退職したいと言ったら、「就業規則」を理由に拒否された…|看護師が知っておきたい法律のコト(1)

この連載では、お仕事上のモヤッとする疑問を取り上げ、看護師が知っておきたい法律のコトを紹介します。

 

今回は、「就業規則」で決まっている退職希望の申告時期を守る必要があるかどうかです。

 

漫画/人間まお(看護師)

取材協力/阿毛裕理AAマネジメント株式会社代表取締役・看護師・保健師・行政書士)

監修/寺崎丈晴(社労士officeてらざき代表・社会保険労務士・社会福祉士)

 

【漫画】就業規則どおりじゃないと本当に辞められないのか_1

【漫画】就業規則どおりじゃないと本当に辞められないのか_2

 

緊張する退職の申し出。

 

やっとの思いで伝えたのに、就業規則でもっと前に申告する必要があると言われてしまう…。

 

この場合、本当に辞められないのでしょうか?

 

行政書士の資格を持つ看護師の阿毛裕理さんに、いろいろ教えてもらいました。

 

 

就業規則通りじゃないと、本当に辞められないの?

看合るみ

さっそくですが、就業規則で決まりがある場合、本当に3か月後まで辞められないんですか?

 

阿毛さん

いえ。基本的には、労働者側から2週間前に退職を申し出れば、退職できます

 

「民法第627条」の規定が、大きな根拠になっています。

 

民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ):当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって
終了する。

※雇用期間が決まっている契約社員や派遣社員などでは、やむを得ない場合を除き、契約期間中に辞められません。ただし、1年を超える契約で1年以上勤務していれば、2週間前に申し出れば退職できます。常勤の場合、雇用期間が決まっていない雇用がほとんどです。わからなければ「雇用契約書」で確認を。

 

看合るみ

えっ、じゃあ、2週間前に言えばいいってことですか?

 

阿毛さん

はい。そうすれば、雇用契約が終了し、労働の義務はなくなります。

 

それに加えて、「労働基準法第5条」(強制労働の禁止)で強制的に働かせることが禁じられていますので、この2つの法律を持って、2週間前に退職を申し出れば辞めることができると考えられます

 

 

「就業規則」に違反しても大丈夫なの?

看合るみ

でも、退職希望は就業規則で3か月前までに申し出る決まりだから無理って言われたんですが…

 

阿毛さん

確かに、職場によって、「◯か月前までに申し出ること」と独自のルールを作っているところも少なくありませんね。

 

労使間の労働契約に関する規定の優先順位は、次のように考えられているんですよ。

 

労使間の労働契約に関する規定の優先順位:法令>労働協約>就業規則>労働契約

 

阿毛さん

つまり、「就業規則」は「法令」よりも、労働者に不利益な内容の規定を設けることはできないとされています

 

ですから、「就業規則」で決められた事前の申し出はあくまで協力依頼であって、「法令」ではありません。職場のルールを決めたものなので、「民法」が優先されることになるんですよ。

※「就業規則」で法令未満の労働条件を定めた場合、その部分については無効となり、法令以上の労働条件を定めた部分は有効となります。

 

看合るみ

そうなんですね。就業規則が絶対というわけじゃないんですね!

 

阿毛さん

実際、「高野メリヤス事件」と呼ばれる裁判で、どちらが優先されるかが争われ、就業規則に法的拘束力はないとされたケースがあります。

 

高野メリヤス事件(東京地裁昭和51年10月29日判決):「退職に際し、6か月以前の退職願の提出、会社の許可が必要」と規定した就業規則が有効かどうか争われたが、労働者の退職の自由を制限するとし、2週間を超える予告期間の延長はできないとされた。

 

看合るみ

裁判でも認められた例があるんですか…!

 

阿毛さん

法律で決まりがある労働条件で、労働者の不利益になる変更は基本的に禁止されていますので、「労働者が退職する自由」が優先されるんですよ

 

 

損害賠償を請求されないために

阿毛さん

ただし、ここで注意しておきたいことがあります。

 

「雇用契約書」や「就業規則」などに、退職するときの定めとして「業務の引き継ぎを行った上で」などと書かれている場合があります。

 

その場合、業務の引き継ぎがずさんだったり、引き継ぎ期間を十分に取らなかったりした場合、大げさに考えれば、損賠賠償を請求されないとも限りません。

 

看合るみ

そ、損害賠償ですか…!?

 

阿毛さん

実際に裁判まで発展した例を聞いたことはありませんが、それを理由に引き留められる可能性は十分に考えられます。

 

ご自身が担ってきた業務や担当していた患者さんのことなど、引き継ぎに必要な情報を整理しておくと安心です。

 

そのほかにも、退職に関する規定が他にないか、事前に「雇用契約書」や「就業規則」などをよく確認しておいたほうがよいでしょう

 

看合るみ

なるほど。

 

スムーズに退職するためには、ちゃんと「雇用契約書」や「就業規則」をチェックすることが大事なんですね。

 

***

 

法律上は2週間前に申し出れば辞められますが、人手不足の看護現場では現実的には難しく、最後の手段と考えたほうがよいでしょう。

 

チームで働く看護師という職業柄、周りに配慮しつつ、円満に退職したいなら、できれば就業規則は守ったほうが無難です。

 

円満退職するためには、次のような点に注意するのがポイントです。

 

  • 退職時期を考慮する(年度末など退職希望が受け入れられやすい時期にする)
  • 引き止める余地のない明確な退職理由を考える(できるだけ前向きな理由を)
  • 奨学金の返済が終わっていない場合、契約内容を確認しておく

 

また、辞めた先輩や同僚の「辞め方」を参考にしてみるのもよいでしょう。

 

 

文・編集/看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

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