検査後、点滴を60→120h/mLへ口頭指示を受け実施。翌日も点滴速度はそのままにしたが、実は翌日の点滴指示は60h/mLとなっていた!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんの検査後、点滴を60→120mL/hへ口頭指示を受け実施し、翌日も点滴速度はそのままにしたが、翌日の点滴指示は60mL/hとなっていた場合について解説します。

上門 大介

那覇市立病院集中治療室
看護師

 

 

患者の検査後、点滴を60→120mL/hへ口頭指示を受け実施。翌日も点滴速度はそのままにしたが、実は翌日の点滴指示は60mL/hとなっていたことに焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

日頃から患者さんにとって必要な水分量を計算する癖をつけましょう。
輸液の種類によって起こりうる合併症の頻度が変わることを理解しましょう。
細胞外液補充液の大量・急速投与ではNPPVによる呼吸管理も医師と相談しましょう。

 

POINT
  • 輸液の投与は日常的に行われる診療の補助の1つです。
    輸液の速度や量は医師の指示のもと決定されることが多いと思います。
    しかし、輸液を行う意図や必要量を考えずに行っていると“痛い目”にあうことがあります。

 

 

起こった状況

症例

患者Aさんは消化管出血の疑いで精査目的に入院となりました。

入院後は飲食が禁止され、点滴(60mL/h)で必要な水分量を補っていました。

 

入院翌日、造影CTを行うことになりました。

担当医師より「検査前に輸液速度を120mL/hへ変更しておいて」と担当看護師へ声をかけられました。

 

造影CT終了後も飲食の開始について指示がなかったため担当看護師は輸液の速度を120mL/hのままにしていました。

 

翌日、Aさんより「点滴がなくなっているよ」とナースコールがありました。

新しい点滴へ変更しようと注射箱の中を確認すると、当日処方分の点滴は投与し終えていました。

 

不足分の点滴処方を担当医師へ依頼すると、「1日に必要な量は処方してある。もう一度確認してください」と返答がありました。

不思議に思い処方箋を確認すると、“60mL/h”と記載されていました。

 

 

どうしてそうなった?

患者さんに必要な水分量や輸液速度を変更した医師の意図がわかれば、翌日の指示を見落とすことはなかったかもしれません。

 

1 水分投与量の簡易式

私たちの水分投与量は体重当たり30〜40mL/日で計算されます

 

50kgの患者さんの場合1500〜2000mL/日が必要な水分量だとすると、62.5〜83.3mL/hが1日の投与速度になります。

 

 

どう切り抜ける?

1 体液分布と輸液製剤の違いによる影響を理解する

1)輸液の分布

私たち人間の体液(体重の60%)は細胞内液(40%):間質液(15%):血漿(5%)に分かれています。

 

うち、血管内の水分量は血漿にあたります。

 

点滴で体内に流入した水分量は、電解質の濃度によって分布が異なります。

 

輸液製剤の種類による分布の違いを表1に示します。

 

表1輸液の種類別体内分布と過剰投与で起こりうる合併症

輸液の種類別体内分布と過剰投与で起こりうる合併症を表した表

 

2)細胞外液補充液

生理食塩液や乳酸リンゲル液など細胞外液補充液は、その名の通り細胞外に分布します。

 

細胞外液は血漿(5%)と間質液(15%)に分かれるため、血管内にとどまる輸液量は投与した量の1/4となります。

 

具体的には生理食塩液を500mL輸液すると125mLが血管内にとどまることになります。

 

この特徴から、血管内容量の増加や前負荷の増大を招きやすく、うっ血性心不全や肺水腫を合併する危険性があります。


患者さんの呼吸状態やバイタルサインからうっ血性心不全や肺水腫が疑われた場合、胸部X線撮影や心臓超音波検査などを行うことがあります。

 

治療としては、利尿薬の投与やNPPV(非侵襲的陽圧換気:non-invasive positive pressure ventilation)(図1)による人工呼吸管理が必要になることもあります。

 

図1NPPV(non-invasive positive pressure ventilation)とマスク

NPPV(non-invasive positive pressure ventilation)とマスクの写真

(PHILIPS V60 ventilator)

 

症状に乏しい場合でも、血清電解質異常や、アシドーシスを来すことがあるため、血液検査についても医師へ相談する必要があります。

 

3)5%ブドウ糖液

糖は自由に細胞内、細胞外を通過することができるため、投与されたブドウ糖液は均等に分布します。

 

つまり血管内にとどまる量は全体液(60%)のうちの血漿(5%)ということになります。

 

例えば、5%ブドウ糖液を500mL輸液した場合、血管内にとどまるのは1/12の約42mL程度ということになります。

 

5%ブドウ糖液の大量・急速投与では、血管内に分布する割合が少ないため、細胞外液補充液に比べるとうっ血性心不全や肺水腫を来す可能性は低いと考えられます。

 

しかし、細胞内への分布量が2/3と多いため、浮腫などの細胞内浮腫が問題となります。

頭蓋内圧亢進症状や神経脱落症状の有無に注意します。

 

緊急的な対応や検査が必要でないと判断された場合、今後の輸液プランを医師と相談します。

発覚した時点で点滴が終了となることもあります。

 

 

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引用文献 閉じる

1) 日本静脈経腸栄養学会編:静脈経腸栄養ガイドライン 第3版.照林社,東京,2014:143.

参考文献 閉じる

1) 道又元裕監修:超急性期の輸液管理Q&A.重症集中ケア 2011:10(7):17-19,22-25,39-41.

2) 道又元裕編著:これならわかるICU看護.照林社,東京,2018:56-59,134-136.

3) 日本集中治療医学会看護テキスト作成ワーキンググループ編:集中治療看護師のための臨床実践テキスト.真興交易医書出版部,東京,2018:29-33.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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