うつ尺度|精神科系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、うつ尺度について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

うつ尺度検査とはどんな検査か

精神疾患は目に見えないことが多く、身体的検査結果だけでは判断が困難である。

 

そのため、うつ病の症状について、患者が質問紙に解答したり(自記式)、医療者が直接質問内容を聴取して(面接式)症状を数値化し評価する。目的に応じて適切な尺度を用いることが重要である。

 

うつ尺度検査の目的

気分障害である抑うつのスクリーニング、重症度評価、症状の把握、診断、治療の効果などを判断するための検査である。

 

うつ尺度検査の実際

ハミルトンうつ病評価尺度( Hamilton Depression Rating Scale;HDRS)

基本的17項目(抑うつ気分、罪悪感、自殺念慮、入眠障害、熟眠障害、早朝睡眠障害、仕事と興味、精神運動抑制、落ち着き、不安、身体的不安、消化器症状、疲労や体力低下などの身体症状、性欲、心気症、体重減少、病識)を3〜5の選択肢を用いて採点する(質問紙式)。

 

必要に応じて17項目以外に追加項目を加えた尺度も用いられる。

 

モントゴメリー・アスバーグうつ病評価尺度(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale;MRDRS)

はじめに症状に関する大まかな内容を聴取し、詳細な精神症状を中心とした抑うつ症状について質問していく(面接式)。

 

うつ病を評価するための10項目(外見に表出される悲しみ、言語化される悲しみ、心的緊張、睡眠、食欲、集中力、制止、感情や興味の減退、悲観的思考、自殺念慮)について0〜6点で評価する。

 

うつ尺度検査前後の看護の手順

検査前の看護

実際の検査は医師の診察の中で行われるが、記入方法の説明や安心して検査を受けられるような環境調整などが重要である。

 

検査後の看護

抑うつ気分の評価は、セルへケアへのアプローチを考える際に重要な情報となり得る。うつ尺度の結果とその他に観察した情報をアセスメントし看護ケアにつなげる。

 

うつ尺度検査で注意すべきこと

質問紙式では、解答するにあたり選択肢に当てはまるものがないというケースが生じることがある。

 

その際は、今の自分の気持ちに一番近いと思うものを選択するよう説明する。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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