細胞診検査|検体検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、細胞診検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

細胞診検査とはどんな検査か

細胞診検査とは患者より細胞を採取し、悪性細胞の有無、推定される組織診断を細胞学的に診断する検査である。

 

検査材料は婦人科スミア、喀痰、尿、乳腺などの穿刺吸引・擦過物など多種多様である。

 

細胞診検査の目的

細胞診検査の目的は採取された細胞の中に、悪性細胞があるかないか、推定される組織診断は何かなどについて診断することである。

 

  • 患者への負担が少なく繰り返し検査ができる利点がある。
  • 子宮癌検診、肺癌検診など癌検診では主役となっている。

 

細胞診検査の実際

  1. 直接塗抹検体:女性性器からの塗抹検体、気管支鏡擦過検体、肺や乳腺など腫瘍穿刺吸引検体。
  2. 液状検体:胸腹水、尿など。
  3. その他:喀痰など。
  • それぞれの材料に応じた検体処理を行い、95%エタノールで固定し、パパニコロー染色標本を作製する。
  • 細胞検査士がスクリーニングを行い、細胞診専門医が診断をする。

 

細胞診検査の採取法と注意点

1)直接塗抹検体

スライドガラスに直接検体を塗抹したら、乾燥しないよう速やかに(1秒以内)95%エタノールに入れ固定する。

 

2)液状検体

  • 滅菌スピッツなどの容器に入れ、検査室に提出する。採取した時点から細胞は壊れていくので検体は放置しない。
  • 尿は、早朝尿より随時尿(新鮮尿)のほうがよい。

3)その他

  • 喀痰は早朝痰がよく、うがいをしてから採取してもらう。

 

細胞診検査の報告様式

わが国ではこれまでパパニコロウ分類(ClassⅠ〜Ⅴ)が使われてきたが、種々の問題から臓器ごとに新しい報告様式が作成されつつある。子宮頸部細胞診は日母分類からベセスダシステム2001に準拠した“産婦人科医会分類(医会分類)”となった(表12)。乳腺細胞診では(表3)の報告様式となっている。

 

表1子宮頸部細胞診結果:扁平上皮系

子宮頸部細胞診結果:扁平上皮系

 

表2子宮頸部細胞診結果:腺細胞系

子宮頸部細胞診結果:腺細胞系

 

日本産婦人科医会:ベセスダシステム2001準拠子宮頸部細胞診報告様式(通称:ベセスダシステムあるいは医会分類)

 

表3細胞診の報告様式(乳癌取扱い規約)

細胞診の報告様式(乳癌取扱い規約)

 

細胞診検査に関するQ&A

Q1.病理組織検査と細胞診検査はどこが違うの?

A.病理組織検査は組織片(肉の塊)として病変部から採取した検体(組織片)を検査します。

 

一方、細胞診検査は組織検査ができない、例えば喀痰、尿、穿刺液中の剥離した細胞や子宮癌検診などでの子宮組織を擦過して得た検体(細胞)が検査の対象となります。組織検査、細胞診検査ともに特性がありますから、それぞれの目的に応じて使い分けます。

 

細胞診検査は安価で患者への負担が少ない検査なので、多くの悪性腫瘍のスクリーニング検査として行っています。

 

一方、組織検査は組織片(塊)で採取されるため、癌の広がり(横方向)と深達度(深さ・縦方向)の二次元で病変をとらえることができます。病変の全体像をとらえることが可能なので最終診断となり、とても重要な検査です。

 

Q2.病理組織検体はすべてホルマリン瓶に入れて検査室に提出すればいいの?

A.通常の病理組織検査であればホルマリン固定で大丈夫です。ただし、ホルマリン固定をしてはいけない検査もあります。例えば、電子顕微鏡検査はグルタルアルデヒドを用います。手術中に行う、術中迅速組織検査は凍結標本を作製しますから、何も固定しない生のままで提出してください。特定の目的がある場合には、特殊な固定液を使用することもありますから、適時、病理検査室に問い合わせることをお勧めします。

 

Q3.時間外に採取した検体はどうしたらいいの?

A.ホルマリン固定の組織検査検体なら、そのまま室温で保管します。組織はホルマリンで固定されますから腐ることはありません。

 

細胞診検査は検体を採取した時点から細胞は壊れていきますから、時間外の検体採取はお勧めできません。やむをえない場合は冷蔵庫に保管してください。冷蔵庫で保管が可能な検体は、喀痰、胸水、腹水です。冷蔵庫保管ができない検体は、髄液、尿、胆汁、膵液です。

 

婦人科の塗抹検体のように、直接スライドガラスに塗抹して95%エタノールに固定してある検体は、室温保管で大丈夫です。

 

Q4.どうして子宮癌検診は30歳以上から20歳以上に引き下げられたの?

A.近年、子宮頸癌の罹患のリスクが若年層に上昇しており、それが性行為によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染の機会の増加に起因することが認識されたためです。

 

しかし、前癌病変から子宮頸癌への進展は遅く、しかも早期発見、早期治療を行えば、子宮を残し妊娠も可能です。皆さんに子宮癌検診を勧めてください。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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