傷病者が残りますが、これを「」と評価します。
この「」は「処置・手術などが必要であるが、時間の猶予が許される傷病者」を意味しています。

 

 

START法を実際に使ってみよう

事例

 

以下の傷病者をSTART法を使ってトリアージしてください。

 

傷病者A:20歳代の男性。呼吸、脈拍数に問題はないが呼びかけや痛み刺激に応じない。
傷病者B:60歳代の男性。意識はなく、気道確保を実施しても呼吸は確認できない。
傷病者C:20歳の女性。座り込んで興奮し、やや不穏状態。目立った外傷はないが、頻呼吸(32回/分)がある。
傷病者D:19歳の男性。意識は清明。腰部痛と両下肢の脱力と強いしびれ感を訴えているが呼吸数や脈拍数は正常で、指示に応じるが歩行はできない。
傷病者E:21歳の男性。意識はほぼ清明。皮膚は蒼白。湿潤、冷汗があり、呼吸苦を訴えており、橈骨動脈で脈拍がしっかりと確認できない。

 

答え

傷病者Aは、呼吸や脈拍に問題はないが「呼びかけに応じない」ことから「意識障害あり」と判断し、となる。
傷病者Bは、気道確保を行っても自発呼吸がないことから、となる。
傷病者Cは、頻呼吸(32回/分)があるので初回の判断はとなる。
傷病者Dは、呼吸、脈拍は正常で指示にも従えるが歩行できないため、となる。
傷病者Eは、意識はしっかりしているが、「皮膚は蒼白。湿潤、冷汗がある」という状態からショック様であると思われ、橈骨動脈で脈拍がしっかり確認できないことからとなる。

 

→START法を確認

 

前述したようにトリアージはさまざまな場面でさまざまな職種によって使用されています。
その基本は、災害時に広く使用されているSTART法ですから、しっかりと理解し、使用できるようにしておきましょう。

 


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