日本で看護師になる!夢への一歩を踏み出したEPA看護師インタビュー

『EPA看護師』って知ってますか?
EPAとは、『経済連携協定』のこと。これに基づいて、フィリピン・インドネシアから来日した看護師さんたちがいます。
日本の看護師国家試験に合格するまでは『看護師候補生』ですが、この皆さん、母国で優秀な看護師としてバリバリ働いていた経験を活かして日本で働くチャンスをつかみ取った、スゴイ看護師さんなんです。
その存在はなんとなく知っていても、実際に医療現場で働く彼・彼女たち自身のことはなかなか知れません。看護師としてどんな思いで日本に来たのか、ぜひ直接聞いてみたい!今回の国家試験に晴れて合格し、京都の病院で働くEPA看護師の2人にお会いしてきました。

【看護roo!編集部】

 

早く看護の仕事がしたいんです

お会いしたのは、京都市山科の洛和会音羽病院で働くElvira Bucled Sibayanさん(33) (以下、エルヴィラさん)とFebta Eka Purtanti Catharinaさん(30) (以下、フェブタさん)の2人。エルヴィラさんはフィリピン、フェブタさんはインドネシアから来日した看護師さんです。

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | EPA看護師インタビュー
左:エルヴィラさん、右:フェブタさん

今回のインタビューは朝イチからだったのに、2人はその直前まで電子カルテの使い方を自主勉強していたそう。さすがです。

「勉強するのがとても楽しいんです!今は早く患者さんに会いたい!」

開口一番、笑顔で教えてくれた彼女たちからは、看護の仕事が好きだという気持ちがビシバシ伝わってきます。ともかく、まずは国家試験合格おめでとうございます! (※インタビューは、発表ほやほやの日に行いました)

エルヴィラさん「ありがとうございます。ただ感謝です。ずっと看護師の仕事ができていなかったから、早く看護の仕事をしたいです」
フェブタさん「ありがとうございます。本当にうれしいです。夫にスカイプで報告したらとても喜んでいました」


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旦那さんはインドネシアでずっと応援してくれている


もともとフェブタさんがEPA看護師に応募したのは、旦那さんが募集を見つけて教えてくれたのがきっかけだったそう。「知ったのが応募締切の1週間前で、焦って申し込んだんです(笑)」というバタバタのスタートから、国試合格まで3年間。猛勉強と仕事の両立はさぞ大変だったでしょう。

「辞めようと思ったこと?何度もありますよ!でも、そのたびに家族とスカイプで話して励まされて・・・だからなんとか(日本に)残りました」

エルヴィラさんも、何度もフィリピンに帰りたいと思ったと言います。それでも努力を続けられたのは、「職場のみなさんがとても優しくて、勉強を教えてくれたりして心強かった」から。 様々な人の支えがあったことを強く実感しているから、冒頭の「感謝」という言葉が真っ先に出たんですね。


 

「国試の日本語」の難しさ

EPAで来日し、日本で看護師として働くためには、いくつものハードルを突破する必要があります。 まずは、来日するための選考。面接と看護技術の試験を受け、国の代表として日本に渡ります。 来日した後の目標は、国家試験合格。日本の受け入れ病院で看護助手として働きながら、看護師国家試験にむけて勉強を続けます。国試を受けられるのは来日から3年以内と決められているため、3回めまでに合格できない場合は母国に帰ることになります。

第101回看護師国家試験の合格者48,400人のうち、EPA看護師の合格者はたった48人。合格率は11.3% (※2012年度実績)。まだまだ合格者数も、合格率も低いのが現状です。 皆さん優秀な看護師なのに、なぜ?

「日本語が本当に難しいんです!日本に来る前から勉強したし、この病院に来る前に語学研修もあったけど、まだまだわからない言葉や文法がたくさん」

とはいえ、インタビューの中では一切英語を使わなくてもスムーズに会話できるほど、上手な日本語を話す彼女たち。日本語、うまいと思うんですけど・・・?

「国家試験に出てくる日本語が難しい。特に状況設定問題の日本語の意味がわからなくて、先生に何度も説明してもらいました」

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 この意味を、洛和会音羽病院から依頼を受けて2人の国試指導を行った『先生』、三井明美さん(武田看護教育研究所代表)が説明してくれました。

「必要なのは『国試に対応するための日本語教育』。彼女たちの目標は国試に合格して日本の看護師になることなのに、多くの場合それにフォーカスしたサポートができていないのが現状です。国試に向けた勉強と日本語の勉強を連動させることが重要なんです」

語学学校で習うような日本語の挨拶や単語の勉強をしても、国試に出てくる医療の専門用語や、日本独特の文化に基づく表現を理解するのはなかなか難しい。だから、自然と日本の文化に基づいた状況が設定されている問題では、その場面を思い浮かべることすらできないんだそうです。

