脈拍測定の手順・観察・報告のコツ|いまさら聞けない!ナースの常識【31】

執筆:中嶋ひとみ
(新東京病院 看護部、集中ケア認定看護師)

 

脈拍測定の流れ

脈拍測定の流れ 1.示指・中指・薬指を橈骨動脈に軽く当てる 2.脈拍を触知し、測定する 3.左右差の確認 4.観察した点を整理し、報告・記録する

 

脈拍測定の流れは、上記4つの手順となります。1つずつ説明していきます。

 

 

1.示指・中指・薬指を、撓骨動脈に軽く当てる

橈骨動脈での脈拍触知の方法を説明するイラスト。患者さんのベッドサイドに行く前に、自分の腕で練習してみると安心です。

示指・中指・薬指を揃え、寝かせた状態で、患者さんの撓骨動脈に軽く当てます。

 

このとき、指を立てないように注意しましょう。指に力が入って感覚が鈍くなり、脈が触れづらくなってしまいます。

 

 

撓骨動脈で脈拍測定をするのはなぜ?

理由は3つあります。
①橈骨動脈は皮膚に近い部分にあり、脈拍を触知しやすい
②患者さんに、衣服を脱いでもらったり、姿勢を変えてもらう必要がない
③緊急時にも速やかに測定できる

 

 

なぜ示指・中指・薬指で測定するの?

理由は2つあります。
①母指は太く、測定者自身の脈拍と患者の脈拍が混同してしまう
②3本指で測定することで、より正確に脈拍を測定できる
→リズム不整・脈の大小・血管の弾力性もわかりやすい

 

 

注意点

麻痺側では測定しない!(片麻痺のある患者さんの場合)

麻痺側は筋のポンプ作用・血管運動が低下しています。健側より循環血液量が低下していて、正しい脈拍が測れない可能性があります。

 

 

2.脈拍を触知し、測定する

秒針付き時計等を使用し、原則1分間測定します。

特に結滞(脈が飛ぶこと)などがある場合や、脈拍が速い小児の患者さんは、必ず1分間測定します。

 

※容態が安定していて、不整脈のない成人の患者さんは、15秒または30秒測定し、1分間あたりの脈拍数を算出する場合もあります。

 

脈拍触知観察の3項目

脈拍数:成人の脈拍正常値=60~80回/分
リズム:リズム不整はあるか
大きさ:強弱不整はあるか
※前回と比較し、いつもと違う所見・その患者さんにとって初めての所見があったら報告する

脈拍の観察について詳しくは→脈拍測定の観察ポイント

 

 

患者さんの拍動か、自分の指先の拍動か、迷ってしまうときはどうしたらいい?

患者さんの脈が微弱なときは、患者さんの拍動と、自分の指先の拍動を混同してしまうことがあります。
下の図を参考に、患者さんの脈拍を測定しながら、反対の指で自分の橈骨動脈を測定すると、区別しやすくなります。

患者さんの脈と、自分の脈が混ざってしまうときに、患者さんの脈拍と自分の脈拍を同時に触知する方法を説明するイラスト。

 

 

3.左右差を確認する

左右の撓骨動脈に同時に触れて、左右差がないか確認します。

 

左右差を確認するのはなぜ?

血流障害の有無を評価するためです。
※左右差がある=血流が乏しい(血流障害)のサイン
→閉塞性動脈硬化症、大動脈解離などの可能性あり

 

Point

その患者さんにとって、脈拍の左右差が初めて発見された場合は、報告が必要です。
先輩看護師に一緒に確認してもらうのも一つの方法です。

 

 

脈拍測定の観察ポイント

1.触知した脈拍数が基準値内か確認する

患者さんの年齢によって、脈拍数の基準値は異なります

基準値を正確に把握することは、異常にすぐに気づくために重要なポイントです。

 

表1年齢による脈拍数の基準値(目安)

年齢 脈拍数(回/分)
新生児 120~140
乳児 110~130
幼児 100~110
学童 80~90
成人 60~80
高齢者 60~70

 

 

2.60回/分以下の徐脈のとき

徐脈が確認されたときは、血圧も測定した上で報告します。

その患者さんにとって初めて徐脈が確認されたときや、いつもより脈拍数が少ない場合は、報告が必要です。

 

※高齢者、女性の患者さんなど、場合によっては正常時でも徐脈の方もいます。

 

 

3.100回/分以上の頻脈のとき

頻脈のときは、労作後の頻脈でないか確認するために、まず患者さんに、ベッドに寝てもらう、椅子に座ってもらうなど、安静にしてもらいます。

 

安静にしてもらっている間に、血圧・体温・SpO2を測定し、痛みや胸部の違和感など自覚症状の有無を確認し、頻脈の原因と考えられそうな労作がなかったか聞き取りを行います。

