患者さんが胸腔ドレーンを自己抜去してしまった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんが胸腔ドレーンを自己抜去してしまった場合について解説します。

上門 大介

那覇市立病院集中治療室
看護師

 

 

患者が胸腔ドレーンを自己抜去してしまい焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

固定の評価と患者さんの管理能力の把握が胸腔ドレーンの安全管理には重要です。
自己抜去が起こってしまった際には、自然呼吸か人工呼吸かで対応が変わることを知りましょう。
ショックの可能性が少しでも疑われる場合は、必ず緊急性が高いことも医師へ伝えましょう。

 

POINT
  • 胸腔ドレーンの目的は、胸腔内に貯留した空気や液体を排出することにより虚脱した肺の再膨張を促すことにあります。
    胸腔ドレーンの自己抜去は再膨張した肺が再び虚脱することで、場合によってはショックを来す危険性があります。
    そのため、密な観察とトラブルシューティングの方法を念頭に置く必要があります。

 

 

起こった状況

症例

患者Aさんは右胸の痛みと呼吸困難を主訴に受診しました。

胸部X線写真から右の気胸と診断され、胸腔ドレーンを挿入しました。

 

胸腔ドレーン挿入後、時々動きに伴う痛みはありましたが、呼吸困難は徐々に軽減していました。

 

入院当日の夜、Aさんの病室からナースコールが鳴り、訪室すると胸腔ドレーンを握ったAさんがベッドに座っていました。

 

Aさんに何があったのか確認すると、「寝返りをうつときに“何か”が当たって痛かったので引っ張ると抜けてしまった」と息苦しそうに答えました。

 

 

どうしてそうなった?

ドレーン管理において、「固定の評価」と「患者さんの管理能力」を把握しておくことは非常に重要です。

 

この2点を疎かにしてしまうと、安全なドレーン管理は難しくなります。

 

1 固定方法と評価

固定用テープの貼り方や固定位置、補強を怠ると、固定が不十分になるだけでなく、患者さんが不快感を覚えてドレーンの自己抜去に至る危険性があります。

 

1)胸腔ドレーンの固定方法

ドレーン固定のためには固定用テープと補強用テープを準備します。

ドレーンのテープ固定はΩ留めで行い、切れ込みを入れたテープで補強します(図1)。

 

図1ドレーン固定の例(Ω留め)と補強テープの使用方法

ドレーン固定の例(Ω留め)と補強テープの使用方法を示している写真

 

固定は1箇所だけでなく、最低2箇所以上で行い、固定テープとドレーンの境に油性マジックなどでマーキングをしておきます(図2)。

 

図2固定位置のズレを確認するマーキングの例

固定位置のズレを確認するマーキングの例を示した写真

 

マーキングのズレがある場合は、固定テープに剥がれがないか、ドレーンにテンションがかかっていないか、患者さんが過剰に手で触れていないか確認し、固定方法の見直しを行います。

 

2 患者さんの管理能力

患者さんが胸腔ドレーンの存在を認識しその役割を理解していることが大切です。

 

繰り返し必要性や注意点を説明するだけでなく、患者さん自身の目で胸腔ドレーンの存在を認識してもらいます。

 

どう切り抜ける?

1 報告時に把握しておきたい症状

酸素化の悪化や頻呼吸、呼吸困難などの呼吸状態はもちろんですが、気管の偏位、頸静脈の怒張、皮下気腫の有無に加え、頻脈血圧低下などの緊張性気胸の症状がないか評価します。

 

症状を認める場合は、胸腔ドレーンの自己抜去の報告とともに緊急性が高いことも医師へ伝える必要があります。

 

2 呼吸の条件による対応の違い

1)自発呼吸の場合

通常、胸腔内は陰圧となっており、その条件下で胸腔ドレーンの自己抜去が起こると、大気との圧の差で抜去部から空気が流入することになります。

 

そのため、自己抜去が発覚した際には、医師への報告とともに抜去部をフィルムドレッシング等で覆い、胸腔内への空気の流入を遮断する必要があります。


2)人工呼吸管理を行っている場合

自発呼吸との違いは、人工呼吸管理中の患者さんの場合、抜去部から空気の流出を塞いでしまうと、胸腔内圧が上昇しつづけ、場合によっては心外閉塞・拘束性ショックを来す可能性があることです。

 

人工呼吸管理中の患者さんでは、胸腔からの空気の流出を妨げないように、3辺テーピング法(図3)で抜去部の保護を行います。

 

図33辺テーピング法

3辺テーピング法を表した写真

抜去された創部を粘着性のないフィルムで覆う。
3辺をテープで固定し、1辺を排気、排液用に開放しておく。
3辺をテープで固定することによって吸気の際にはフィルムが吸気の流入を防ぎ、呼気には胸腔内に流入した空気を創部から排気することができる。

 


3)一部抜去の場合

胸腔ドレーンの抜去が一部の場合、自発呼吸ではドレーンをクランプし、患者さんの状態を観察します。

 

人工呼吸管理を行っている場合はドレーンをクランプせず観察を行います。
 

 

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参考文献 閉じる

1) 月刊ナーシング編集部編:今聞きたい術前・術後ケアQ&A.月刊ナーシング 2016:36(13):74-77.

2) エキスパートナース編集部編:これならうまくいく! 看護ケアのコツ&わざ.エキスパートナース 2017:33(6):70-71.

3) 清水孝宏監修:3年目ナースのための「経験知」レベルアップ講座.月刊ナーシング 2020:40(7):65.

4) 道又元裕編著:これならわかるICU看護.照林社,東京,2018:26-27.

5) 岡元和文,道又元裕編:重症外傷患者の管理─基本アルゴリズムと部位別外傷医療&ケア─.重症患者ケア 2016:5(3):356-358.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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