例えば、入浴に関する問題で「浴槽をまたぐ」という表現が出たとします。東南アジアの入浴はシャワー浴が一般的。そもそも浴槽がないので、「浴槽」があるお風呂も、それを「またぐ」という行為も思い浮かびません。 設定された場面が想像できない中で正解を選ぶなんて、かなり難しいはずですよね。うーん、大変そう。

「でも、勉強していてわからないことは、病棟で一緒に働いている看護師さんに質問していました。これはどういう意味?なぜこんなことするの?って。みなさんとても親切に教えてくれたからうれしかった」

カリキュラムとしての勉強のサポートだけでなく、日本人看護師や医療スタッフのリアルな感覚を肌で感じられたことも、大きなサポートだったようです。
周囲がサポートしてくれたのも、本人たちの努力する姿があればこそ。猛勉強の末、2人とも3回めの国試を見事突破し、2012年から晴れて『日本の新人ナース』として働き始めることになりました。

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2人が働く洛和会音羽病院


 

 

1人で35人の患者さんを看ていました


ところで、お2人は母国ではどんな風に働いてたんですか?

エルヴィラさん「私が働いていたのはオペ室と、NICUと、がんセンター。日勤帯でも、合わせて35人くらいの患者さんを私1人で看てました」

さ、35人・・・!?なぜそんなことに?

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エルヴィラさん家は、なんとお兄さん4人も全員看護師!


エルヴィラさん「病院に看護師を雇うお金がないんです。だから看護師資格を持っているのに、コールセンターなどで働いている人がたくさんいます」

看護師不足に悩む医療機関が多い日本とは正反対の現状。インドネシアでも、看護師を取り巻く環境は日本とちょっと違っているそうです。

フェブタさん「インドネシアでは、働く場所を選ばなければ看護師として働くことはできます。でも、人気の病院に行くためのセレクション(選考)を突破するのはとても難しいです」

 

世界中、看護の心は同じだから

母国でバリバリ働いていた彼女たちが日本で働くことを目指す理由は、2つあるといいます。ひとつは、母国よりも日本の方が医療先進国であること。そしてもうひとつは経済的な理由です。
現行の制度では、前述のとおり来日してから3年以内に国家試験に合格すれば、その後滞在期間の制限なく看護師として日本で働くことができます。しかも、待遇は日本人看護師と同等以上でなければならないと定められているので、お給料は母国でめまぐるしく働いていたときの数倍になります。
2人とも、いずれ家族を日本に呼んで一緒に暮らすことを目指しているんだそう。

とはいえ、日本の環境は母国とまったく違いますよね。不安や抵抗はなかったんですか?と聞くと、働く看護師の思いはどこでも同じだから大丈夫、と言って笑います。

フェブタさん「日本に来るまでは、先進国・日本の看護師さんは私たちとは違うと思っていました。でも、一緒に働いてみたらみんな同じだった。看護が好きで、患者さんを助けたいという気持ちは世界中一緒でした」

エルヴィラさん「日本の看護師さんは優秀だという思いは、来る前も来た後も変わっていません。みなさんとてもまじめ。私もはやく一緒に看護がしたいです」

 

日本の看護師として。

念願の『日本の看護師』への第一歩を踏み出した2人。これからの目標を聞いてみました。

フェブタさん「いずれICUやERで働きたいと思っています。まずはスタッフと仲良くすることと、技術の練習をがんばります」

エルヴィラさん「これまで(勉強で)看護師の仕事ができなかった分、早く仕事がしたい!そして、助産師の経験があるのでそれを活かしてまたお母さんと赤ちゃんのサポートをしたいですね」

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最後に日本の看護師さんにメッセージを、とお願いすると、満面の笑顔で答えてくれました。
「大変だけど、やさしく、ただしくお世話しましょう。一緒にがんばりましょうね!」

言葉の壁、文化の壁、孤独の壁、いろんなものを乗り越えて、念願のステージに立った2人。看護師として働けることが本当にうれしい!というキラキラした目が印象的でした。
『やさしく、ただしい』看護師を目指して、きっと今日も奮闘しているはずです。

【看護roo!編集部】



~おまけ~日本のこと、聞いてみました

Q.日本食、いけます?
フェブタさん「納豆もいけます!なんでもチャレンジしないと!」
エルヴィラさん「・・・・・・」(絶句)

Q.休日は何してる?
フェブタさん「ハイキングが好きなので休みがあれば山に行きます。富士山も登りましたよ」

Q.日本の好きなものは?
エルヴィラさん「音楽。夏川りみの『涙そうそう』が好きです」

Q.日本で一番びっくりしたことは?
フェブタさん「(温泉に行ったとき)みんな一緒に裸になってお風呂に入ること。私は服を着たまま入りました」
エルヴィラさん「・・・・・・」(絶句)


 

【取材協力】

武田看護教育研究所 http://www.t-i-n.net/(PC)

洛和会音羽病院 http://www.rakuwa.or.jp/otowa/(PC)


 

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