クリティカルな患者を支える家族の看護

『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「クリティカルな患者を支える家族の看護」について解説します。

 

明石靖子
市立青梅総合医療センター 看護副師長 緩和ケア認定看護師

野村智美
市立青梅総合医療センター 看護副師長 リエゾン精神看護専門看護師

 

 

 

Key point
  • 危機的な状態にある家族へのかかわりが、今後の治療同盟に影響する。
  • クリティカルな患者の看護は、家族の心理反応や社会的状況のアセスメントも含まれる。

 

 

クリティカルな患者を支える家族看護の目的

患者だけでなく家族も心理的・身体的危機状態のため、家族のニーズにあった援助を行うことができる。

 

 

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クリティカルな患者の家族の特徴

患者の家族の心理状態

  • 家族は不安、悲嘆、恐怖、うつ症状などの情緒的症状や疲労などの身体的症状を呈すといわれる1)

 

 

患者の家族のニーズ

  • 家族にとって最も高いニーズは、患者に対する希望である。
  • 次にタイムリーな患者情報、患者に対する最善策の提供、医療者・病院との信頼関係、医療者・社会資源等の支援と続く。
  • 患者の治療過程によって、家族のニーズは変化していくことに留意する。

 

 

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クリティカル患者の治療過程

搬送時

  • 三次救急では、基本的に重症度によって施設が選定・搬送される。
  • かかりつけでない未知の医療施設に搬送されることもあるため、馴染みのない医療施設では不安が生じやすい。
  • さらに、搬送時には患者の救命が優先され、家族や周囲への配慮は不十分になりやすい。
  • 家族への対応は意識的に行うよう心がける。
  • また、救命に必要な治療処置が円滑に行われるよう、誰にどの程度伝えるかを含め、他部門との連絡・調整を行うことも看護者の重要な役割である。

 

 

処置中(ひと段落した後)

  • 家族は不安や恐怖のなか待機しているため、看護者は意識的に家族に接しコミュニケーションを図る。
  • 病状の説明前は不必要な情報収集をせず、ある程度家族が精神的に安定したと判断してから行う。
  • その後、施設の機能を伝え、了承を得てから入院時のオリエンテーションと情報収集を行う。
  • その際のコミュニケーションから家族の心理状態を観察・把握する。
  • ICU 医療者における、特定のコミュニケーション技術は家族の心理症状に影響を及ぼすことが考えられ、“VALUE”2)のようなコミュニケーション手法を使用し、家族から発言を促がすことは勧められている(表1)。

 

表1VALUEによるコミュニケーション

VALUEによるコミュニケーション

 

  • 情報収集後、得られた患者と家族に関する情報から看護計画を立案し、患者および家族にあったケアプランを作成する。

 

 

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病状説明、救急・ICU滞在中

  • 病状の説明は医師によって行われるが、説明時には看護者が同席することが望ましい。
  • 患者の病状と説明の内容を把握し、家族の反応を観察する。
  • その情報を看護スタッフ間で共有し、統一した姿勢で接する。
  • 家族が得ている情報が正確で適切な内容であるか、不十分もしくは理解不足がないかといったことを確認し配慮することは、看護師の重要な役割である。

 

 

退室時

  • 病状が回復し、希望に満ちた状態で退出することがいちばん望ましいが、大きな機能障害が残った場合、これまでとは状況が一変する。
  • 家族生活は機能不全が生じ、経済問題をはじめこれまで表在しなかったさまざまな問題が噴出し、これに費やされる家族の時間とエネルギーは計り知れず、患者の療養生活にも大きく影響するため、社会資源を活用できるような連携や指導を行う。

 

 

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引用・参考文献 閉じる

1)McAdam J L, et al. Symptom experiences of family members of intensive care unit patients at high risk for dying. Crit Care Med, 2010,38( 4 ):1078~1085

2 )A Lautrette et al.A Communication Strategy and Brochure for Relatives of Patients Dying in the ICU.N Engl J Med 2007; 356:469-478

 

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版

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