脳・神経系（78問）　状況設定問題

第107回午後95問

次の文を読み問題2に答えよ。
Aさん（52歳、女性）。自宅で突然激しい頭痛と悪心が出現し、自力で救急車を要請し、搬送された。ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅰ-2で頭痛を訴えており、発汗著明であった。瞳孔径は両側 3.0mm。上下肢の麻痺はない。Aさんは頭部CTでくも膜下出血と診断され、ICUに入室した。入室時のバイタルサインは、体温 36.8℃、呼吸数24/分、脈拍92/分、血圧156/98mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉95％であった。

問題2
Aさんは脳血管造影で右中大脳動脈に動脈瘤が確認され、脳血管内治療（コイル塞栓術）が実施された。その後、Aさんは意識清明で問題なく経過していたが、手術後6日から刺激に対する反応が鈍くなり、閉眼していることが多くなった。意識レベルはジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉 Ⅱ-10。左上肢はBarré〈バレー〉徴候陽性を示した。

Aさんに生じていることとして最も考えられるのはどれか。

1.　けいれん発作
2.　脳血管攣縮
3.　せん妄
4.　再出血
5.　水頭症

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解答・解説

1.　けいれん発作: けいれん発作は突然不随意的な運動が生じる現象で、Aさんにけいれんは生じていないため、けいれん発作は考えにくい。
2.　脳血管攣縮: くも膜下出血の3大合併症の1つである脳血管攣縮は脳虚血を生じさせ、脳梗塞が出現することもある。くも膜下出血発症後72時間以降から2週間ほどは注意が必要である。意識レベルの低下と左上肢のバレー徴候が陽性であることから、Aさんには脳血管攣縮が生じていると考えられる。
3.　せん妄: せん妄とは意識混濁に幻覚が加わり、不安や興奮を伴っている状態で、夜間などに発症しやすい。Aさんにはせん妄による症状は出現していないため、せん妄は考えにくい。
4.　再出血: くも膜下出血の3大合併症の1つである再出血は、発症後24時間以内に起こることが多い。Aさんは術後6日目であり再出血は考えにくい。
5.　水頭症: くも膜下出血の3大合併症の1つである正常圧水頭症は発症後数週～数か月後に起こる。認知症や尿失禁、歩行障害などが生じるが、Aさんにはこれらの症状はないため、水頭症は考えにくい。