 

最後に脈拍を測り直し、その後は以下のように対応します。

 

正常な値に戻った場合

労作や精神的興奮による一時的な頻脈は、正常な反応です。

ただ、一時的な頻脈が、心不全の症状であるおそれもあるため、以下の5点を、リーダーまたは先輩看護師に報告します。

 

  • バイタルサイン(血圧・体温・SpO2、正常な値に戻った際の脈拍数)
  • 自覚症状の有無
  • 頻脈の要因と予想されるもの(労作、痛みなど)
  • 頻脈時の脈拍数
  • 頻脈の継続時間

 

なお頻脈が継続していて、「その患者さんにとって初めて」または「いつもと違う」頻脈である場合

12誘導心電図検査を行い、その後速やかに、以下の4点を、リーダーまたは医師に報告します。

  • 12誘導心電図検査の結果
  • バイタルサイン(血圧・体温・SpO2、脈拍)
  • 自覚症状の有無
  • 頻脈の要因と予想されるもの(労作、痛みなど)

 

 

4.リズム不整があるとき

脈拍測定時にリズム不整があるときは、不整脈の可能性があります。不整脈の中には命に関わる危険なものもあるので、注意が必要です。

 

その患者さんにとって初めてリズム不整が確認されたときや、いつもと違う場合は、報告が必要です。

 

5.脈拍数と心拍数のズレ

頻脈、リズム不整がある場合は、脈拍数と心拍数のズレに注意する必要があります。

脈拍数と心拍数にズレがあり、そのズレがその患者さんにとって初めて確認された場合は、報告が必要です。

 

Point

脈拍数と心拍数の違い
脈拍数:心臓から血液が送り出されて、動脈に生じる拍動の回数
心拍数:心臓の拍動の回数

 

脈拍数と心拍数のズレについて詳しくは→心拍数と脈拍数は必ず同じなの?|看護roo!

 

 

脈拍測定の報告のポイント

観察したことを報告するときは、以下の順で行うと、わかりやすく報告できます。

 

  1. 1観察したことの整理
  2. 2用語の整理
  3. 3報告

 

Point

以下のどちらかに当てはまるときは、異変が起こっている可能性が高いため、すぐに報告します。
・いつもと違う
・その患者さんにとって初めての所見
このときも、観察できたことを整理した上で報告しましょう。

 

 

1.観察したことの整理

観察したことを整理するときは、以下の点に分けて考えてみましょう。

 

  • 脈拍数
  • リズム不整、強弱不整の有無
  • 左右差の有無
  • 『いつもと違う』『その患者さんにとって初めての』所見はあったか

 

 

2.用語の整理

用語を正しく使うことで、報告を受ける側にも、患者さんの状態が伝わりやすくなります。

以下の定義を確認しておきましょう。

 

  • 徐脈:60回/分以下
  • 頻脈:100回/分以上
  • 結滞:「脈が飛ぶ」という状態、不整脈のサイン

 

 

3.報告(報告例あり)

脈拍測定の報告例。異常のない場合と、脈が速い時の2例を紹介。異常があるときは、何を報告したいのか最初に伝えた上で、いつもと違う所見であることを伝える。その後、今自分ができることやすでに行ったこと、報告相手にお願いしたいことを伝える。

 

Point

報告のとき、提案やお願いまでできればカンペキですが、難しい場合もあります。
そのときは「対応の指示をいただけますか?」「どう対応すればよいでしょうか。」など、先輩看護師・実習指導者に相談しましょう。

 

 

まとめ

脈拍測定の手順、観察ポイント、報告の方法を紹介しました。

患者さんの脈拍測定や、その報告の場面で参考にしてください。

 

編集:看護roo!編集部 光松瞳

 

執筆

新東京病院看護部、集中ケア認定看護師。日本クリティカルケア看護学会、日本集中治療医学会所属。看護関連書籍の執筆をはじめ、急性期看護ケア、せん妄ケア、集中治療後症候群(PICS)予防に特に注力している。

※編集部注※

当記事は、2014年7月29日に公開した『脈拍測定Q&A |いまさら聞けない!ナースの常識【31】』という記事を、2022年9月12日に修正・加筆したものです。

 

参考文献

  • 大川美千代監.看護技術のなぜ?ガイドブック,サイオ出版.2016,399p
  • 日野原重明編.フィジカルアセスメント ナースに必要な診断の知識と技術,医学書院.2006,264p
  • 大津美香.最新老年看護学第4版,第4章健康アセスメントに基づく加齢変化と生活支援B身体機能・構造の加齢変化と生活への影響6.日本看護協会出版会.2022,422p
  • 松田直樹.系統看護学講座専門分野Ⅱ成人看護学(3)循環器 D不整脈③頻脈性不整脈,医学書院.2019,p181-182

 

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